■ストーリ
過去に向かって、物質を射出する機械、クロノス・ジョウンター。
吹原和彦(菅野良一)は研究員として、この機械の開発に
携わっていた。ある日、研究所の近くで、タンクローリーが横転し、
火災事件が発生。死亡者の中には、吹原が思いを寄せていた
来美子(岡内美喜子)の名前があった!「事件が起きる直前に行って
彼女を助けよう!」吹原はクロノス・ジョウンターに飛び乗り、
自分自身を過去へと射出した!
■感想 ☆☆☆☆
胸が痛くなるようなラブストーリー。
自分自身を(自分の人生を)犠牲にしてまで
彼女を助けたい、生きていて欲しいと願う吹原の気持ちが
熱くて痛くて苦しくて切なくて、でもやっぱり苦い。
来美子を助けるためにタイムマシンで過去へ戻る吹原。
けれども時間流は、もしくは時をつかさどる神は
簡単に人の運命を変えることを許さず、何度も吹原を
別の時代に跳ね返す。跳ね返され、戻ってくるたびに
行く前よりはるか先の未来に戻る吹原。
一回目の時間飛行から戻ってきたのが7ヵ月後。
二回目の時間飛行から戻ってくるのは2年後。
三回目に戻ってくるのは56年後。
何度も何度も失敗する吹原。
それでもあきらめようとしない吹原。
彼女に生きていて欲しい。という思いと
彼女にただ一目会いたい、という思いに
自分の人生の全てをゆだねる彼はただただひたすら走り続ける。
彼女に向かって。
全身全霊をかけて、という言葉がここまでぴったり来る
主人公はいないと思う。
いや、舞台という表現方法が更に「全身全霊をかけた思い」の
表現に力を貸したのだと思う。
汗だくになって、ひたすら彼女のもとに向かう吹原の姿も
叫ぶように彼女を呼び続ける吹原の声も
すべて「舞台」だからこそ、の真の迫り方なんだと思う。
ただ、願わくば、思うだけで幸せだと笑う吹原に
来美子の思いが伝わったところまでを描いて欲しかった。
吹原と来美子が向かい合って笑顔を交し合う姿も見たかった。
思うだけで幸せかもしれないけれど
思いを確かめ合えることはその数倍、数十倍幸せだと思うから。
その数十倍の幸せを味わったに違いない吹原にも会いたかった。
たくさんたくさん感動した。
けれど、決してハッピーエンドではない。
来美子の気持ちやその後を考えると苦い苦い終わり方だと思う。
それでも、見終わった後に残っている気持ちは暖かい。