のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

博士の愛した数式 / 2006年日本

2006年02月04日 23時29分03秒 | 映画鑑賞
■ストーリ
 家政婦として働く「私」はある春の日、年老いた元大学教師の
 家に派遣される。彼は優秀な数学者だったが、17年前に
 交通事故に遭い、それ以来、80分しか記憶を維持できなく
 なったという。数字にしか興味を示さない彼との
 コミュニケーションは困難をきわめる。しかし「私」の
 10歳になる息子との出会いをきっかけに、そのぎこちない関係に
 変化が訪れる。彼は息子を笑顔で抱きしめると「ルート」と名づけ、
 「私」たちもいつしか彼を「博士」と呼ぶようになる。

■感想 ☆☆*
 先週見た映画だったのですが、感想をまとめられませんでした。
 もう一度、みようか、未だに迷っています。

 なぜなら、小説では家政婦さんと博士の間に
 「そこはかとない愛情」を感じたような気がするにも関わらず
 映画ではその「愛情」が「人間愛」になっていたため。
 のりぞうが小説を読み間違えていたのか、映画を深く見ることが
 できていなかったのか、そんな中途半端な状態で
 この感想を書いていいものか、と逡巡。

 けれども「一回見ただけの感想」ということで。
 二回目見てまた印象が異なれば、その変遷ものりぞうにとっては
 面白いかも、ということで。

 前述のような(のりぞうにとっては)決定的な違いがあったものの
 小説に忠実に従っている印象を受ける。
 博士の暖かい笑顔、その視線。
 ルートの博士を思い出すときの嬉しそうな表情。
 博士に教わった数学の面白さを学生に伝える心底楽しそうな声。
 海辺で自分の頭を差し出し、「ルート」記号の頭を
 なでてもらう青年のルート。

 どれもが暖かく、優しい映像。

 しかし、だからこそ私には、小説のほうが面白く感じられた。
 映像のほうが合う話と小説のほうが合う話がある。
 小説を通して伝わってきた優しさ、暖かさをのほうが
 私には印象が大きかった。

 それでも春夏秋冬を彩る風景の美しさは博士の穏やかな人柄と
 よくあっていて、穏やかな気持ちになった。

出会い運

2006年02月04日 22時48分46秒 | 日常生活
出会い運はかなり大きいほうだと思います。
個性的な方や素敵な方に出会うことが多く
自己啓発を促進されることも多し。
また、一度のご縁のはずが、末永くお付き合いが続いて
「友人」となることも多し。
「出会い」によって色々と得していることが多い人生です。

それとは別の出会い運も
また異常に高い気がする今日この頃。。
こちらは「すれ違い運」「遭遇運」とも呼ぶべき運。
とにかく街中で、自宅周辺で、地下鉄で
いろんな知り合いとよく遭遇します。
たいていはのりぞうが気を抜いているとき。
ひとりで自由に行動しているとき。

・・・よって、いろんな方に
「本当にトモダチがいないかわいそうな人」
と思われてます。ま、あたらずとも遠からず。

昨年一年間は、週末に中心地へ出ると
必ず誰かに遭遇するという奇遇さ爆発の一年でした。
最高記録は1日で8名の知り合いとの遭遇。

これはきっとひきこもり体質のりぞうへの
神様からのプレゼントに違いありません。
無精者のため、ついついいろんな方に対して
連絡を怠りがちなのりぞうに
「忘れられないようにしなさいよ。」
という配慮ではないでしょうか。

というわけで、本日も大学時代の友人miyaと
映画上映会会場で遭遇。
彼女は上映会に来ていたわけではありません。
上映会会場の隣にあるレストランに
仕事仲間たちと昼食を取りに来ていたのです。

「なんばしよっとねー!!」
という聞き覚えのある声と見覚えのある笑顔。

うっわー!てなもんです。
テンションも急上昇。気分は一気に女子大生☆


でもね。
約束もしてないのに、こんなふうによく遭遇できるのに
なんで、約束して会おうとすると
二年越しとか三年越しの再会になるのよ?!


