141.あるキング/伊坂幸太郎
■ストーリ
弱小地方球団・仙醍キングスの熱烈なファンである両親のもとに生まれた
山田王求(やまだ おうく)。「王が求め、王に求められる」ようにと
名づけられた王求は、仙醍キングスに入団してチームを優勝に導く運命を
背負い、野球選手になるべく育てられる。
期待以上に王求の才能が飛び抜けていると知った両親は、さらに異常とも
いえる情熱を彼にそそぐ。天才が同時代、同空間に存在するとき、
その天才は周りの人間に何をもたらすのか?
■感想 ☆☆☆
シェークスピアをまったく読んだことのない人はこの作品を、
折に触れ、登場する印象的な3人の魔女を、どのように読み解くのだろう。
マクベスのストーリすら知らない人もまたしかり。
そういった意味で読者を置いてけぼりにしているようにも感じられました。
また、今までの伊坂作品に多く見られた「ラストに向かって行われる
爽快な伏線の回収」はまったく登場せず、そこはとても残念というか
伊坂さんの今までの作品のようなカタルシスを求めて読むと
肩透かしをくらっただろうなー、とは思いました。
そういった意味で、賛否両論色々と物議をかもしていた状況を
知った上で読めた私は「今までと違うぞー。」という心積もりをして
読めて幸せだったな、と。おそらく何も知らずに読んでいたら
「え?!え?!」と戸惑って読み進められなかったんじゃないかな。
それぐらい今までの伊坂作品とテイストが異なります。
ただ、「今までの伊坂作品らしくない」ものの、
この作品でも伏線はいたるところに張り巡らされています。
始めからラストの1文に向かって、物語は語られ続けます。
読後感はまったく爽快な終わり方ではないものの、
この話は「救い」について描かれているのだと思いました。
重い運命を背負って生きる天才野球選手。
天才にも関わらず、むしろ天才であるが故に、運命はどんどん過酷な
課題を主人公に与え、主人公はそれを静かに受け入れます。
「救い」は彼には与えられません。
けれど、彼らと関わった人たちにとっては、やはり彼の存在や
彼の生きる姿勢、野球に向かう真摯な生き様は「奇跡」であり、
「救い」なのだろうと思いました。
そして、彼がラストに放つ(はずの)ホームランこそ、
多くの人の思いと願いが込められた「奇跡」で「救い」なんだろうな
とラストの場面を読みながら、胸が熱くなりました。
読み終えた後、王求の人生をしみじみと振り返りました。
それぐらい余韻が残る作品でした。
■ストーリ
弱小地方球団・仙醍キングスの熱烈なファンである両親のもとに生まれた
山田王求(やまだ おうく)。「王が求め、王に求められる」ようにと
名づけられた王求は、仙醍キングスに入団してチームを優勝に導く運命を
背負い、野球選手になるべく育てられる。
期待以上に王求の才能が飛び抜けていると知った両親は、さらに異常とも
いえる情熱を彼にそそぐ。天才が同時代、同空間に存在するとき、
その天才は周りの人間に何をもたらすのか?
■感想 ☆☆☆
シェークスピアをまったく読んだことのない人はこの作品を、
折に触れ、登場する印象的な3人の魔女を、どのように読み解くのだろう。
マクベスのストーリすら知らない人もまたしかり。
そういった意味で読者を置いてけぼりにしているようにも感じられました。
また、今までの伊坂作品に多く見られた「ラストに向かって行われる
爽快な伏線の回収」はまったく登場せず、そこはとても残念というか
伊坂さんの今までの作品のようなカタルシスを求めて読むと
肩透かしをくらっただろうなー、とは思いました。
そういった意味で、賛否両論色々と物議をかもしていた状況を
知った上で読めた私は「今までと違うぞー。」という心積もりをして
読めて幸せだったな、と。おそらく何も知らずに読んでいたら
「え?!え?!」と戸惑って読み進められなかったんじゃないかな。
それぐらい今までの伊坂作品とテイストが異なります。
ただ、「今までの伊坂作品らしくない」ものの、
この作品でも伏線はいたるところに張り巡らされています。
始めからラストの1文に向かって、物語は語られ続けます。
読後感はまったく爽快な終わり方ではないものの、
この話は「救い」について描かれているのだと思いました。
重い運命を背負って生きる天才野球選手。
天才にも関わらず、むしろ天才であるが故に、運命はどんどん過酷な
課題を主人公に与え、主人公はそれを静かに受け入れます。
「救い」は彼には与えられません。
けれど、彼らと関わった人たちにとっては、やはり彼の存在や
彼の生きる姿勢、野球に向かう真摯な生き様は「奇跡」であり、
「救い」なのだろうと思いました。
そして、彼がラストに放つ(はずの)ホームランこそ、
多くの人の思いと願いが込められた「奇跡」で「救い」なんだろうな
とラストの場面を読みながら、胸が熱くなりました。
読み終えた後、王求の人生をしみじみと振り返りました。
それぐらい余韻が残る作品でした。