友人のTさんがヴォランティアで案内をしている吉田五十八の傑作猪股邸を訪れ、随所に吉田流設計のこだわりを感じた。武家屋敷の数寄屋造りに近代設備を融合させるとこうなるという傑作だ。(猪股邸は世田谷区が保有し、世田谷トラストまちづくりが管理している)
屋敷に入り最初に驚くのが南側開口部の大きさで、苔むした庭園と四季の花木が大画面で眺められる。眺めながらお抹茶をいただいた。
北側には坪庭を配置し、北からも採光している。
住人のお茶へのこだわりで茶室は2つもある。離れのような主茶室、京都の職人の手によるが、にじり口の大きさには驚く、これも採光への拘りか
もう一つの茶室は2畳に充たない夫婦二人だけの世界
床の間の上げ床部分に空調の吸い込み口がある。天井の照明の周囲に吹き出し口があり、近代設備をそれとなく融合させている。屋敷のセントラルヒーティングが数寄屋造りの随所に見事に作り込まれている。
私がかつて訪れた奈良の大和文華館や外務省飯倉別館なども吉田五十八の設計と聞いて、これらは逆に近代建築の中に、数寄屋造りを取り入れた例で、改めて思い起こした。