◎『日本児童生活史(新版)』(1948)の「序」
桜井庄太郎の『日本児童生活史』には、戦後に出た新版(日光書院、一九四八)がある。本日は、その新版の「序」から、カナヅカイについて、言及している部分を引いてみよう。なお、漢字は、新字に改めてある。
最後に本書で用いたカナヅカイについて一言述べておきたい。わたしは一九三八年ごろから、自分の書く文章のすべてを、文部省臨時国語調査会発表の「カナヅカイ改定案」にとつて書いてきた。文字と発音とは一致すべきもので、今日の発音とは異なる歴史的カナヅカイを教えたり、使つたりすることは、全く無意義で愚かしい限りだと信じ、そこにも児童文化の重要な問題があると意識したからであつた。その当時、この「カナヅカイ改定案」によつて書かれたすぐれた著述は、高倉テル氏の「大原幽学」(一九三九年)、羽仁五郎氏の「ミケルアンヂエロ」(一九三九年)ぐらいであつた。いま公にする「日本児童生活史」が、引用の場合を除いては、すべて発音式カナヅカイによつて書かれたことはいうまでもない。いまようやく発音式カナヅカイが、ひろく、また徹底的におこなわれようとする機運になつてきたことはまことに喜ばしい。
また本書は、厳密に当用漢字に拠つてはいないが、むづかしい漢字はつとめてこれを避けた。
昨日、この『日本児童生活史』は名著だと述べた。このことは、同書が、二回も復刻されていることでも明らかであろう(一九八二、一九九七)。しかし残念なことに、この二回とも、一九四八年の新版の復刻である。復刻に値するのは、やはり、一九四一年の初版のほうであろう。この理由は、いずれ述べる。明日は一旦、話題を変える。
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