1997年4月、旧東京宝塚劇場にて上演されました。久世星佳さんのサヨナラ公演。作・演出は正塚晴彦先生、ハードボイルドタッチが似合う久世さんへの正塚先生のあてがき。プログラムの先生のお写真、若い。昨日再演された宙組全国ツアー公演のライブ配信、わずかでも稼がなければならないので視聴することはできませんでした。こんなに楽しく、いいお話だったのかという感想をみかけたので、どんなお話だったか振り返り。断片的に場面、場面がおぼろげによみがえります。千紘れいかさんの壺キャッチのシーン、脳内再生されます。いつかオンデマンド配信で再び会える日を待つ。
「20世紀初め頃のスコットラン ド。由緒あるボールトン男爵家の次男として生まれたエドワード(久世星佳)は、家を出て軍隊に身を置いていたのだが、ある日双子の兄ロー レンス(久世星佳)が病に倒れたとの知らせを受ける。急遠帰郷した彼を待ち受けていたのは、兄の莫大な借金の為に領地が抵当に入っているという厳しい実情だった。 自分の力ではどうにもならないロー レンスは、弟がこの窮状を救ってくれることを期待していた。
一方、エドワードの帰郷の理由を知る同僚のリチャー ド(真琴つばさ)は、彼が家督を相続するのではないかと注目していた。 リチャードには、いつかホテルのオーナーになるという長年の夢があり、それを実現させる為にはまとまった金が必要だったのだ。エドワー ドが男爵家の当主ともなれば、その金を借りることができるかもしれない、との目論見だった。
しかし、当のエドワードにしてみればそれどころではなかった。すでに屋敷の領地の抵当権を持つ銀行からは差し押さえの通告が来ており、彼はその期限の延期を求めて、経営者であるウィリアム(姿月あさと)との交渉に臨まなければならなかった。 このウィリアムという青年は、若くして父トーマス(未沙のえる)から頭取を引き継いだなかなかの切れ者で、言いくるめるには手ごわい相手だった。その上トーマスは、土地を手に入れ地主階級に食い込むことを目指す野心家で、息子にボール トン家への厳しい対処をけしかけており、エドワードはウイリアムに支払いの猶予は十日間と断言されてしまう。この難局を押し付けた兄に腹を立て、家の為に奮闘する意欲を失いかけたエドワードだったが、兄の婚約者キャサリン(風花舞)に励まされる。
キャサリンと双子の兄弟は幼い頃から共に育ち、エドワードは密かに彼女に恋していたのだが、兄も彼女を想っていることに気付くと、家督を継げない為に身を引かざるを得なかったのだ。 しかし、今や無一文となった兄との結婚 は、キャサリンを不幸にすると憂慮したエドワードは、彼女に婚約を解消するよう促すが聞き入れられない。兄から破産した原因を、穀物相場に手を出して失敗した為と聞か されたエドワードは、誠実な兄がそこまでのめり込んだ経緯に不信感を抱き、リチャードと彼の恋人ヘ レン(千紘れいか)の手を借りて徹底した調査に乗り出す決心をする。エドワードは屋敷の使用人達から、会計士ローバ ック(真山葉瑠)が兄にしきりに投機を勧めていたことを聞き出し、銀行と会計士とが手を組んで兄を陥れたのではないかと呪む。
狩りに出たエドワードは偶然 キャサリンと出会い、初めて胸の内を告白する。キャサリンも実はロー レンスではなく、エドワードに恋していたのだが、失恋したと思い込み父が勧めるローレンスとの結婚話を受け入れたのだった。思いがけずエドワードの気持ちを知らされた彼女は、夢中になって彼と駆け落ちすると言い出すが、エドワードは優しく拒むのだった。
そこで突然雨が降り出し、二人は羊飼いの若者ヘンリー(汐風幸)の家へ招かれる。彼の父ジェラルド(大峯麻友)は昔なじみの庭師であり、 この土地をこよなく愛していた。そして、屋敷の危機を救う為、エドワー ドにこの土地の驚くべ き秘密を打ち明ける。
なんとか切り札を手に入れたエドワードは、皆にとって最善の策を模索し始めるが・・・。」
1997年、宝塚大劇場は阪神淡路大震災から2年、まだ爪痕が大きく残っているときでした。こうして振り返ってみるとスコットランドという生まれた土地を愛してひたむきに生きる人々の物語をこのタイミングで真風さん率いる宙組による再演。今また困難な時代を生きなければならないわたしたちへの優しいメッセージでもあるのかもしれません。最後エドワードとキャサリンは互いを想いあったまま清らかに別れていくという切なさと清々しさ、正塚先生らしい。
東京宝塚劇場公演プログラムの黒燕尾の久世さんの表紙、たしかにいまだと「アクアヴィーテ!!」。退団後は、『踊る大捜査線』に出演されているのをみたことがありますが、ストレート・プレイを中心に活躍、芝居達者のノンちゃんらしい。ググってみるとブログやっていらっしゃいます。同世代、元気でいてくださるならそれだけで十分すぎるほどに十分。
https://ameblo.jp/kuzenon8564/