のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

あるキング/伊坂幸太郎

2010年11月08日 23時40分24秒 | 読書歴
141.あるキング/伊坂幸太郎

■ストーリ
弱小地方球団・仙醍キングスの熱烈なファンである両親のもとに生まれた
山田王求(やまだ おうく)。「王が求め、王に求められる」ようにと
名づけられた王求は、仙醍キングスに入団してチームを優勝に導く運命を
背負い、野球選手になるべく育てられる。
期待以上に王求の才能が飛び抜けていると知った両親は、さらに異常とも
いえる情熱を彼にそそぐ。天才が同時代、同空間に存在するとき、
その天才は周りの人間に何をもたらすのか? 

■感想 ☆☆☆
シェークスピアをまったく読んだことのない人はこの作品を、
折に触れ、登場する印象的な3人の魔女を、どのように読み解くのだろう。
マクベスのストーリすら知らない人もまたしかり。
そういった意味で読者を置いてけぼりにしているようにも感じられました。
また、今までの伊坂作品に多く見られた「ラストに向かって行われる
爽快な伏線の回収」はまったく登場せず、そこはとても残念というか
伊坂さんの今までの作品のようなカタルシスを求めて読むと
肩透かしをくらっただろうなー、とは思いました。
そういった意味で、賛否両論色々と物議をかもしていた状況を
知った上で読めた私は「今までと違うぞー。」という心積もりをして
読めて幸せだったな、と。おそらく何も知らずに読んでいたら
「え?!え?!」と戸惑って読み進められなかったんじゃないかな。
それぐらい今までの伊坂作品とテイストが異なります。

ただ、「今までの伊坂作品らしくない」ものの、
この作品でも伏線はいたるところに張り巡らされています。
始めからラストの1文に向かって、物語は語られ続けます。
読後感はまったく爽快な終わり方ではないものの、
この話は「救い」について描かれているのだと思いました。

重い運命を背負って生きる天才野球選手。
天才にも関わらず、むしろ天才であるが故に、運命はどんどん過酷な
課題を主人公に与え、主人公はそれを静かに受け入れます。
「救い」は彼には与えられません。
けれど、彼らと関わった人たちにとっては、やはり彼の存在や
彼の生きる姿勢、野球に向かう真摯な生き様は「奇跡」であり、
「救い」なのだろうと思いました。
そして、彼がラストに放つ(はずの)ホームランこそ、
多くの人の思いと願いが込められた「奇跡」で「救い」なんだろうな
とラストの場面を読みながら、胸が熱くなりました。
読み終えた後、王求の人生をしみじみと振り返りました。
それぐらい余韻が残る作品でした。

王様の耳はーっ!

2010年11月07日 17時33分15秒 | 日常生活
嬉しかった出来事はみんなに言って回りたい願望が強いタイプです。
お得だった買い物も然り。

というわけで、昨日、枝光教会のバザーで購入した洋服たちが
いかにお得だったか、皆さんに言ってまわりたくてたまりません。
「なんと今日着ているこの洋服!上下で○○○円やけん!!」
と、自慢したくてたまりません。
なにせ、10着ほど購入しても1000円に届かなかったのです!安いーっ。

「捨てるより、誰かに使ってもらったほうがみんなにとって幸せですから」
とおっしゃってくださった枝光教会の方々。ありがとうございますっ。

しかしながら。
さすがに32歳会社員的に、「いかに安く手に入れたか」は
なんとなく自慢にならない気がしないでもない。かも。
いや、私が「自慢」と思って吹聴してまわっても、
周囲の方々は「自慢」と受け取ってくださらない可能性大。かも。
特に、会社内のジョシ社会ではまったくもって
「自慢」と受け取ってもらえない可能性大。かも。
いや、社内のジョシ社会では「可能性」の問題ではなく、
確実に「自慢」としては受け取ってもらえないだろうなー・・・。

と思ってはいたのですが。
ワタクシの性格を実によく見抜いている母上からは
先回りして厳重に釘を刺されてしまいました。
「くれぐれも、いくらで買ったとか、安かったとか自慢してまわらないように。
 自分を安売りしちゃいけんのやけんね。」

・・・あー。なんか。
そう言われると、なんか悔しいというか。
なんとなく負けてなるものか。と思ってしまうというか。
普段は体内に1ミクロたりとも存在していない反骨精神が
無駄にむくむくと沸き起こってくる辺り、
アタシの天邪鬼ぶりは徹底しているな、と思うのです。

