礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

落ちついて、あわてず、すばやく行動されたい

2019-03-18 01:30:15 | コラムと名言

◎落ちついて、あわてず、すばやく行動されたい

 先日、古書店で宮脇俊三著『増補版 時刻表昭和史』(角川書店、一九九七年八月)を入手した。この本は、むかし、角川選書版(一九八〇)で楽しく読んだ覚えがあるが、「増補版」が出ていたとは知らなかった。増補されたのは、第14章から第18章までの五章分である。
 第1章から読みなおしてみたが、ほとんど内容の記憶がなく、これには驚いた。しかし、新鮮な気持ちで読むことができたので、かえって良かったような気もした。
 その第14章は、東海道本線の列車に乗っていて、空襲に遭う場面がある。著者は、キチンと「低姿勢」(防空姿勢)を取らなかったため、女性の車掌から厳しく注意されている。同章の一九一ページには、東亜交通公社の『時刻表』昭和一九年五月号のウラ表紙が、写真で紹介されている。そこに、「旅行防空心得」が載っているからである。
 この「旅行防空心得」は、本文でも、一部、引用されているが、全文ではない。また、写真の文字は、細かくて判読が困難である。そこで、『時刻表』同号の復刻版から、その全文を引用してみたいと思う。

   旅 行 防 空 心 得

取扱制限 空襲警報が発令されたときは乗車券の発売、荷物の受付、配達、引取などを制限したり中止することがある。
空襲時の運行 空襲時には汽車、電車の乗降を禁止したり、時刻表通り運行しない場合がある。
空襲時には列車などの運転状況を一般に発表しないから最寄の駅の掲示などで承知されたい。この場合電話の照会には答へないことになつてゐる。
旅客の行動 列車内や駅内で空襲をうけた場合には待避やそのほか一切の行動は車掌や駅員などの指示に絶対に従はれたい。殊に多数の人の集りだから落ちついて、あわてず、すばやく行動されたい。
燈 火 燈火管制は厳重に守られたい又燈下管制下では足元に特に注意されたい。
車内の待避 列車進行中空襲のある場合長緩気笛を鳴らして徐行することがある、そのときは窓側に手廻品や腰掛などを集積し通路寄で低姿勢をとられたい。
又列車が停止しても危険だから車掌の指示するまでは下車しないで車内で待避されたい。

  行携品用常非糧食  で裝服空防

 本文はタテ書き、最後の「行携品用常非糧食 で裝服空防」は、最下部に、ヨコ書きの右書きで書かれている。ちなみに、表紙の「時刻表」などの文字は、ヨコ書きの左書きで書かれている。

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