行雲流水

阿島征夫、一生活者として、自由に現代の世相を評す。時には旅の記録や郷土東京の郊外昭島を紹介する。

労働組合の組織率改善

2009-12-11 23:32:45 | Weblog
厚生労働省は10日、2009年の労働組合基礎調査の結果を発表した。組織率(雇用者数に占める労働組合員数の割合)は18.5%で、前年と比べて0.4ポイントの上昇となった。戦後、民主日本をになうべく労働組合が誕生したとき55%の組織率までになったが、その後組織率は下落し続け、ようやく歯止めがかかり、上昇に転じた。

日本の労働組合は製造業かつ大企業の企業内組合として組織されてきた。
高度成長の中で育った中小企業や産業構造の変化でサービス業の比率が高まる中で未組織労働者が増加し、組織率は自動的に低下した。それでも高度成長の中での春闘では人手不足の中、世間相場という言葉があるように大企業での賃上げ相場が中小企業や未組織分野まで波及し、失業率も1ないし2%台で特段の問題も無かった。

しかし、グローバリゼーションの流れの中で大企業製造業の海外生産が加速し、かつて就業者を吸収していた製造業の激変で組合組織率は低下し続け3割台になり、就業者の増加したサービス部門ではパート労働者の比率が高いこともあり組合の組織化は遅れた。

90年代に入り、非正規労働者の比率は年々増え、3割を越えるようになり、未組織労働者が大半を占める事態となった。企業内組合はそうした非正規労働者への組織化には対応が難しく、派遣切りに見られたように正社員たる組合員の雇用優先に動き社会問題となった。

これに対し、連合やゼンセン同盟のような一部産別が危機感を深め、パートなど非正規労働者の組織化に努力した成果が少しずつあらわれてきたといえる。特に、地方連合に労働問題相談窓口を設け、一人でも加入できる地域ユニオンの結成は中小企業の労働者や非正規労働者の受け皿になった効果は大きい。
今回の調査では、組合員総数が前年比1万3,000人増の1,007万8,000人となり、このうち、パートタイム労働者の組合員数は70万人で、前年と比べ8万4,000人(13.7%)増加し、パートタイム労働者の組織率は5.3%となった。
連合や産別組合は全力を挙げて非正規労働者の組織化に取り組み、全体の組織率を50%ぐらいまでに高める抜本的な計画を立てて欲しい。

スエーデンでは労組組織率は90%を越え、雇用保険も組合が管理し、個人としては弱い労働者が組合に入ることにより安心して働き、成長と安定をもたらし、国際競争力はトップクラスに君臨している。
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スズキとフォルクワーゲンの戦略的提携

2009-12-09 23:37:04 | Weblog
スズキは9日、独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)と資本業務提携すると発表した。フォルクスワーゲンもスズキ株式の19.9%を取得し、筆頭株主になり、戦略的パートナーシップは双方にとって利益になると発表した。取得価格は約2224億円スズキが米ゼネラル・モーターズ(GM)との資本提携解消に伴い取得していた自己株式1億795万株をVWに割り当て、スズキもVW株式を一部取得するとの内容だ。スズキはVWから調達した資金のうち、約1224億円を環境技術の研究開発などに使い、残り1000億円を有利子負債の削減などに使うとしている

この報道に接し、名門意識の強いドイツメーカーVWもインド市場に強く、スモールカー世界最強のスズキと提携するとは時代の大きな転換を感じざるを得ない。1993年だったか日独金属労組定期会合では100年以上の伝統あるドイツ自動車産業はリーン生産方式(トヨタ生産方式)などは東洋の思想であり参考にならないとドイツ金属労組の委員長は断言した。日本のメーカーは歯牙にかけない勢いであった。ドイツは企業の取締会の上に監査役会がありこれが権限を握っているが、必ず労働代表がが入っていてVWにも金属労組の委員長が監査役に入っている。この決定には労組の意向も入っているのだろう。

また、2001年、ベンツのスモールカースマートの工場見学を金属労組に頼んだらそれはドイツでは作ってないし、ベンツの名をつけてない、フランスのストラスブールに工場はあると言われ、結局、Aクラスの工場を見学させられた。軽自動車クラスの車はドイツ人のプライドが許さないのであろうが、今やインドなど途上国ではスモールカーなしでは通用しない。
今回のキーワードはグローバル化、環境、車種の多様化とVWは言っている。
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フィリピンの闇

2009-12-07 23:21:24 | Weblog
フィリピンミンダナオ島、マギンダナオ州知事選挙で現職の対立候補側や記者ら57人が殺害されたというニュースを聞いてセブ島でのミツミの事件を思い出した。報道によると国軍と国家警察は7日までに、殺人や反乱の疑いで一族のリーダーで州知事を3期務めたアンダル・アンパトワン氏のほか、息子の現州知事ら62人の身柄を拘束。一族の敷地などから自動小銃や迫撃砲など883丁の武器と、約43万発の銃弾を押収した。国軍や国家警察から横流しされた武器も確認されており、銃弾の約1割は軍や警察の印が記された箱に入っていた。

州知事が私兵を持つとは法治国家とはほど遠い実態だ。フィリピンは農地改革がされず地方の地主の力が強く中央政府の統治が及ばないことが多い。この州知事とアロヨ大統領とは親しい関係の中で国軍がよく関与できたと思うくらいだ。

