行雲流水

阿島征夫、一生活者として、自由に現代の世相を評す。時には旅の記録や郷土東京の郊外昭島を紹介する。

787ドリームライナーをめぐり、米国内で抗争

2011-07-09 21:39:32 | Weblog

1998年、シドニー湾を望むシーフードレストランで私は全米機械工労組(IAM)会長のビュヘンバーガー氏と会食していた。翌日からの国際金属労連大会へ出席するために滞在していたので、米国の労働事情を聞くことが目的であった。しかし、彼の話の大半はボーイングで開発している新型機ドリームライナーに関するものだった。炭素繊維を使う画期的な旅客機だが、双方ともその主翼を日本メーカーが作るとは夢にも思っていなかった。
そのドリームライナーボーイング787が検証プログアム飛行を行うために先週日本に飛来した。中型機にも拘わらず燃費が良いので太平洋をノンストップで渡って来て、その日のトップニュースだった。ところが米国ではこのドリームライナーの組み立て工場をめぐって熾烈な抗争が起きている。

ボーイングの本拠地はシアトル、ここでほとんどの旅客機が組み立てられてきた。ボーイングを組織する労組は前述のIAMでシアトルはやはり最大拠点ある。ところがボーイング社は月産7機のシアトルの工場では生産の遅れを取り戻せないのでサウスカロライナに月産3機の組み立て工場を新たに建設したことが抗争の発端だ。ボーイング社とIAMは3年ごとの労働協約改定で1977年以来、5回ストライキが行われてきた。特に2008年は交渉がこじれ、58日にわたる長期ストを打たれた。

ボーイング社は労組の影響力の弱い南部にノンユニオンの新工場を建設したわけだが、IAMは労組のスト行動に対する見せしめで、憲法違反と国家労使関係委員会(NLRB)に提訴し、NLRBは不当労働行為と認定し、ボーイング社に是正命令を出した。治まらないのはサウスカロライナ州出身の共和党議員で、(ここには民主党の議員はいない)1000人の新工場は繊維産業衰退後、南部発展の基礎となる希望の星と一歩も引かない。労組を支持基盤にしているオバマ大統領が選任したNLRBの委員は労組よりで、議会の多数を握っているのは共和党だから、NLRBの予算をゼロにしてやると息巻いている。

労使対立だけでなく、南北対立、民主・共和対立となったことにより抗争は複雑になりつつある。IAMもサウスカロライナ工場を廃止せよとは言ってない、海外で作っている部品を持ち込めと言うが、主翼や、胴体の一部まですでに日本に発注しているので非現実と会社は主張している。裁判闘争になる雲行きだが、皆の夢を実現するのは難しい。

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