旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

信州の峠道「ぶどう峠」にて

2019-05-11 | 日記・エッセイ・コラム

 急峻な山塊に囲まれた信州は、千曲、天竜、木曽など大きな川にでも沿わない限り、
境を連ねる隣県と往還するには峠を越えなければならない。
県境のトンネルを潜ったり、たった一つのカーブを曲がるだけで、空模様が一変したり、
風の匂いが変わったり、走り屋ならずとも峠越えは魅力あるドライブになる。

 南佐久郡小海町、国道141号の小海大橋交差点から県道124号を駆け上がる。
遅い春を迎えた長野県側の山は茶色、自生の桜が淡いピンクを咲き誇っている。  

 上信国境最南の「ぶどう峠」は標高1,510m、道中安全祈願の地蔵が鎮座する。
狭隘で険しい道路は、4月17日に冬期通行止めが解かれたばかりだ。

 群馬県側の谷は深く彫り込まれ、奈落に落ちるかの様にかなりの急勾配を下りて行く。
谷底から間断なく立ち上がってくる霧は生暖かく、寧ろ夏の到来を予感させるね。
一転、落葉広葉樹は一斉に新緑が芽吹いて、若い緑色が目に眩しいばかりだ。
緑のトンネルを抜けて、上野村楢原の国道299号交点までは16キロ、30分ほど。 
結局、只1台の擦れ違いもなかった峠越え、さて秩父へ抜けたら美味い蕎麦でも食べよう。 

アメリカン・フィーリング / サーカス 1979