・・・次の偶然の出会いと約束しての待ち合わせ
どちらが早いかなぁ・・・・。

天使突抜一丁目―着物と自転車と / 通崎 睦美

2006年02月04日 22時28分37秒 | 読書歴
■内容
 アンティーク着物の着こなしで人気のマリンバ奏者・通崎睦美。
 斬新な音のアーティストが綴る「普段の京都」の美的生活エッセイ集!
 昔着物を着こなしたキュートな写真を随所に織り込む。

■感想
 とにかくかっこいい女性のかっこいいエッセイ。
 肩肘張らずに、自分の好きなものを探し出し
 自分の好きなものに囲まれて、自分の価値観で
 服装も仕事も選んで生きている。
 そういう「大人の女性」臭がただよう作品。

 彼女が颯爽と着こなしている着物はどれも個性的で
 「好き」という気持ちがなければ着こなすことも難しそう。
 そんな着物をあっさりと着こなす。
 その自由な感じがまたかっこいい。
 その自由さは着物の着方にも現れていて
 その組み合わせや着崩し方が更にかっこいい。

 着物好きな私は彼女のこだわりの着物姿を
 ただ眺めているだけで十分満足。
 ・・・訂正。
 着物を着て外出したくなった。
 今年の春は着物を着てお花見。
 そんな粋なことをしてみたい気分。
 「粋」は一朝一夕に実現できるものではないけれど。

 また、どのページからも彼女の地元「京都」を
 愛する姿勢が伝わってくるのも嬉しい。
 観光地ではなく、そこで育ち、今も住んでいるからこそ
 分かる京都のすばらしさ。そして面倒さ。
 住んでいれば、よいところもあれば悪いところもある。
 それでも地元を愛している彼女がいとしい。
 あったかい気持ちになる。

 観光地京都ではなく、住宅街や旅館街など
 普段の京都を歩いてみたくなった。

出来すぎじゃありませんこと?

2006年02月03日 23時22分14秒 | 日常生活
京都に無事到着し、地図を見ながら目的地へ。
わりとすぐに目的地に到着。
アポを取っていた担当者を呼んでいただいたところ・・・

「あのですね。
 それ、うちの会社やないと思うんです。」
(京都風アクセントでお読みください。)

・・・・へ?!

「うちの会社にそんな部署、あらへんのです。」
(記憶力がないため、あやふやですが
 京都風アクセントでお読みください。)

・・・な、なんですと?!

「おそらく○○さんとお間違えやないかと。
 うちは○○パーソナルでして。。。
 よく間違えられるんです。」

どうやら最初に進むべき方向を間違えた模様。
そして間違えた先にちょうど訪れるべき会社と
似た名前の会社があった模様。



・・・そんなこと、あらへんやろう。
(大木こだまさん風にお読みください。大好き☆)
そんなできすぎた話、あるわけない。・・・はず。

あったんですってば!
それにしても1本早い新幹線に乗っててよかった。
おかげで時間ぎりぎりではありましたが
無事に目的地にたどりつけました。

おっきい・・・・

2006年02月03日 23時12分12秒 | 日常生活
京都に行ってきました。
って言っても素通り程度です。
時間の関係もあって、京都はまったく満喫できず。
旅館どおりの街並みをほんの少し楽しんだぐらい。
こういうとき、ひとりで行動できない自分が悔しいっす。
小さい頃から常に家族で行動してきたため
ひとり行動が苦手なのです。
・・・いや、よくよく考えると
団体行動も苦手なのよね。
どうしたいんだ、自分?!

と、混乱しつつも楽しかったです。知らない街。
九州をほとんど出ないので
新幹線に乗ることも駅をうろうろすることも
すべてがもの珍しいのです。

京都駅のでっかさ、新しさには心底びっくり。
・・・・「古都」じゃないのね。。。
近代都市なのね・・・。

そして、出張先の会社のでかさにもびっくり!
受付嬢が存在してるしっ!
ガードマンがドアマンみたいに
自動ドアを(自動ドアなのにっ!)開けてくれるしっ!
受付ロビーだけでのりぞうの家の近くのスーパーが
まるまるおさまっちゃいそうな広さだしっ!