でも、今回ばかりは我慢。我慢。
それぐらい安かったのです。
というわけで。終わったばかりではありますが。
来年も教会バザーが楽しみでなりません。

子どもたちは夜と遊ぶ(上)(下)/辻村深月

2010年11月07日 17時28分43秒 | 読書歴
139.子供たちは夜と遊ぶ(上)(下)/辻村深月

■ストーリ
優しく触れようとしても壊してしまう、大人になりきれない子どもたちは、
暗い恋の闇路へと迷い込んでしまう。同じ大学に通う浅葱(あさぎ)と
狐塚(こづか)、月子と恭司。彼らを取り巻く一方通行の片想いの歯車は、
思わぬ連続殺人事件と絡まり、悲しくも残酷な方向へと狂い始める。
掛け違えた恋のボタンと、絶望の淵に蹲る殺人鬼の影には、どんな結末が
待っているのか。

■感想 ☆☆☆☆☆
何度読み返したか分からないこの作品。
最近、「読書したい!」熱が高まっている母上に勧めたところ、
見事にはまってくれました。で、母上が夢中で読んでいるのを見て
私もつられてしまい、またもや再読。

相も変わらず、読み返すたびに辛く切ない気持ちになります。
しかし、今回初めて「あぁ、この作品はアンハッピーエンドというわけじゃ
なかったんだな。」と思えました。そう思いつつも胸がはりさけそうな想いは
消えないままでしたが、それでも今まで読み返すたびに抱いていた
「なんでこの結末にたどりついちゃったんだろう。
 どこでどの選択肢を間違えたんだろう。」
という後悔のような感情はようやく解消できました。

「彼」にとっては、私がこんなにもやりきれない感情を抱くこの状況ですら、
「ようやく手に入れた幸せ」だったのだと受け入れることができました。
この状況を「幸せ」と感じてしまう彼の状況は、やはりどう考えても
悲惨で切ないけれど、ラストで彼がヒロインに伝えた
「君は彼について色々と聞くかもしれない。
 けれど覚えておいて。彼は本当に幸せだった。
 彼は決してかわいそうなやつなんかじゃなかったんだ。」
という言葉は大きな救いでした。

「彼」に「その後」があることが嬉しいし、幸せと感じられるようになった
彼ならば、「その後」に広がる未来で、きっと幸せをつかみ取っただろうと
思いました。

ところで、今月(10月)の「今夜も生でさだまさし」(通称ナマサダ)では
この作品でインパクトあるアイテムとして登場している蝶「アサギマダラ」の
写真が紹介されました。予想通りの美しさに納得。
うん。
アサギは(アサギマダラも)華やかで華奢で美しい生き物だと思ってました。
そして「美しい」は「悲しい」にとても似合うな、とも思いました。

ちなみに、珍しく作品世界に入り込んでしまった母上。
上巻を読み終えた後、下巻は1日で読破しておりました。
これ、母上にとっては画期的な出来事なのです。すごいことなのです。
「本」って合う、合わないが本当にあるんだなー、好みの本に出合えたら
読むという行為はまったく苦痛ではなくなるんだな、としみじみ思いました。

まだまだよろしく。

2010年11月07日 00時38分18秒 | 日常生活
さらば!ブラウン管!と勇ましく電気屋へ出発した今朝。
テレビについての知識が何もなかったワタクシが
妹夫妻と従兄弟のおかげで、無事にテレビを購入することができました。
テレビについての知識が何もないくせに
テレビ大活用生活を送っているワタクシは、
これを機にブルーなレイさんにも我が家に来ていただくことにしました。
ハードなディスクさんとブルーなレイさんの違いは
未だに「ブルーなレイさんのほうが『すごい子』なんだよね?」
というぐらいよく分かっていないわけですが
なにせ、我が家のハードなディスクさんはここ3ヶ月ほど、
非常にご機嫌ななめなのです。
なんとも独占欲が強い子になってしまい、
録画はしてくれるものの、録画したものを囲い込む始末。
自分の外に出しやがらないのです。

というわけで、
私だって、その子とこれからもずっと仲良くしたいのよー。
できれば、ずっと我が家にいてもらいたいのよー。
と思ったドラマさんたちとも、ここ数ヶ月は短期間でお別れする羽目に。
あまりの切なさに思い切って録画機購入に至ったのでした。

