米国南部では労働組合の結成も自由でない。「働く権利法」という州法を制定し、労働者が、労働組合に入らない権利とか、チェックオフ(給料天引きの組合費徴収)を禁じるなど労組結成を妨げている。
これに対し、UAW(全米自動車労組)が続々と誕生している南部各州の外資系自動車工場に組合を結成しようと、テネシー州VW(フォルクスワーゲン)のチャタヌーガ工場の組合組織化を突破口にしようとした。VW社はドイツにおいてワークカウンシル(労使協議会)に労組代表の参加を得て、賃金以外の労働条件や、経営事項を労使双方が出席して決定し、生産性の向上をはかっている。チャタヌーガ工場でも労組を組織し、ワークカウンシルを導入しようとした。米国南部では考えられないが組合結成に経営者が前向きとなり、当然組合が出来ると考えられた。
米国労働法に則り、従業員投票で組合組織の賛否をかけたところ、712対626で否決され、UAWは茫然自失状態となった。原因は社外での上院議員や知事(いずれも共和党)の強力な反対運動だった。デトロイトはUAWがダメにしたので組合が出来たらチャタヌーガもダメになるまたSUVの生産はメキシコに行くとか猛烈なキャンペーンが功をそうした。チャタヌーガの従業員も時間当たり賃金19.5ドルとデトロイトほどではないが満足水準の賃金で、労組をわざわざつくり、組合費を払うこともないと労組結成に反対するグループも出てきた。
米国労働法によると、労組ができないとワークカウンシルが成り立たないためVW社も困惑している。