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随筆、年寄りの楽しみ   文科系

2024年01月19日 17時41分18秒 | 文芸作品
 リビングでさっきからギターを弾いているが、ちっとも上手く行かない。明後日教室の「ギター宴会」があって、その準備なのだが。指を複雑に細かく動かす装飾音符に雑音が入って、強弱などがバラバラ。例えば、何度弾いても必要な切れも出せないのである。〈先生と二人の二重奏だけにしとくか?〉、こんな諦めも頭をかすめる。もうすぐ八三歳……、みんな七〇歳代で教室を止めていくぞ、ましてや俺は、癌の為に膀胱を全摘、生活も変わって身心ともどんどん衰えている。なども思い出すところだ。疲れてしまって、ギターを置き、南の庭に面した大きなガラスの窓際に行って外を眺める。庭を観る行為が最近どんどん増えているのだ。
 ヒヨドリ、メジロ、時にジョウビタキや土鳩、シジュウカラの群れとか、季節にはカワラヒワも。名古屋中心部に近い大都会の庭だが、鳥が見えない時がないのである。ヒヨドリは取り残した金柑などを食べに来るのだし、メジロは、今ならサザンカや椿、ちらほら咲き始めた梅の蜜を吸いに来る。「ここは年寄りだけの家だね!」とは、昔近所を連れ合いと散歩して、他人の家を勝手に評した言葉だが、今や我が家の庭がぴったりそうなっている。一メートル立法ほど、ちょっと実が残った柚の株の間からは、去年秋から頭を出したススキが何本か残ったままだし、二メートルを越える金柑の枝振りはまるで小山だ。そして、横枝を払って背が馬鹿高く見える金木犀は、枝葉が込みすぎて醜い。これなら、土鳩も安心して巣を作れるだろう。どう観ても猫が登れそうもないからだ。それでも庭は慰めになり、このごろ日に何度眺めに来ることか。
 それにしても、明後日はギター宴会、せめて恥ずかしくはない程度にと、また椅子に戻る。と言っても、手術後弱った身心では、あと二日の練習成果ももう見えているのである。来週には所属同人誌の例会もあって、それまでに書かねばならない作品がまた、全然進まない。
 さて、楽しくやることがどんどん少なくなっていくこんな日々でも、新たな楽しみは見つかっていく。庭もそうだが、観賞の楽しみが残っている。美食、美酒、美飲がどんどん大きくなってきた。今はこれらにお金を使っているが、今の僕には、特にお茶の比重が大きい。親友から頂いた二種の中国茶、一つは白牡丹、二つ目は肉桂烏龍と名が付いているが、いずれも中国は福建省「天福銘茶」と言う会社直送の名品で、飽きなく飲めて、いつまでも美味い。前者は、初め甘い香りがあって、後は爽やかにどんどん飲める。後者は、ごく微かな肉桂の香りのあとはがっちりとしたキームンティーの発酵の味で、これがまた飽きが来ない。ちなみに、中国の皇帝は専門の茶人を侍らせて、こういうものばかり飲んでいたのだろうという、そんな贅沢だと自ら嘯いている。日本茶は出し方も味もほぼ同じと言って良いだろうが、中国茶は種類も多く、煎れ方によってとても大きく変化する。例えば肉桂烏龍なら「初め九五度で、第一泡一五秒、第二泡八秒、第三が二〇秒」という調子だ。これが白牡丹になると各、二〇、一〇、一五秒で、七煎まで飲めると書いてある。これを少し変化させれば、色んな味を何煎までも楽しめるのである。
「親友が今の難しい僕にこんな楽しみ、生き甲斐をくれた」というこの親友がまた、ギター教室の同じ年齢、兄弟弟子である。この彼にも、良いギター音を聞かせたいのだけれど。ちなみに、このギター宴会には、もう一つの美飲、ラム・サカパのセンテナリオ、二三年物を持っていくつもりでいる。添える肴は、和牛の腿で作った赤ワイン煮、この準備もすでに整っている。
コメント (2)
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