それにしても。
恐るべし、エコポイント効果。
「さらば!ブラウン管!」と大見得を切って家を出たわけですが
みなさん一様にかけこみ購入をされているらしく
(そういうワタクシもエコポイント打ち切りを知って
 駆け込んだわけですが。考えることはみんな同じね。)
新しい美しいテレビさんはすぐには我が家にやってこない模様。
一番早い到着ですら、来週の水曜日、と言われてしまいました。
その上、現在、配達大混雑で時間指定がまったくできないため
誰かがまる一日在宅できる日を配達日指定にしてください、
とお願いされてしまいました。

・・・まる1日ですかー。
まる1日、家にいられる日ですかー。


と、いうわけで。
しばらくの間「ただいま!ブラウン管さん。」の日々です。
ちょっぴり拍子抜け。
ちょっぴり拍子抜けではありますが、よくよく考えると、
今のテレビさんには実に10年もお世話になっているわけで、
そのうえ、ブラウン管さんとの日々もおそらくこれが最後で
もう二度とこの立体感あるどっしりとしたボディには
お会いできない可能性が高いわけで、
「お別れを惜しむ期間」があってよかったかも、と思いました。

でも。
早く我が家で新しい美しいテレビを見てみたいなー。
ブラウン管さんとの違いを如実に実感してみたいなー。

意外と(?)別れはあっさり受け入れられるタイプです。
「去るものは追わず」がモットーです。

流行りの波に乗ってみる

2010年11月06日 10時47分28秒 | 日常生活
いよいよ時代の流れに乗って我が家も地デジ化です。
さらばブラウン管さん。
待ってろよ!薄い美しい(らしい)テレビ!


しかし。
家電知識がまったくないワタクシには
どのテレビがいいのかまったくもってちんぷんかんぷん。
もう、思わず「いっちゃん安いのください。」
と言いそうな勢いでわかりません。

というわけで、家電大好き(らしい)従兄弟に
テレビの調査を(無理矢理)お任せし、
頼もしい妹夫妻に値段交渉を(これまた無理矢理)お任せし、
本日親戚動員のもとテレビ購入です。
わくわくするぞー。

そろそろ鬼も笑わない頃じゃないかな。

2010年11月05日 00時25分18秒 | 日常生活
今年も残すところ2ヶ月を切りました。
毎年恒例、来年の手帳選びのシーズンです。

手帳と言っても、スケジュール管理をするのではなく
起こった出来事を書き留めるもの。
1冊は毎年恒例。新潮社さんの「MY BOOK」です。
こちらは妹との交換用。

そして、もう1冊も毎年恒例。ほぼ日手帳です。
こちらは友人との交換用。

つまるところ、私にとってはどちらも手帳というより交換日記。
新潮社さんの手帳は迷うこともなく、来年分を購入するのみですが
ほぼ日さんのほうはカバーがとてつもなくたくさんあるのです。
そして、カバーによって、微妙に価格が違うのです。
現在、3種類のカバーで迷い中。
ナイロンカバーの無地で優しいピンク色のもの。
鮮やかな黄色の裏地がキュートなポイントとなっているファブリックのもの。
そして、ディズニークラシックミッキーとコラボしている
薄灰色のファブリックのもの。

どれも「かわいい!」と思っているので、見れば見るほど迷うばかり。
価格は若干違うものの、革製品のように
「はい!ムリ!」と即効で選択肢から外すほどでもなく。
それに、なんとなく「一番安いから」という理由で選ぶのは
悔しい気もするし。
だからといって、ファブリックを選ぶと布製品だけに
1年間、汚さず使いこなせるのか、それもまた不安だし。

それに何より今年のナイロンカバーは
色使いがとても淡く優しくオンナノコ心がくすぐられるのです。
どうしよう・・・と迷い中。

このカバー選びに迷う期間も毎年の楽しみです。

さようなら、らぶ子 その他/よしもとばなな

2010年11月05日 00時02分04秒 | 読書歴
132.さようなら、ラブ子―yoshimotobanana.com(6)/よしもとばなな
133.大人の水ぼうそう―yoshimotobanana.com 2009 /よしもとばなな
134.なにもかも二倍―yoshimotobanana.com 2007 /よしもとばなな

