のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

りはめより100倍恐ろしい / 木堂椎

2006年03月11日 14時05分32秒 | 読書歴
■ストーリ
 元いじられキャラの羽柴は高校デビューで
 形勢逆転をするべく、友人をスケープゴートにして
 乗り切ろうとするが・・・。

■感想 ☆
 角川書店主催の第一回青春小説大賞受賞作。
 17歳の現役高校生が携帯で書き上げた作品らしい。
 購読している雑誌「野生時代」12月号に
 掲載されていた「候補作」として読了した。
 
 読んでいる間中、襲い続ける不快感に
 何度本を置こうとしたか分からない。
 若者の勢いと疾走感、「仲間」と認め合った上で
 成り立つテンポのよい会話。

 それらはすべて「今」を忠実に再現して見せ
 現在の「青春」を私たちに垣間見せてくれる。

 しかし、そこに生存している彼らの
 周囲をうかがう姑息なまでの視線、
 志の低さにはうんざりしてしまう。

 学校という狭い世界の中で
 少しでも過ごしやすく生きていくためには
 友人でさえも踏み台にする卑小さ。
 自分がされていやなことをされないために
 「される前に誰かにしてやろう」
 と考える自己中心さ。

 ものの見事に破滅に向かって突き進んでいく主人公は
 作者にとってフィクションなのだろうか。
 フィクションならば、ここまで投げっぱなしでもいいのだろうか。
 自分のおろかさや身勝手さに気付きもせずに
 終わりを迎える主人公に消化不良を感じずにはいられない。

アラカワファントム / 野上鳴

2006年03月11日 14時02分44秒 | 読書歴
■ストーリ
 姉の恋人であるダメオトコに弁当を届けるバイトをする美知子。
 ある日、ダメオトコの愛人らしき女を目撃し、尾行を開始した。

■感想 ☆☆☆*
 角川書店主催の第一回青春小説大賞候補作。
 惜しくも受賞は逃したが、私はこの作品が一番好きだった。
 爽やかな読後感がもっとも「青春」に似つかわしいと感じた。
 購読している雑誌「野生時代」12月号に
 掲載されていた「候補作」として読了。

 駄目な男に惹かれる女性の気持ちに共感をしたことはない。
 「私がいないと」という母性本能にかられたこともない。
 けれど、そういう人がいることは知っているし
 そういう人の優しさ、暖かさも知っている。
 なんでそんな男に・・・・と思うけれども、
 つまり、彼女たちは恋愛に「勝ち負け」や「周囲の目」を
 まったく持ち込まないのだろう。

 ただ、自分の思いを大切に出来る人。
 自分の幸福を自分の物差しで計れる人。

 美知子の姉も母親もそして、金持ちの友人恵さえも
 そういう人たちで、 美知子は「なんで、あんな男に。」と
 思いつつも、彼女たちを優しく見守る。
 「やめとけば」といいつつ、彼女たちの恋愛がうまくいくよう
 応援し、積極的に行動を起こす。
 それはきっと、彼女たちが周囲からどう見えようとも
 美知子が見る限り幸福そうだからなんだろう。

 野上さんに貢ぐために残業をして、あくせく働いて
 疲れきって、でも、彼の前では「女性」の顔で
 幸福そうに笑う姉を妹は眩しく見つめる。

 「あんな男を好きになったところで将来はない」
 と冷静に考える賢さがあっても、その賢さは
 実際に目の前に存在する幸福そうな笑顔にはかなわない。

 結局、野上さんとの別れを決意する姉は
 どこかすがすがしく爽やかに恋の終わりを迎える。
 たくさん泣いたはずなのに、明るく次の季節に向けて
 一歩を踏み出す。
 以前とは異なる強さと
 仕事を適度にさぼる心の余裕と
 今より綺麗な女性になろうという向上心を身につけて。

 女性は恋をすると綺麗になる。
 けれど、綺麗になるのは恋をしているときだけではない。
 女性は、恋が終わっても綺麗になるのだ。