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7.ネオコンについての論稿を終えるにあたって 千里眼

2006年09月06日 09時56分12秒 | Weblog
 クライド・プレストウィッツは著作「ならずもの国家アメリカ」の最後の一節を読んだとき、目尻がにじむのを抑えることができなかった。彼のアメリカを思う心の深さ、その崇高な精神にうたれたのだ。年老いるとともに感動することのなくなっていた私なのに。
 その締め括りの文章を次に記す。
「力より寛容を強調し、慣習を重んじるよりも疑問を素直に口にする伝統のもとで、自国の民だけでなく世界のすべての人々に神の祝福を願うアメリカこそ、世界が渇望するアメリカなのだ。聖フランチェスコの故郷であるイタリアのアッシジの町を始めて見た時のことを、私は決して忘れない。道のカーブを曲がった時、確かに現れた。丘の上に白く輝く町が」と。
 この短くて文学的な表現の一節のなかに、新大陸アメリカに上陸して困難な生活を送った清教徒の願い、アメリカ独立戦争とその建国の精神、そうしたアメリカの伝統が、その精神がここにこもっているのだ。ブッシュ政権によって歪められたアメリカを築き直すのだ、という彼の強い思いが流れているのだ。敬虔な長老派教会のキリスト教徒であるプレストウィッツらしい文章である。
 新大陸アメリカに上陸して困難な生活を送りながらも理想的な国を築きたいという清教徒の思い、その象徴が「マタイ伝5章14節」にあるこの「丘の上に輝く白い丘」なのだ。「確かに現れた。丘の上に輝く白い丘」という短い締めくくりの文学的な表現のなかに、アメリカの未来を信じている彼の心情がよく表現されている。
 アメリカが本来持っていた良識、民主主義の思想の伝統、穏健な保守主義の伝統、リベラル知識人の伝統、こうしたアメリカのふところの深さはまだ失われてはいない。そのことをプレストウィッツは示していると思う。ここにネオコンの論理をアメリカが克服していく基盤があるのだ。
 しかし、プレストウィッツの求める「理想としてのアメリカ」の実現には、長くて苦しい道のりが待っていることだろう。なぜなら、過激な右翼的傾向を示すキリスト教原理主義の広がりの大きさ、軍需産業の大きな力、金融面での世界制覇を成し遂げつつあるアメリカ金融資本の力の強大さ、などなどの要素がプレストウィッツの求める理想を妨げる要因として作用するだろうから。
 ブッシュが退陣しようとも、その後共和党政権が続こうが民主党政権に変わろうが、一国覇権主義・先制攻撃戦略などネオコンの論理は姿を変え、表現を柔らかにしながら継続されると私は思っている。それほど根深いものを私はアメリカに感じている。
 世界の国々がアメリカ追随を止め、アメリカの覇権主義や国連・国際協調無視外交を公然と批判し、アメリカの政策転換を求める、こうした情勢が強まることが必要だろう。それとアメリカ国内の良識が結びつくとき、やっとアメリカは変わりうると、私は思う。
 もし、彼が日本人で「ならずもの国家日本」という書名で、昭和史もしくは自民党政治の分析・批判したら、どうなるのだろうか。必ずや「自虐史観」、「愛国心に欠ける売国奴」というような罵詈雑言を浴びるだろう。しかし、彼がアメリカを深く愛し、アメリカの未来の幸せを強く願っている「愛国者」であることを私は知っている。
 私はこうしたレッテル貼りは大嫌いである。自らの品性の下劣さ、知性の欠如、きちんと論証する能力のなさ、を示していると私は思っている。 
コメント (2)
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