■内容
⇒さようなら、ラブ子
わが子、通称「チビラ」は1歳になりました。そして12年連れ添った
ゴールデンレトリバー「ラブ子」との別れが近づいてきて。
家族との最後の日々。忘れることは一生ないと思う2004年の記録。
⇒大人の水ぼうそう
チビからもらって、初めてかかった水ぼうそう。
カラフルでしましまな2009年の毎日を1年分。
⇒なにもかも二倍
ハワイで奇跡のような夕陽に照らされ、ローマで憧れのダリオ監督に出会う。
旅と大切な人との出会いを重ねながら、新作小説の完成を目指した
2007年の1年間。よいことも悪いこともどかんときた出来事の数々。

■感想 ☆☆☆☆
よしもとばななさんがWEB上で公開している日記を1年分まとめて
文庫化したもの。あまりの表紙のかわいらしさに思わず全てまとめて
借りたくなりましたが、たくさんあり過ぎて断念。
「公開するもの」と割り切って、話題は取捨選択していると思うのですが、
それでも書くことを選んだ話題に関しては飾ることなく、
自分の思いを言葉にしていて、その潔さに圧倒されました。
スピリチュアルなことに関する部分など、内容すべてに共感している
わけではありませんが、意見の違いは違いとして受け入れつつ、
感銘を受けながら読むことができました。
日記から垣間見える彼女は、作品世界から受ける印象よりもう少し情熱的。
好きなもの、嫌いなものがしっかり確立していて、
嫌いなものは嫌いとはっきり言う。その嘘をつかない正直な感じが
読んでいて感じる心地よさにつながっているのかな、と思いました。

「なにもかも二倍」のあとがきに書かれていた文章が印象的で
非常に心に残りました。


「自分には関係ない、どうでもいいかもしれないと思うことを
気を抜いてだらだらと読んでいると、中に自分にとってとんでもない
大事なことが入っていた、宝探しみたい」というふうに書こうと
意図しています。がらくたが多すぎるときもありますが、
いいことばかり抜粋した教訓っぽい本っていうのが
たいていあんまり面白くないと思うので、たぶんがらくたが
好きなんでしょう。


うん。私もそういった気持ちでばななさんの本を手にとっています。
エッセイ、小説、ジャンルにこだわらず、ばななさんの作品を
読んでいると、どこかで「あ、この言葉好きだな。」と思える
言葉に出会える。その瞬間が大好きです。

10円玉で買えるもの

2010年11月03日 23時28分05秒 | 日常生活
本日は教会バザー。
午前8時集合。解散は午後8時。
教会滞在時間12時間はさすがに疲れ果てました。

疲れ果てましたが、非常に充実した楽しい1日でした。
例年以上の人出に例年以上の売上。
ぎすぎすとしたやりとりも万引きのようないざこざもなく
たくさんの人たちに教会を訪れてもらえ、
たくさんの物が新しい住処を見つけて旅立っていきました。
教会にいた人たちみんなが1日中笑顔だったね、
と反省会でみんなが言い合いました。

楽しかった!!

ちびっこたちもたくさんやってきて
それぞれのお小遣いで真剣にお買い物。
握り締めているのはおそらく「バザーのために」
ともらってきたお小遣いで、だからこそみんな真剣に
「欲しいもの」を選んでいました。
ちびっこにたちとって、「自分で」買い物できること
それ自体が嬉しくて楽しい出来事なんだろうなー。

そんな中、10円玉を握り締めたちびっこくんが話しかけてきました。
「おねえちゃん。10円で100円玉買いたいんやけど、買える?」

・・・うーん。それはムリです。
10円で100円玉は買えません。

「じゃあさ。10円玉を100円玉に両替できる?」

ごめんけど、それもムリなんよー。
10円玉1枚を100円玉には両替できんのよー。

もーね。
小ズルイことを考えての質問などでは全然なく
心から真剣に、一生懸命、欲しいものを考えた上での質問なのです。
それが分かるだけに、かわいいというか、なんというか。
100円玉は買えないけどね、と
一生懸命、10円で買えるものを探し出しました。
教会バザーは10円で買えるものも盛り沢山。
ちびっこたちの(お財布の)心強い味方です。