福岡なんてしょせん地方都市だと実感。

何より驚いたのは
どの時間帯にトイレに行っても
必ずひとりは女性社員がいるんです。
福岡では六割の確率で、
ひとりのトイレを満喫できるのに。
これって、女性社員がそれだけ多いってことですよね?
トイレの使用率ごときで
カルチャーショックを受けてしまいました。

あまつさえ、上司にねちねちといじめられて(叱られて)
怒りのあまり、トイレに逃げ込んできた女性社員と
彼女を心配しておっかけてきた同僚という
ドラマの中の世界のような現場に遭遇できました。
勿論、彼女たちの言葉は京都弁で
ますますドラマの世界のよう。
ビバ、都会☆

・・・・・えー。せっかく京都にまで行ったというのに
トイレの中継だけでごめんなさい。
次は「古都」の魅力を味わいたいと思います。


女の一生~二部・サチ子の場合~/遠藤周作

2006年02月02日 02時30分38秒 | 読書歴
■ストーリ
 第二次大戦下、教会の幼友達修平と、本当の恋をし、
 本当の人生を生きたサチ子の一生。

■感想 ☆☆☆*
 長崎に旅行した際、遠藤周作記念館とド・ロ深部記念館を訪れ
 遠藤周作さんの作品に興味を持った。おおまかなあらすじは
 知っていたり、映画化された作品を見たりはしているが
 実際に作品を読むのは初めてである。
 しばらく読み続けそうな予感。

 物語は第二次世界大戦を背景に、幼い頃主人公サチ子が出会い
 「人、その友のために死す。それより大いなる愛はなし」
 という言葉の書かれたしおりをいただいたコルベ神父のその後と
 サチ子と幼馴染修平との悲恋が交互に繰り広げられる。
 ふたつのストーリーを結びつけるのが前述の言葉
 「人、その友のために死す。それより大いなる愛はなし」である。

 戦時中、クリスチャンが感じたはずのキリスト教の教えと
 国が強要する思想との矛盾。自分にはどうにもならない流れの中
 敵国を憎むこと、人を殺すことを正義と教える教育に対する葛藤と
 その国の思想に表面上だけでも従わなければ生きていられなかった
 信者たちの悩み、苦しみ。教会も牧師も神父も迷い、傷つき
 苦しんでいたことが伝わってくる。

 一方、長崎で布教活動をしていたコルベ神父はポーランドに帰り
 アウシュビッツに連行される。この時代に誰もが感じたであろう
 「神なんているのか」「神はこの戦争を許しているのか」
 という否定的な疑問を一心に受け止め、友のために祈り
 友のために悲しみ、友のために犠牲になったコルベ神父。

 修平が回答を見つけられずに抱え込み、苦しんでいた悩みに
 図らずも異なる場所で同じ回答にたどり着くコルベ神父とサチ子。
 彼らはただひたすらに祈る。
 サチコは修平のために。神父は苦しんでいる友のために。
 おそらくこの時代、多くの日本人が「自分のため」ではなく
 「周囲のため」「お国のため」「故郷のため」に生きた。
 そう考えなければ、できないようなことを強いられていた。

 ラスト、原爆投下時の長崎から戦後30年後の東京に
 時代は飛ぶ。描写されなかった原爆投下直後の長崎と
 家族にも原爆について語らないサチ子の姿で
 その悲しみの大きさが描写される。
 
 読後、しばらくは自分の中に様々な感情が渦巻いた。 

【再放送】ミセス・シンデレラ

2006年02月02日 01時52分47秒 | テレビ鑑賞
■1997年夏クールだったようです。
■出演者:薬師丸ひろ子、内野聖陽、杉本哲太、江波杏子
■ストーリ
 結婚6年、子どものいない専業主婦みずほ(薬師丸ひろ子)は、
 仕事に明け暮れる夫・泰之(杉本哲太)や同居の姑(江波杏子)に
 不満を募らせつつも、イタリア語教室に通うことを楽しみとしながら
 主婦の務めを全うしている。
 ある日、かわいがっていた文鳥チロが逃げ出したことがきっかけで
 世界的な音楽者、堀井光(内野聖陽)と知り合い、恋に落ちる。

