(冒頭写真は、2024.05.21付朝日新聞「命のもと 試験管で再現 生殖応用 生命観塗り替える可能性」より転載したもの。 冒頭写真が横向きとなっていますが、時間の経過と共に縦になると信じます。)
ヒトiPS細胞から、精子や卵子になる手前の細胞を大量につくる方法を京都大学の斎藤教授(細胞生物学)らグループが開発した。
将来的に研究が進めば、皮膚や血液など体の一部から精子や卵子をつくり受精させることも技術上は可能になる。
(以上、2024.05.21付朝日新聞一面記事より一部を引用したもの。)
引き続き、同朝日新聞別ページ記事「同性同士の受精卵・知らぬ間に作製 ルール作り 議論は途上」より要約引用しよう。
将来、iPS細胞などからヒトの卵子や精子がつくれるようになったとしても、生殖に使うかどうかは様々な観点で議論が必要だ。
研究者らでつくる国際幹細胞学会の指針は、安全性を理由に生殖に使うことは容認していない。 (中略)
この分野の第一人者の林克彦・大阪大学教授は、 「見た目がヒトの卵子のようなものなら、5年程でできるだろう。 それが本当に体内でできる卵子と同じなのかというと多分違う」と釘を刺す。
「マウスでもiPS細胞から作った卵子は、やはり体内で出来る卵子と違うなと思う。 改良は並大抵のことではない」
さらに、この技術は従来の生命感も塗り替える可能性がある。
林さんのグループは昨年、オスのマウスから卵子をつくることに成功。 別のオスの生死と受精させ子どもがうまれた。 (中略)
ヒトの男性から卵子ができれば、男性同士で受精卵がつくれる。 さらに自身の生死と受精させれば、遺伝的には一人の親になる。
あるいは、知らないうちに体の細胞を誰かに採取され、勝手に卵子や精子がつくられるかもしれないーー。
基礎研究に関する文部科学省の指針は、現状ではiPS細胞から卵子や精子ができても、受精に使う事を禁じている。(中略) 内閣府の専門調査会は、研究の目的によっては受精を認める方向で議論に入る。
一方、医療応用に向けた法的ルールや規制は議論の対象外だ。
生命倫理に詳しい東大の神里准教授は「社会的に一番の問題になるのは『その技術を生殖利用していいのか?』だ。 そもそも、これまでの様々な生殖医療の技術についても、どう使われるべきかコンセンサスが定まっていない。 すでにある技術を含めた全体像を示した根幹となる法律をつくることが理想的だ」と指摘している。
(以上、朝日新聞記事より一部を引用したもの。)
最後に、原左都子の感想だが。
無限に増やせて体を構成するあらゆる細胞に変化できる能力を持つiPS細胞をはじめとする再生細胞研究が、破竹の勢いで進展を遂げている現実に関しては、医学関係者として多少把握していたものの。
(参考ですが、私自身はこの「再生細胞」発展時代には既に医学者としての現役を引退していて、残念ながら実際に「再生細胞」研究実験を自身で執り行った経験はありません。)
「ヒトの男性の細胞から卵子を作る」なる(歪んだ)方向性においてもiPS細胞研究が既に着目されている時代に移ろいでいる事実には、驚かされる。
目覚ましい医学研究の発展は、もちろん喜ばしくはあろうが。
半面、その発展が行き過ぎてしまう懸念も大きいものがあるだろう。
上記朝日新聞記事内にも書かれているが。
iPS細胞から、例えば卵子や精子がつくれない人でも自分の卵子や精子が得られる事例は良しとして。
例えば、細胞さえあれば死者からも卵子や精子が作れるまでに研究が進んでしまったとしたら…
ヒトの出生に伴う「倫理観」が大いに歪み、世の中の秩序が成り立たなくなりそうな混乱と空恐ろしさをもたらし。
それは、結果として人類の滅亡に繋がるかのような危機感すらいだかされる…
そんな意味での、再生細胞研究・実験に対する今後の見識者らによる確固たるルール作りこそが肝要だろう。