ルネサスは三菱電機と日立製作所の半導体事業が合併し、後ほどNECの半導体事業の一部が合併してできた会社だ。半導体事業ほど浮き沈みの多い業界はなかった。私が三菱電機労組の役員であった1970年代、半導体工場は女性の職場で、女子寮が工場の中に有り、お花やお茶の稽古も盛んで華やかな雰囲気であった。その後、トランジスターから集積回路の時代と成り、労働集約から資本集約事業となって24時間年間360日稼働という考えたこともない就業形態が競争力強化のもと強いられた。工場は高価な機械で埋まり、人影もまばらとなった。
半導体事業自体の利益率はならしてみると低く、資本投下競争で韓国企業に負け、かつてのライバル企業同士が合併せざるをえない事態となった。1996年頃だと思うが、韓国現代電子の工場見学をしたおり、次期の投資額を質問したところ、当期の売上額と同額だったので桁が間違っているのではと確認したら、これから毎年この調子で投資をするとの返事に目をむいたものだ。
しかし、今回の震災で世界の自動車のキーパーツをルネサスで生産していることが奇しくも判明した。世界の自動車産業のためにルネサス那珂工場は高価で高精密設備の再建に向けて懸命の努力をしているとの報道だ。自動車産業は基幹産業で雇用に大きく影響し、それは経済にも当然影響する。こんなに脚光を浴びたことはなかった、今期のルネサスは赤字でも早期に黒字転換することを期待したい。