太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

ハンター

2018-06-05 18:44:34 | 日記
夜中に目が覚めて、水を飲みに1階に降りた。

冷蔵庫を開けた灯りだけで足りるので、照明をつけずに冷水を出し

コップに注いで飲み干し、コップをすすいでいたら、暗闇で猫が走り回っている気配がする。

猫は夜型らしいから、2匹で追いかけっこでもしているのかと思ったら、

走り回っているのは1匹だけだ。

時々、ゲッコー(やもり)の子供を追いかけて殺してしまうことがあるので

もしそうだったらゲッコーを救うべしと思って部屋の明かりをつけた。



が、つけなきゃよかった。



猫が追いかけていたのはゲッコーではなく、

ああ、思い出しただけでもゾっとする、せせらぎだった。

注)せせらぎとは、伊坂幸太郎氏の小説から引用した、Gのつく虫の別名である。名前を書くのも言うのも嫌なため。

猫パンチをくらって脳震盪したのか死んだのか、ひっくり返ったせせらぎはビクともしない。

そのせせらぎで、さらに遊ぼうとする猫をあわてて抱えてどけた。

私の許容範囲を超えるギリギリの大きさだったので、ペーパータオルを10枚ぐらい重ね、

せせらぎの上にかぶせ、つまんで蓋つきのゴミ箱に捨てた。

つまんだ時にせせらぎの感触が指に伝わらないように、ペーパータオルは厚ければ厚いほどよろしい。



日本にいた時、せせらぎに向かってスプレーを噴きかけると、出てきた泡がせせらぎを包んでしまうというものがあった。

泡で包んだまま、ポイと捨てる。

本体にさわりたくない、見るのも嫌だという私は画期的な商品だと思い、すぐに買った。

そしてせせらぎに向かって泡を噴射した。

確かに泡はヤツを包み、姿は見えなくなったが、泡の中で動いているのがわかる。

焦った私が泡を噴射しまくったため、泡のボールはみるみる巨大になり、その巨大ボールが

せせらぎを中に閉じ込めたまま、部屋の中を移動してゆくのを、私は途方に暮れてみていた。

ここで泡のボールをつまんで捨てればいいのだろうが、うっかり近づいたときに中から出てきたらと思うと恐ろしくて近づけない。

まったくあれはエライ目にあった。



さて、夫の両親が旅行中で留守なので、2階のトイレよりも近い、両親側のトイレを使った。

すると、床のタイルの上に何か黒っぽいものが見える。

照明はつけていないが、楕円型のそれは紛れもなくせせらぎだ。

こんなとき、遠くのものがよく見えるのは損だ。

立った位置から、床の隅にあるそれが、手足を折りたたんでひっくり返っているのがはっきり見えてしまう。

それはもう私の手には負えない大きさであったので、夫を呼んだ。

すると、やってきた夫が、素手でそれを取ろうとするではないか。

「ちょッッッ、 ティッシュ、ティッシュ、ティッシュ!!」

両親側の家に遊びに行った猫たちが、せせらぎを見つけて追いかけたに違いない。

両親の家にせせらぎが棲んでいることは知っている。

シンクの下の生ゴミ入れには蓋がないから、餌付けしているようなもんだ。

だから我が家と両親の家の間のドアは、普段は閉めておき、猫を遊びに行かせるときだけあけるようにしているし

生ゴミ入れにはきっちり蓋をするようにしている。

家を建てて3年半、我が家にせせらぎが出たのは初めてだ。

せせらぎもバッタも同じである夫は、私がこれほどまでに忌み嫌うのが理解できないようで、

ゴミ箱の蓋はきっちり閉めて、と口をすっぱくして言っているのに、朝見たら開いていた、ということが何度もあった。

それが原因だとしても、じゃあいったいどこから?


「排水溝だってあるし、両親側とのドアからだって来れるでしょ」


夫はさらっとそう言った。

「だってドアは閉めてあるよ」

「閉めたって、ルーバーがあるんだから意味ないと思うよ?」

そうだった。

ドア全体に風通しのルーバーがあり、ご丁寧にドアと天井の間にもガラスのルーバーがついていたのだった。

やつらはここから出入りしていたというのか。

がっくりしている私に、夫が言った。

「うちには2匹もハンターがいるんだから、獲ってもらえばいいじゃない」

「もし食べちゃったらどうするのさ・・・」

「知らないだけで、食べたりしてたかもよ」


そんな・・・・ホラー映画だ。

せせらぎが平気な人との会話は、まったくもって共感しあえないまま終わるのである。










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