太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

ばか笑い

2015-01-31 23:05:46 | 日記
今までの人生で、一番笑ったのはどんなことだったか。

涙を流しながら笑うのは、姉妹でふざけている時が多い。

いろんな場面で大笑いしていると思うけれど、

忘れられない大笑いがある。



妹が2歳か、それより小さかっただろうか。

妹はどこかを擦りむいたりすると、包帯を巻かなければ気が済まない。

包帯を巻けば治ると思っているのだ。

ある時、妹が転んだかなにかで、鼻の下を擦りむいたことがあった。

さすがにその場所に包帯は巻けないのだと母が説明しても

妹は泣き騒ぎ、仕方がないので鼻の下に包帯を巻いてやった。

ピアノがある部屋に姉と私がいたところに、母が妹を抱いて入って来た。

泣いたあとでまだ涙で頬が濡れていて、半ばしかめ面をした妹の

鼻の下には、半分の幅に切った包帯が、鉢巻のように、でも弱々しく巻かれていた。

それを見た姉と私は、笑いの発作に見舞われて、

言葉どおり、腹を抱えて、床を転げ回った。

笑いがおしよせて息もできないぐらいで、ヒイヒイと引きつりながら笑った。

転げ回った床の冷たい感触や、ピアノの足の匂いや、

足で踏む金属の冷んやりとした感じを今でも鮮明に覚えている。

妹は自分が笑われているとわかって、再び泣き出した。


どのぐらい笑っていただろう。

笑いが収まるとどっと疲れて、姉と私は床に転がったまま

天井を見ていた。

蛍光灯が じー という音をたてていた。

天井を眺めたまま、思い出したように「フ、…フフ」と、気味悪く笑っていた。


あれはたぶん夏だった。

母は若く、包帯を巻けと泣いた妹は、あの頃の母の年をとっくに超えた。

バカ笑いの、一番の思い出である。




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