■感想
 実は薬師丸ひろ子さんのファンです。
 女優魂を発揮し、コミカルな役からシリアスな役まで
 幅広く演じ分けられている今の彼女も好きですが
 角川映画のアイドルだった彼女も好きでした。
 中学生のとき、同級生のお母さんから
 彼女のアイドル時代のアルバムを借りて
 カセットにダビング(!)させてもらって聞き込んでました(笑)

 そんな彼女の意外にもドラマ初主演作。
 放送開始当初はノーマークだったにも関わらず
 主婦層の支持を受けて視聴率が高くなり、
 ワイドショーで取り上げられていた記憶が。
 (こんな無駄な知識でのりぞうの記憶のキャパシティは
  埋められているわけです。・・・切ない。)

 いやぁ、あれですね。今も昔も主婦層が好むドラマには
 大きな違いはありませんね。
 なんだか「冬のソナタ」や「牡丹と薔薇」を思い出しちゃいました。
 のりぞうなりに共通点を考えてみてたどり着いたのは
 「非日常」と「どんなことがあっても愛してくれる王子様」。

 日常生活ではありえないような出会いや出来事。
 (なにせ、このドラマの中の王子様は作曲家で
  ごく普通の主婦が晩餐会に出席しちゃうのです。ありえんっ)
 何があってもヒロインを愛し続ける男性。
 (夫がいても抱えきれないような薔薇の花束を贈りつけたり
  ローマに新居を用意してプロポーズしてくれたりします。)

 ・・・・ちょっと恋愛力高めでのめりこめませんでしたが
 恋愛コメディとしては面白かったです。
 今もまったく変わることない江波さんの非情なお姑っぷりにも
 思う存分楽しませていただきました。脱帽です。

 また、9年前と今とでは結婚や長男や子供に対する考え方が
 随分変わったのねぇ、、、と社会変化を感じることができます。
 とにかく女性が異様に強くなったのが分かるはず。
 それとも、のりぞうの周囲にそんな話がないだけで
 今もやはり「長男の嫁」とか「跡継ぎ」とかいう考え方に
 振り回されている女性は存在しているのかな?
 なんにせよ、のりぞうの周囲にはない話で
 あまりにくさい科白や展開は早送りしながら楽しみました。

 ・・・なら見るなよ!って感じですが
 どうしても最後に若い殿方を選ぶのか
 ずっと連れ添っただんな様を選ぶのか興味があって
 見続けてしまいました。
 ありきたりではありますが、納得の選択で一安心。

 どうしても気になったのが薬師丸さんの衣装。
 役柄のせい?時代のせい?
 いかにも「おばさん」な髪型と洋服に釘付け。
 くるぶしソックスとか普通にはいてました。うひゃぁっ! 

聞き覚えがある会話

2006年02月01日 23時06分27秒 | 日常生活
明日から一泊で京都に出張です。
九州っ子のりぞうにとって、京都は憧れの土地。
出張ですが、テンションは上がり気味です。
ついでに観光もしてみたいっ。

ですが、仕事ですので、そんな時間は勿論なく。
土曜日は朝から福岡で用事があるため
金曜の夜には帰らねばならず。
ちょっぴり悔しい京都出張です。

せめて、駅ビルには行ってやるっ。
京都名物の晩御飯は食べてやるっ。

決意をみなぎらせるのりぞう。
と、課長が優しく声をかけてくださいました。

「大体、のりぞうくんは京都になんかいけるんですか?」





・・・・もしもし?
これでも27歳の立派な女性ですからね?
もう「わかんなーい。」とか甘えてみても
痛いだけのお年頃ですからね?

ひとりで京都ぐらい行けますとも!

「うーん。。。福岡市内だったら安心なんですけどね。
 九州を出るとなるとなぁ。」


・・・福岡市内って。。。。
そりゃ、あまりに狭すぎませんか?