と言いつつ。
ワタクシは「安い、安い」と興奮して
ついついいろんなものを買いすぎてしまいました。
思いがけない散財です。

そして。
今週土曜日は八幡東区にある枝光教会でもバザーです。
また散財しちゃうなー。

10月の読書

2010年11月03日 01時53分29秒 | 読書歴
今月はエッセイ多め。読書傾向に偏りがあるなー。

131.うずまき猫の探し方/村上春樹
■内容
アメリカのケンブリッジに住んだ93年から95年にかけての滞在記。
ボストン・マラソンに向けて昴揚していく街の表情、「猫の喜ぶビデオ」の
驚くべき効果、年末に車が盗まれて困り果てた話。毎度おなじみ水丸画伯と
愛妻、陽子夫人が絵と写真で参加した絵日記風エッセイ集。

■感想 ☆☆☆
「やがて哀しき日本語」の後日譚にあたるエッセイ集。と書かれていましたが
「やがて~」よりかなりくだけた感じで読みやすくなっています。
耀子夫人の写真も瑞々しくて印象的。夫婦の仲の良さが写真からも
文章からも伝わってきました。

132.さようならラブ子/よしもとばなな
133.おとなの水ぼうそう/よしもとばなな
134.なにもかも2倍/よしもとばなな

■感想 ☆☆☆*
 感想が長くなったため、コチラにアップしました。

135.天野祐吉のことばの原っぱ/天野祐吉
■内容
近ごろ、ことばは元気がない。正しい日本語よりも、美しい日本語よりも、
いきいきとした日本語がいい。ことばをめぐる58編のエッセイ。

■感想 ☆☆☆
朝日新聞でテレビCMに関するコラムを長期連載している著者。
コラムがとても面白いため、エッセイにも手を出してみました。
まとめて読んでみて、私は彼の軽やかな考え方、地に足つけて
生きようとする姿勢が大好きなんだな、と実感しました。
楽しく読み進めていると、随所に共感できる言葉があって
読み終えた後、なんとなくすっきりしました。

136.窓際OL会社はいつもてんやわんや/斉藤由香
■内容
お台場某社より実況中継する赤裸々爆裂エッセイ。
年末年始に強行された社屋のドタバタ引越、精力剤「マカ」をめぐる
珍妙な出来事、あっと驚くOL夜のナイショ話、フジテレビをはじめと
するマスコミの実態。ニッポンの会社ってどこもこうなの?!
会社や仕事に悩んだ時、ビジネス書を読む前に手にとってほしい1冊。

■感想 ☆☆☆☆
著者は作家、北杜夫さんの一人娘。父親を見て育った娘は「絶対に
作家にだけはなるまい」と決意し、サントリーへ入社。会社員生活を
送っていますが、サントリーさんが大変自由な社風のようで、
こういったエッセイ連載もOK、エッセイでの赤裸々な会社暴露話も
OK、となんでもありの模様。そんな自由な社風の中でのびのび
楽しく会社員生活を送っている由香さんが素敵でした。
窓際OLと謙遜しているものの、エッセイを読む限り、
かなりの愛社精神、かなりの働き者っぷり。歩く広告塔として、
恐れを知らない広告塔としていろんなところに顔を出し、
顔を出した先々でVIPに、有名人に、無名人に、
多くの方々へ精力的に自社製品を宣伝されています。
ぜひ他のエッセイも読んでみたい!

137.しあわせ/レイフ・クリスチャンソン
■内容
「しあわせ」ってどんなもの?
欲しい物を手に入れること?欲しい物を探し求められること?

■感想 ☆☆☆
シンプルな言葉で綴られた絵本。
白黒の朴訥としたラインで描かれている挿絵もシンプル。
大人のための絵本の「いいこと言うよー」という雰囲気が
とても苦手なのですが、この作品はそういった雰囲気なく
言葉にも余計な修飾なく、落ち着いた気持ちで読めました。

138.しあわせな葉っぱ/おーなり由子
■ストーリ
ある朝、目がさめると、頭のてっぺんに芽が出ていました。
葉っぱは、あっという間に大きくなり、プチンと抜いても、
すぐに生えてきます。いつもより喉も渇きます。
だけど、誰も気づいてくれません。
隠そうとすればするほど、勢いよく生いしげる葉っぱ。
他人には見えない葉っぱと暮らすひとりの女の子の切ない恋の絵物語。

