雨が強くなったり弱くなったりしながら僕の根性を試してきます。
郵便局で尋ねてもいまいちよく分からず、ちょっと迷い気味に進みます。
「秋山郷トレッキングマップ」に導かれながらたどり着いた棚田は「結東石垣田」と呼ばれています。
棚の部分に石垣を丁寧に積んであります。
近頃はこういった文化を守るために、先代から受け継ぐように行政が保護していると聞いたことがあります。
結東石垣田を過ぎると、国道に向かって行くのですが、ちょっとした森を抜けます。
雑草が生い茂っていますが、それほど苦痛ではなかったです。
ただ、雨の山道はもうたくさんという気持ちになっています。
舗装路に出るとあとは津南駅まで舗装路をひたすら歩くだけです。
だんだん生活圏に入って行くので、ずぶ濡れの格好が少し恥ずかしくなりはじめました。
途中におみやげ「わらび」というお店がありました。
「大福」の文字に足が止まってしまいました。
『すみませーん、大福1個だけ下さい』
店番のおばあちゃんはちよっと耳が遠いようです。
「きび大福」という黄色い大福を買いました。
外のベンチでいただくことにしました。
ふと振り返ると、お店のガラスにスノーカントリートレイルのサポートを告げる張り紙がありました。
トイレのサポートがあったので、おばあちゃんに告げてトイレを借りました。
ここまで歩いてきて、ハイカー証を提示してサポートを受けたのははじめてです。
嬉しくなって、ハイカー証のステッカーをもう1枚買ってしまいました。車にでも貼ろうかな。
『はじめて売れたよ』と言ってました。
僕は『これからたくさん売れますよ』とにっこり笑ってトイレのお礼を言い、お店をあとにしました。
「きび大福」はとても美味しかったです。
その後現れたお蕎麦屋さんで食事をしようと計画していましたが、大福でお腹が満足してしまったので今日の温泉宿の食事まで我慢しようと思いました。
思いましたが、定休日でした。
3日目ぶりに入れる風呂とちゃんとした食事に期待感を膨らませつつ、このずぶ濡れの身体をどう言い訳するか考えながら歩きます。
色々考えたあげく、到着したときのセリフを決めました。
『こんにちは、予約していた高橋です。乾いているところが1箇所もありません。どうしたらよろしいでしょうか。あ、待って待って、3m以内の接近は危険です。毒ガスが発生しています。それから出来ましたら靴を乾かす良い知恵をお授け下さい』
よし。これに決めた。
だいぶ時間が経って歩くのが嫌になってきた頃、今夜の宿津南駅前の「湯の里 雪国」に到着しました。
時刻は17時45分です。
『こんにちは、予約していた高橋です。乾いているところが1箇所もありません。どうしたらよろしいでしょうか。あ、待って待って、3m以内の接近は危険です。毒ガスが発生しています。それから出来ましたら靴を乾かす良い知恵をお授け下さい』
ふふふ、上手に言えた。
すると迎えてくれたスタッフの女性が、
『はははは、大丈夫ですよ。うち、お仕事の方たちがけっこういらっしゃるので、皆さんお客様と同じ感じですよ』
ってもうバレてるじゃないですか。
『それからあとでお部屋の方へ靴の乾燥機をお持ちしますね。お風呂は4階です。お食事はその後でよろしいですか? では19時にご用意します』
よっしゃ風呂だ。
やったー3日ぶりだぜ。
顎の骨が見えるんじゃないかというぐらい髭を剃って、毛がむしれて毛根が飛び出すぐらい頭を洗って、1枚2枚と皮が剥けて筋肉が露出するぐらい身体を洗って、尖ってドラキュラのようになるまで歯を磨くんだ。
ザブーン。
気持ちE〜。
ついつい長風呂になってしまいました。
時間を気にせず入っていたので、上がって時計を見てびっくりしました。
間もなく19時です。
慌てて食堂に行くと、すでに配膳されており、どうやら僕が1番最後のようです。
ひとまず生意気にノンアルコールビールを頼みました。
すると、ご飯はなかなかよそってくれませんでした。
でもそれが良かった。
なんせ食べきれないほどの料理、それも手がかかっている田舎料理もあります。
味も美味しく、スタッフも楽しげに仕事しています。
そうそう、そういえば予約したときにパンフレットの送付を希望しました。
すると達筆な毛筆でお礼文が添えられていました。とても始めから印象が良かったのです。
随所に文字の芸術が飾られ、見るとひとつひとつが手づくりだったりします。
お部屋のお茶菓子に添えられた言葉、押し花のランチョンマットなど、これを継続してやっていくのは一苦労でしょうね。
そしてどうやら家族で切り盛りしているようで、ホールに出ていた若い女の子は姪っ子ですと教えてくれたりしました。
とても良い雰囲気の中宿泊出来ました。
部屋に戻って濡れ物を乾くすための乾燥機をお願いしました。
靴を差し込むタイプのドライヤーが来ました。
まず靴から始め、靴下やカッパなんかも工夫して乾かしました。
0時過ぎまでかかってなんとか乾きました。
さて寝るか。
4日目最終回へ続きます。
3日目
歩行距離 39.7km
累計標高差 +699m -2,621m