まあね。
こんなふうに会社でも
甘やかされっぱなしでございます。
この会話、のりぞうが遠隔地に出張に行く際に
必ず繰り返される定番の会話です。

木製の王子 / 麻耶 雄嵩

2006年02月01日 23時00分28秒 | 読書歴
■ストーリ
 比叡山の麓に隠棲する白樫家で殺人事件が起きた。
 被害者は一族の若嫁・晃佳。犯人は生首をピアノの上に飾り、
 一族の証である指環を持ち去っていた。京都の出版社に勤める
 如月烏有の同僚・安城則定が所持する同じデザインの指輪との
 関係は?容疑者全員に分単位の緻密なアリバイが存在する
 傑作ミステリー。

■感想 ☆
 読書好きの後輩に「傑作ですよ!」と薦められて読んだ作品。

 ・・・ですが、ごめんなさいっ。
 まったくもって、この世界に入れませんでした。

 読む前に気づくべきだったのです。
 彼女とは、「読書好き」「映画好き」という
 根幹部分は同じで、話をしていてとても楽しいのですが、
 そのベクトルが進む方向は真逆。
 いつもふたりの違いっぷりを楽しむ会話しか
 繰り広げられていないことを・・・。

 彼女もミステリ好きですが、
 アリバイや密室に技巧が施されていればいるほど、
 その世界にのめりこむタイプ。本格マニアです。
 のりぞうは動機重視。いかに犯人や探偵に共感できるか
 その世界にはいりこめるか、をポイントとしています。

 というわけで、おそらく彼女がわくわくしながら
 読み進めたであろう中盤から後半にかけての
 アリバイ崩しの部分はさらさらと読み飛ばしてしまいました。
 ほら!西村京太郎サスペンスで時刻表を
 読み飛ばすようなものですね。
 ここは読まなくても話わかっちゃうし、みたいな感覚です。

 そしてラストで待ち受ける壮絶で陰惨な結末。
 なんともいえない後味の悪さと現実世界ではないような
 作り事めいた世界観にげんなりしてしまいました。
 「事実は小説よりも奇なり」ということわざを
 体言しているかのような今の世界だからこそ、
 こういう事件が現実世界で起こっても不思議ではない。
 そう思えてしまうから余計に
 私はこの小説が苦手なのかもしれません。


やさしい死神 / 大倉崇裕

2006年02月01日 22時49分01秒 | 読書歴
■ストーリ
 死神にやられたとのメッセージに首をひねる表題作を皮切りに
 物足りない芸ゆえに先行きを危ぶまれていた噺家二人が
 急に上達する「無口な噺家」、元名物編集長の安楽椅子探偵譚
 「幻の婚礼」、携帯事件に始まり牧編集長&間宮緑コンビ定番の
 張り込みで決する「へそを曲げた噺家」、アイリッシュの
 『幻の女』ばりに翻弄される緑の単独探偵行「紙切り騒動」を
 収める。
 本格ミステリと落語ネタの調和が美しい好評のシリーズ第3弾。

■感想 ☆☆☆*
 落語と探偵小説のコラボレーションと聞いて、
 すぐに思い浮かぶのはなんといっても北村薫さんの春桜亭円紫さん。
 女子大生「私」が主人公のシリーズ。「日常の謎」派の中心的存在。

 そんな根強いファンの多い分野に果敢に挑んでいるのが
 このシリーズ。
 思いがけない拾い物をしたときの嬉しい気持ちを
 読んでいるときから味わえた。
 出逢えてよかった、と思える作品。
 惜しむらくは第3弾から読み始めてしまったこと。
 どうせなら第1弾からゆっくりじっくりと読み薦めたかった。

 どの話も落語の人情話と現実世界のちょっとした謎を
 うまく絡めて、現実世界の謎も人情話に仕上げられている。
 ここ数年、落語ブームといわれているけれども
 そこはまだまだ私たちにとっては少し縁の遠い世界。
 テレビや思い出話の中でしか見たことのないような
 人情味あふれる世界がほっこりあたたかく繰り広げられている。

 また、その人情味あふれる世界とは裏腹に
 ものすごくストイックに演技を極めようとする姿勢も
 心地よい。

 今、再び落語ブームが押し寄せているのは、
 落語の中やその芸に触れる人たちが織り成す世界の中に
 私たちが忘れ去ろったものが数多く存在しているからかもしれない。

 と、ミステリーを読みながら
 そんなことまで考えてしまった。