『新建材CLTは、日本の林業と住宅事情を変えられるか 1』
―林業大国、ロシア、ブラジル、カナダ、アメリカ、中国等との競合準備をー
ウエブ情報から引用
数年前に、画期的な新建材CLT(Cross Laminated Timber)が、開発・実用化されたことが発表されました。 この時、久々のヒット製品だと感激したのが下記ウェブ情報です。
ひき板(ラミナ)を並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料です。 厚みのある大きな板であり、建築の構造材の他、土木用材、家具などにも使用されています。
その強度は『鉄筋コンクリートに匹敵』する。 オーストリアで最も進み、すでに9階建てまで許可され、ロンドンでも9階建てが実現している。 この新建材CLTはベニヤ板とは区別されている。
この新建材CLTは、救世主のように思われますが、日本の林業の弱点である;
『森林所有が小規模で、土地が急峻である。 伐採搬出が旧態依然でコストが高すぎる。 外材のように大量安定供給ができない。 木材の流通ルートが複雑すぎる。 乾燥させた木材が少ない。 品質がバラバラで使いづらい。』
これをカバーできるか疑問が多く、更に単層人工林・人手不足・山林の地主不明問題まである中で、林業大国のロシア・ブラジル・カナダ・アメリカ・中国等が、新建材CLTの生産、輸出を始めたら、原木輸出より輸送効率も良く、新建材CLTの国際競争力は日本には、分が無いように思われます。
前置きが長くなりました。 先日(20180725)テレビ民放某局がワイドショーで、新建材CLTの超高層ビルの紹介がされました。 その概要はウェブにありました。 早速ウェブ情報からです。
住友林業は、2月8日、2041年までに木造を主部材とした超高層ビルを都内に建設する構想「W350」を発表した。高さ350m、地上70階建ての複合施設で、総工費は約6000億円。 同社が日建設計の協力を得て計画をまとめた。 実現すれば、現在三菱地所が東京駅北側の常盤橋街区で建設を進める高さ約390メートルの超高層ビルに次ぐ高さとなる。
因みに、
あべのハルカスの総工費は、1,300億円(高さ300ⅿ、60階)、
横浜のランドマークは、総工費は、2,700億円(高さ296ⅿ、70階)です。
テレビ電波塔の高さは別ですが、ビルの『高さ競争』は如何なものかと思います。 アラブ首長国連邦ドバイにある、世界一高い超高層ビルはブルジ・ハリーファ、828ⅿです。 なお、ジッダ・タワー、1,008ⅿは、サウジアラビアのジッダで建設中のハイパービルディングです。 このビルの、英訳別称のキングダム・タワーは2019年に完成予定でしたが、現在は2018年の完成が予定されています。 当初は高さ1,600mで計画され、その高さにちなみ「マイル=ハイ・タワー」(Mile-High Tower)という名称であった。
ドバイやクウェートなどペルシャ湾岸では2008年ごろ、高さは1キロ(マイルではなく)を超えるビルの計画が相次いで発表されたが、世界的な金融危機の影響で『高さ競争』は一時落ち着いている。 『高さ競争』は人類にとって、どのようなメリットがあるのか、考えさせられます。
さて、この新建材CLT工法の優位性;
① 建築期間の短縮、工場で製造・加工できる。
② 断熱性が高く、省エネ効果、木材は多孔質材料で断熱性大。
③ 優れた耐震性、PCコンクリートに対して、四分の一の重量。
この新建材CLTとCO2削減について;
一部は、先の備忘録『木を植えよう』に重複します。 森林は、言わばCO₂の一時貯蔵庫で、樹木がすべて枯れ、完全に分解してしまえば、樹木が吸収したCO₂がすべて放出される。 しかし実際には、枯れ死した樹木の全てがすぐ分解されるわけではありません。 その多くは、有機物として土壌中に長く蓄えられます。
一方、伐採した樹木すべてが、すぐに燃やされて、 CO₂になるわけでなく木材として住宅や家具になります。 長く使うほどCO₂が長く固定されます。 ここで新建材CLTの出番です。 因みに、昔の木造の神社仏閣・城郭は数百年の寿命(これは鉄筋コンクリートより長寿命)です。 名古屋城の完成1612年、1945年空襲で焼失から判るように、優に300年以上持ちます。
然しながら、現在の戸建て木造住宅の平均耐用年数ですが、日本では約30-40年、米国約40-50年、英国約50-70年と言われます。 田舎には今でも築後100年以上の木造民家が多々あります。 『エコの本質』を、昔の人は感覚的に知っていたが、現代人は、『安価最優先』でした。
高度成長時代に創られた『鉄筋コンクリート製構築物』の寿命が、比較的好条件のもとで100年程度、海岸部・トンネル等悪条件下では50年程度です。 建造当時には、寿命も、維持補修も考えない『安く・早くの追求』でした。
因みに、建材CLTの耐用年数は、50-70年で、再生・再利用も可能です。
日本は森林大国で、狭い国土にすでに沢山の森があるので、大規模植林の余地はあまりないと言われます。 然し課題は沢山あります。 傷んだ森を、高木、亜高木、低木、下草、そして土の中のカビやバクテリヤで構成される『本物の森』に戻さなければなりません。 『本物の森』でない、単層人工造林(杉、
松、カラマツ等)では最近の異常な豪雨や津波には耐えられません。 今では、開発で激減、細々と残っている、日本の『鎮守の森』が将に『本物の森』です。
この度の豪雨土砂災害は『単層人工造林』での発生が多いように見えます。
偏見ではありますが、『鎮守の森・本物の森』は、多神教(自然の造物、何にでも神は宿る)の賜物です。 余談ですが、今の三大宗教(一神教)は奇しくも、森ではなく砂漠で生まれています。
『京都議定書』には、先進国が発展途上国に援助して植林などのCO₂削減策を行った場合、その先進国の削減として認めようとする『グリーン開発メカニズム」があります。 『森が泣いている』先進国日本は、日本の木材大量輸入に起因する森林伐採跡地のある国の植林支援は元より、足元の日本の森林回復も必須です。
『本物の森』には、必ず直根性・深根性の照葉樹、楠、シイ、椿があります。
楠は、葉が全部焼けても再生しますし、シイ・椿は潮風や津波に強いです。
松は、横根性で、津波に弱く、油分が多く火にも弱いことは、東日本大震災でもよく判りました。
新建材CLTの利用・活用をベースに、日本の林業と住宅事情が改善されることを期待しています。
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