行雲流水

阿島征夫、一生活者として、自由に現代の世相を評す。時には旅の記録や郷土東京の郊外昭島を紹介する。

新エネルギー政策を考える視点

2011-07-03 21:15:38 | Weblog

1980年代にエネルギー政策に関わってきた者にとって、今やこれまでの政策とは180度違う新エネルギー政策を追求しなければならないという思いが強い。依然として中東石油への依存度は大きいが、天然ガスにおいては極東ロシアや東南アジアでの生産拡大で幾分調達地域の拡散が見られる点は安定感が増している。しかし、国産エネルギーとなると準国産エネルギーの原子力からの脱却という重い課題に直面せざるを得ない。

脱原発という点では国民的コンセンサスであるが、即か徐々にやるかという点では意見の分かれる点である。エネルギー全体の需要に占める原子力はせいぜい11%だが、電力供給にしめる原子力の比率は稼働率にもよるが30%強を占める。

従って、主要な課題は電力ということになる。原発を停止すると電気料金はどうなるかという試算が日本エネルギー経済研究所から出された。54基の原発で35基が停止中で19基が稼働している。この19基が停止した場合、液化天然ガスなどの調達費用が3兆5000億円増えるので標準的家庭の電気料金は18%上昇し、額では月1000円の負担増となる。富士通総研の試算では2020年には35%増、月額1800円の上昇としている。

こうした情勢を踏まえ、新エネルギー政策を考えるにあたっては、現行9%を占める再生エネルギーである太陽光、風力、水力の開発を急ぐ必要があることはいうまでも無い。この6月16日ブログでも触れたが、スペインは35%を再生エネルギーで調達し、電力を輸出している。

上記の料金の問題では、日本の電気料金は韓国や米国の倍もするので、今の料金が半分になれば1800円ぐらいの値上げは吸収可能だ。米国は電力分野の規制緩和を行い競争政策により画期的に料金が下がった。基本は発電に誰でも参入でき、売ることが可能というシステムで、これを行うには発電と送電の分離が不可欠だ。日本は9電力の地域独占を政官財で固く守ってきた。そのおかげで停電が少ないと強調し、電事連では、停電は日本16分、米国ニュ-ヨーク12分、カリフォルニア162分、ドイル37分、英国100分、フランス57分というデータを出している。

再生可能エネルギーは発電スポットが小電力で不安定だが全国ネットの送電会社がどの地域でも電力を買い上げられなければならない。安定化に向けてはスマートグリッドや気象予報の技術が必要で、これこそ新エネルギー政策の要諦だ。

一昔前の通信事業とよく似ている。電話事業を自由化したら質が落ちるといわれた。確かにインターネットの回線では一部ADSLなどスピードが出ないといったこともあったが、多くの参入で爆発的に市場が拡大し、日本の発展に寄与した。携帯電話もしかりだ。
新エネルギー政策が成功するかは先ず、発送電分離が鍵を握っている。楽天の三木谷社長のように経団連を脱退してでも発送電分離を推進するべしという人も出てきている。

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