■感想 ☆☆☆☆
作品1ページ目に記載されている文章
「かみさま どうかどうかハッピーエンドにしてください」。
読み終えた後、私も心から願いました。
どうか彼女がこれからも笑顔で過ごせますように。
どうか彼女が出会った大切な人同じ思いを共有できますように。
おーなりさんのあたたかいイラストがこの作品の雰囲気を
そのまま表現してくれています。
寒い冬に暖かい飲み物を飲みながら読み返したくなる作品。
読み返すたびにこの作品を好きだと思う気持ちが強くなります。

139.子どもたちは夜と遊ぶ(上)(下)
■感想 ☆☆☆☆☆
感想長くなったため、コチラにアップしました。

141.あるキング/伊坂幸太郎
■感想 ☆☆☆*
感想長くなったため、コチラにアップしました。

142.みずうみ/よしもとばなな
■ストーリ
いつの間にか私の家に住むようになった中島くん。みずうみの近くに
住む彼の昔の友だちを訪ねたのをきっかけに、彼の過去が明らかになる。
壮絶で悲しく、すべてを包み込む澄みきった優しさにあふれた小説。

■感想 ☆☆*
カバーの美しさに心ひかれ、借りた作品。深く静かな海の底のような
群青色に広がる無数の星。その星がカバーをより深みのある群青色にし、
じっと見つめたくなるカバー。
物語自体も、このカバーとよく合った深く静かな物語です。
弱弱しく細く生きていくのに精いっぱいの中島君と親を失ったばかりで
傷ついてはいるものの、基本的に生きる力に満ち溢れていてしっかり
しているちひろが出会って、徐々に距離を縮めていく日々を淡々と
描いています。中盤以降、やはり淡々と語られる中島君の過去は、
かなり悲惨ですが、その語り口が悲惨さを感じさせません。
けれど、大きな闇をまざまざと感じ、作者が世の中には残酷さや
悲惨さがごくごく日常的に存在すると思っていること、その中で
生きていかなければならないと思っていること、
そういった決意のようなものを感じさせました。

143.ぬしさまへ/畠中恵
■ストーリ
今日も元気に寝込んでいる大店長崎屋の若だんな、一太郎。彼の周囲には
なぜか妖怪がいっぱい。おまけに難事件もめいっぱい。幼なじみの栄吉が
作った饅頭を食べたご隠居が死んでしまったり、新品の布団から泣き声が
聞こえたり。でも、こんなときこそ若だんなの名推理が冴えわたる。
ちょっとトボケた妖怪たちも手下となって大活躍。シリーズ第2弾。

■感想 ☆☆☆*
前作同様、かわいらしいキャラクターがたくさん。彼らが生き生きと
ぼっちゃんの周りを駆け巡っていて、その様子を見て(?)いるだけで
心があったかくなります。
ぼっちゃんがねー、とにかくかわいらしい。
前作では甘やかされてかわいがられて、でもまっとうに生きている
ぼっちゃんを描いていましたが、今作では、まっとうに生きているどころか、
ちゃんと周囲が見えていて、自分の境遇も分かっていて、その中で
自分の存在意義を考えている大人のぼっちゃんが描かれていて、
本当にいい子なんだなぁ、としみじみ思いました。

144.幸せ最高ありがとうマジで!/本谷有希子
■感想 ☆☆☆☆
感想長くなりました。別途、アップします。

145.差別を超えて/臼井敏男
■感想 ☆☆☆
新書サイズの入門編。「」という言葉は知っているものの、
現状やその歴史的変遷についてほとんど知識がないため、
手にとりました。読んでよかった。
福岡県は全国でも「」が多い地域です。「」を普段、
意識することがないのは、「差別」がなくなっているから
ではなく、この問題が「触れてはいけないこと」として
目をそらされていることだから、という本書内の文章を読んで
自分自身を振り返り、納得しました。

146.あさひやま動物園
■感想 ☆☆☆☆☆
旭山動物園で自分へのお土産用に購入したフォトエッセイ集。
どの子も非常にかわいらしく撮れていて、また動物園に
行きたくなりました。何度も見返していますが、何度見ても
やはりカバが一番好き!あのもったりとしたお尻がたまりません。