1990年代後半、日系企業のセブミツミに労働組合を作る話がフィリピンの労組からでてきた。日本のミツミ労組や上部産業別組合の当時全金同盟(現在JAM)がフィリピンで支援活動をし、当時金属労協の事務局長として逐一報告を受け、私もマニラへ飛んで現地組合からも情勢を聞いたことがあるが、絶対にセブミツミのあるダナオ市には行ってはならない、命の保障はないと言われた。

フィリピンは東南アジアの国の中でILOの結社の自由条約を批准している少ない国の一つだ。しかしダナオでは反労組派ドラノ市長がすごい権力を持っていて、組合承認の投票(従業員の過半が賛成すれば労働組合が法的に結成される)の日、警察が道路を閉鎖し、従業員が工場へ行くことをストップさせ投票ができなかった。このあたりは拳銃が5000円も出せば買えるし警察は市長の支配下では命の保障も無いことは明らかだ。セブミツミには今でも結社の自由も団結権もない。
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玉川上水散策

2009-12-06 18:11:47 | Weblog
冬の玉川上水散策は落ち葉を踏みしめ、野鳥の声を聞きながらゆっくりと
天気がよいので昭島市松中橋から立川市と小平市の境、小川橋まで5kmを散策
松中橋付近は護岸工事も終わって川幅は広い

多摩モノレールと西武拝島線の交差する玉川上水駅付近は自然に恵まれた住宅地

玉川上水橋から15分ぐらいで木漏れ日の足湯がある。近所の焼却場からお湯を引いている。となりの民家ではスコーンとケーキのセットを300円でサービス

このあたりの上水は昔の姿を残し、深くえぐれて谷みたいになっていて川幅は狭い

小川橋たもとのもみじ、ここから西武国分寺線たかの台まで3kmの行程だ。
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インドネシアでの恥ずかしい日系企業

2009-12-04 23:12:21 | Weblog
日本ではCSR(企業の社会的責任)について「企業は社会的存在として、最低限の法令遵守や利益貢献といった責任を果たすだけではなく、市民や地域、社会の顕在的・潜在的な要請に応え、より高次の社会貢献や配慮、情報公開や対話を自主的に行うべきであるという考えのことをいう」(情報マネジメント事典)というのが常識的なというか一般的な解釈となっている。企業もかっこよく環境対策を全面に出している。

はっきり言って上滑りになっている。大原則は人権の尊重であり、従業員の労働基本権を守ることから始まる。それも守らなくては社会貢献や環境対策を謳ってもそれ自体も信用しがたい。昨年からの派遣切りに始まる非正規社員に対する扱いは名門と言われた大企業でもCSRを果たせなかったということだ。
先日、インドネシア労働組合総連合の幹部から労働事情について聞く機会があったが、日系企業の労働基本権無視だけでなく賃金も払わずに夜逃げ同然でいなくなった日本人経営者の話を聞いて、とても恥ずかしかった。

最近の経営者や学者の一部に製造業への派遣労働を禁止したら海外に工場が移るといった脅かしに近い議論をする人がいるが、こういう経営者が海外で労働者を簡単に解雇したり、組合結成に妨害をするのではないか。インドネシアの労働法は日本と比較しても退職に対し厳しいし、最低賃金制度もある。

インドネシアの日系企業の紛争では解雇に伴う退職金、補償金を法通りに払わないことで起きるケースが多い。組合を結成したと言って簡単に指導者を解雇して長期紛争になる例も多い。悪質な例としては8月以来賃金を払わないで経営者が帰国した例で、80名の従業員は生活にも困っている。何とか日本にいる経営者に連絡を取って交渉をしたいとその組合幹部は言っていた。
いずれも人を雇って企業を経営する以上、人権及び労働基本権を先ず尊重して欲しいし、それができないなら会社をたたむべし。
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シンガポールは危機をどうのりきったか

2009-12-02 23:30:19 | Weblog
昨年のアイスランド、最近のドバイ、ともに世界から資本を引きつけ繁栄を謳歌していたが挫折した。シンガポールはどうなのか?同じように人口も484万人と少なく、国土も淡路島程度で資源はなく、あるのは人材だけで世界から資本を引きつけ製造業だけでなく金融センターとなっている。昨年からの世界経済の危機を乗り越えられるのか危惧せざるを得なかった。

古い友人でシンガポール労働組合会議の議長ジョン・デ・ペイバ氏に最近の事情を聞いた。確かにGDP成長はマイナスに落ち込み深刻だが人員削減数は10000万人程度でかつての97年アジア通貨危機の29000人よりはるかに少ない。失業率も2003年のサーズ騒ぎの時5.2%に比べ3.3%におさまっており、この危機を充分乗り越えられるという。

何故シンガポールは強いのか?基本的には人を大切にする伝統で、企業にとっては辛いが雇用の確保は至上命題で、かつ労使で賃金の16%計32%を拠出して社会保障基金を積み立てている。これで個々の住宅の確保は保障され、かつ今回のような危機の時に解雇を防ぐため企業に助成金を支出する。休業補償もするし、その間訓練し、スキルを磨く費用も出す。失業保険がない国だがこれなら心配ない。

最近のスローガンはUpturnDownturn(不況を好転させよう)で4つの「最も」で実現をするとしている。①最も企業を優先させる経済、②最も労働者を優先する国、③最も結束した政労使関係、④最も思いやりのある労務管理、
日本も民主党政権実現で政労はこの4点、諸手を挙げて賛成だろう。問題は経営者だ。
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