スズキの子会社、マルチ・スズキの暴動事件、警察の手で真相が明らかになるが、背景に日系企業が陥る問題があるのではないか。端的に言うと「ILO中核的労働基準である労働基本権」をないがしろにすることだ。今回の暴動が起きたマルチ・スズキのマネサール工場は新鋭の工場で、同社経営陣はこれまでどおり企業内組合を結成しようとした。
ところが、昨年6月、会社からの干渉を拒否し、独立した組合が結成され、これを認めない同社は組合指導者11人を解雇した。当然ストに入られ、外部のナショナルセンターが間に入って何とか収まったが、労使間の不信感は残り、サボタージュ問題で会社が再び解雇を強行したことから紛争が再発し、10月に至って州政府や産業別労働組合の介入で終息した。
インドの組合組織は伝統的に旧宗主国英国の産業別労働組合が企業を組織するタイプだ。マルチ・スズキ社はそれを日本流の企業内組合でこれまで何とかやってきたが、誇り高いインドの産業別労働組合が見過ごすはずがない。
民主主義国家ではどのような場合でも、団結権を尊重しないで、独立労組結成に企業として介入すればもめることは明らかだ。できた労組をパートナーとして尊重し、とことん話し合うことだ。もちろん、違法行為があれば毅然とした対応が必要だ。日本では企業内組合で労使関係が安定しているので、外国でもと思うところに問題が生じる。
多くの外国における日系企業の労使紛争は企業内組合結成を強行しようとして起きている。ILO中核的労働基準である労働基本権を尊重しないために大損害を被った例も多くある。