147.とっても不幸な幸運/畠中恵
■感想 ☆☆☆
感想長くなりました。別途、アップします。

雷桜/2010年日本

2010年11月02日 23時03分30秒 | 映画鑑賞
35.雷桜/2010年日本

■監督:廣木隆一
■脚本:田中幸子、加藤正人
■原作:宇江佐真理
■出演
 岡田将生、蒼井優、小出恵介、柄本明、時任三郎、宮崎美子、和田聰宏
 須藤理彩、若葉竜也、忍成修吾、池畑慎之介、坂東三津五郎
■ストーリ
徳川将軍・秀斉の十七男として生まれた清水斉道(なりみち)は
母の愛を知らずに育ち、心を病んでいた。一方、瀬田村の山で
生まれ育った野性の娘・雷(らい)は、豊かな自然の中で自由奔放に
生きていた。静養のため、瀬田村に向かった斉道は、落雷で根元から
折れてしまった銀杏に桜が芽をつけた奇妙な巨木「雷桜」の下で、
雷と運命的な出会いを果たす。

■感想 ☆☆☆☆
予告で蒼井優さんの熱演を見て以来、「これ見たい!」と思っていた作品。
蒼井さんは予告通りの熱演でした。かっこよかった!
いつものほんわかした雰囲気とまるで異なる野性児、雷を鮮やかに
魅力的に演じられていました。普段の穏やかな語り口から一変、
腹から発生できている感じのやや野太いすごみのある声にもびっくり。

人里離れた山の奥で親父様とふたりだけで暮らす雷。
山や自然が好きで、楽しそうにのびのびと野山を駆け巡る彼女が
とてもキュート。化粧っ気をまったく感じさせないし、馬を自由自在に
乗りこなしたりのしのしと歩いたりする動作はすべて女らしさと無縁。
その「飾らない」様子がとにかく魅力的です。

だからこそ、両親の愛情に触れられず、周囲にいる家臣も自分には
本音を言うわけもなく、孤独と共に育った斉道が彼女の本音に
安らぎ、彼女と一緒に過ごしたいと思った気持ち、彼女と過ごすことで
安心して自分を解放できた気持ち、彼女との時間を心地よいと感じた
気持ちに共感できました。
身分があるために自分が自由に人を好きになれないことをきちんと
認識している斉道と、そういった「政治的な理由」や「建前」を
まったく理解できない雷。
自分の感情だけに心を傾け、自分の感情に素直に動く雷と、自分の
感情よりも家臣や主君、国の民の幸せを追い求めなければならない斉道。
その対比がしっかりと描かれていて、だからこそ、お互いを必要と
しているにも関わらず、正反対の境遇、正反対の育てられ方をしたために
どうしても分かり合えない、未来が交じり合わないふたりの様子が
もどかしかったものの、どちらの気持ちも理解できてしまいました。

クライマックスでふたりが選択した行動も、やはり対照的。
どこまでも自分らしく、自分の感情の赴くままに行動する雷の
まっすぐな瞳と力強い声。そんな雷を誰よりも必要としている斉道の
言葉にならない、言葉にできない心からの叫び声。
ふたりの叫び声に胸をつかれました。

周囲の人たちの感情、行動も丁寧に描かれていて、主人公たちだけでなく
色々な人の想いに共感できる映画でした。
その中でも雷の母親を演じた宮崎美子さん、斉道のお目付け役を演じた
柄本明さん、このおふたりが特に印象的。
ふたりとも静かに主人公たちを見守り続ける役です。
柄本さんの画面いっぱいに迫ってくるような熱演に圧倒されました。
そして、宮崎さんの穏やかな笑顔、ぬくもりあふれる声が役と見事に
シンクロしていて、愛情の大きさ、深さがしみじみと伝わって来ました。

全体的にとてもとても好きな雰囲気の映画だったのですが。
唯一、ふたりの再会場面で突如流れたバラード調の洋楽ポップスには
少し、・・・いえ、かなり大きな違和感を抱きました。
流しかけていた涙が思わずぴたりと止まりました。
あの場面であの曲を選んだのはおそらく「時代劇の型にはまらない作風」
を体現するためかなー、とは思うのですが、それにしたって、
あそこまでの「バラード」を持ってこなくたって・・・。
音楽は入れず、祭りのお囃子だけにしたほうがよかったんじゃないかなー
いやいや、いっそ無音でふたりのアップだけを大写しにするぐらいの
ほうが私は好みだわー!と思いました。
ふたりが再会できた素敵な場面だったはずなのに、集中してなさすぎ。