以前、従軍慰安婦関係の本に出てきた有吉佐和子の「非色」を図書館で借りて、読み終えました。ものすごく読みごたえがありました!人種差別をテーマにしたこの本、昭和42年に出ています。私が10才の頃ですよ。有吉佐和子の本を今回初めて読みました。それも、一気に読みました。私たち日本人は黄色人種だから当然、差別される側ですが、戦後の占領軍が日本に来た時、黒人と結婚して子を産み、帰国した彼を追ってアメリカに移住した主人公の、アメリカでの人種差別の様子が克明に描かれていて、ショックでした。黒人の差別の外にも、イタリア系やプエルトリコ、なんとなくわかっていたつもりでも、昔の現実は本当に恐ろしい・・。そしてアメリカでは中絶が罪だとされていること。カトリックはかなり厳しい。
戦後の日本では、旧満州でのソ連兵による強姦はすさまじく、帰国後はすぐに女性は中絶手術を受けていました。日本では、それが当たり前だったのが、アメリカではそうじゃない。出産で仕事を失う女性、これは本当に怖いこと。生活ができなくなるのですから。それはいまにも通じること。何も変わっちゃいないのかもしれませんよね。
妊娠したら産むのが当たり前?それは、恵まれた環境に入ればそうでしょうけれど、現実は厳しい。女性だけが仕事をあきらめるなんて、本当におかしい。少子化を問題にするのなら、育児体制の充実と職場復帰の補償を国がしてくれなくちゃ、産めませんよ。いまだに、こんなことで女性が苦しんでいるんだから、悔しい限り。
小説の終盤は、主人公が「私もニグロだ!」と開き直って、生きなおそうとします。
占領軍にいた黒人の夫が「平和と平等」を力説していたのが、その後のアメリカでのスラム街の生活を思うと、夢物語に近かったんだと悲しくなります。
私が気になっている「人はなぜ他人を支配したがるのか」の答えのヒントが、この小説にあるような気がしました。