所要時間 11時間30分
60,800歩
郵便局で尋ねてもいまいちよく分からず、ちょっと迷い気味に進みます。
「秋山郷トレッキングマップ」に導かれながらたどり着いた棚田は「結東石垣田」と呼ばれています。
棚の部分に石垣を丁寧に積んであります。
近頃はこういった文化を守るために、先代から受け継ぐように行政が保護していると聞いたことがあります。
結東石垣田を過ぎると、国道に向かって行くのですが、ちょっとした森を抜けます。
雑草が生い茂っていますが、それほど苦痛ではなかったです。
ただ、雨の山道はもうたくさんという気持ちになっています。
舗装路に出るとあとは津南駅まで舗装路をひたすら歩くだけです。
だんだん生活圏に入って行くので、ずぶ濡れの格好が少し恥ずかしくなりはじめました。
途中におみやげ「わらび」というお店がありました。
「大福」の文字に足が止まってしまいました。
『すみませーん、大福1個だけ下さい』
店番のおばあちゃんはちよっと耳が遠いようです。
「きび大福」という黄色い大福を買いました。
外のベンチでいただくことにしました。
ふと振り返ると、お店のガラスにスノーカントリートレイルのサポートを告げる張り紙がありました。
トイレのサポートがあったので、おばあちゃんに告げてトイレを借りました。
ここまで歩いてきて、ハイカー証を提示してサポートを受けたのははじめてです。
嬉しくなって、ハイカー証のステッカーをもう1枚買ってしまいました。車にでも貼ろうかな。
『はじめて売れたよ』と言ってました。
僕は『これからたくさん売れますよ』とにっこり笑ってトイレのお礼を言い、お店をあとにしました。
「きび大福」はとても美味しかったです。
その後現れたお蕎麦屋さんで食事をしようと計画していましたが、大福でお腹が満足してしまったので今日の温泉宿の食事まで我慢しようと思いました。
思いましたが、定休日でした。
3日目ぶりに入れる風呂とちゃんとした食事に期待感を膨らませつつ、このずぶ濡れの身体をどう言い訳するか考えながら歩きます。
色々考えたあげく、到着したときのセリフを決めました。
『こんにちは、予約していた高橋です。乾いているところが1箇所もありません。どうしたらよろしいでしょうか。あ、待って待って、3m以内の接近は危険です。毒ガスが発生しています。それから出来ましたら靴を乾かす良い知恵をお授け下さい』
よし。これに決めた。
だいぶ時間が経って歩くのが嫌になってきた頃、今夜の宿津南駅前の「湯の里 雪国」に到着しました。
時刻は17時45分です。
『こんにちは、予約していた高橋です。乾いているところが1箇所もありません。どうしたらよろしいでしょうか。あ、待って待って、3m以内の接近は危険です。毒ガスが発生しています。それから出来ましたら靴を乾かす良い知恵をお授け下さい』
ふふふ、上手に言えた。
すると迎えてくれたスタッフの女性が、
『はははは、大丈夫ですよ。うち、お仕事の方たちがけっこういらっしゃるので、皆さんお客様と同じ感じですよ』
ってもうバレてるじゃないですか。
『それからあとでお部屋の方へ靴の乾燥機をお持ちしますね。お風呂は4階です。お食事はその後でよろしいですか? では19時にご用意します』
よっしゃ風呂だ。
やったー3日ぶりだぜ。
顎の骨が見えるんじゃないかというぐらい髭を剃って、毛がむしれて毛根が飛び出すぐらい頭を洗って、1枚2枚と皮が剥けて筋肉が露出するぐらい身体を洗って、尖ってドラキュラのようになるまで歯を磨くんだ。
ザブーン。
気持ちE〜。
ついつい長風呂になってしまいました。
時間を気にせず入っていたので、上がって時計を見てびっくりしました。
間もなく19時です。
慌てて食堂に行くと、すでに配膳されており、どうやら僕が1番最後のようです。
ひとまず生意気にノンアルコールビールを頼みました。
すると、ご飯はなかなかよそってくれませんでした。
でもそれが良かった。
なんせ食べきれないほどの料理、それも手がかかっている田舎料理もあります。
味も美味しく、スタッフも楽しげに仕事しています。
そうそう、そういえば予約したときにパンフレットの送付を希望しました。
すると達筆な毛筆でお礼文が添えられていました。とても始めから印象が良かったのです。
随所に文字の芸術が飾られ、見るとひとつひとつが手づくりだったりします。
お部屋のお茶菓子に添えられた言葉、押し花のランチョンマットなど、これを継続してやっていくのは一苦労でしょうね。
そしてどうやら家族で切り盛りしているようで、ホールに出ていた若い女の子は姪っ子ですと教えてくれたりしました。
とても良い雰囲気の中宿泊出来ました。
部屋に戻って濡れ物を乾くすための乾燥機をお願いしました。
靴を差し込むタイプのドライヤーが来ました。
まず靴から始め、靴下やカッパなんかも工夫して乾かしました。
0時過ぎまでかかってなんとか乾きました。
さて寝るか。
4日目最終回へ続きます。
3日目
歩行距離 39.7km
累計標高差 +699m -2,621m
所要時間 11時間30分
60,800歩