今日のお題は『留守』『赤』『記憶』です。

　あの日は朝から雨が降っていたと思う。
　1人で留守番をしていたらお客様がやって来て「お父さんが帰るまで待たせて貰うよ」と客間の座布団に座って、私はお茶を出して、そこから先の記憶は何故か赤い色に塗り潰されている。そして両親に尋ねても、小さい頃の私に留守番などさせなかったと言いはるのだ。

今日のお題は『ライブ』『ドーピング』『トンボ』です。

　ライブに行くのはいいが自重しろ、コレはお守りだと友人から紐に通した薄青い透明なトンボ玉を渡された。一応は持ち歩きながらもドリンク剤でドーピングを重ね、人間関係も荒らすだけ荒らし、当の友人とも疎遠になっていたら、いつの間にかトンボ玉は白く濁り内側に無数の罅が入っていた。
　自分が何をしていたのかを今更ながら気付かされた気がして、友人を含む昔の知り合いに携帯で連絡を取ろうとしたが、誰一人繋がらなかった。これはもう、手遅れなのだろうか？

今日のお題は『人肌』『ご飯』『薔薇色』です。

　どうやら我が家には見えない同居人、しかも若い女性がいるらしい。
　そんなわけで、人肌くらいの温かい気配にぶつかっては謝る日々を何とかしようと、書面で生活上のルールを提言したところ、翌朝に若干の修正希望が書き込まれ、こちらも承知して交渉が成立した。ちなみに希望は陰膳の提供で代わりにご飯を作ってくれている。
　仕事から帰ると冷蔵庫の中身で作られた温かい料理が用意してあって、見えないとはいえ女性と一緒に頂く。彼女無し歴イコール年齢数の僕にとって、恐らくはきっと薔薇色の日々。

今日のお題は『かさぶた』『日曜日』『ボタン』です。

　日曜日の公園で、着ていた服の飾りボタンを知らない子に引き千切られた事がある。
　キレイだったから欲しかったと小さな子に言われた揉め事を嫌う母は、それならあげるとボタンを渡してしまった。母の態度をどうしても許せなかった私は、心の傷を覆いかけた忘却と呼ばれるカサブタをことあるごとに何度も何度も繰り返し剥がし続け、結果として酷い疵痕が残ることになった辺りで母と絶縁することになった。

今日のお題は『手足』『好き』『羊』です。

　羊が好きなので牧場まで見物に行ったら、あちこちに何だか手足どころか首も無いように見える羊サイズの毛玉が混じっていた。何でも空を踏み外した雲が地上に落ちた姿らしい。
　このまま地上で消えてしまうのかと気の毒に思っていたら、お陽様の光に充分当たって余計な水分が抜けると自然に再び空に昇っていくのだとか。『迷える小雲』とか呼ばれる現象は最近増えているらしく、道理で空に雲が少ない訳だ。

今日のお題は『日曜日』『老人』『プール』です。

　毎週日曜日には温水プールに行って泳ぐのが日課となっている。ある日、プールサイドで良く会う老人に「水の中から上を見てみると良い物が見える」と言われてその通りにしたら、波に歪んだ水の狭間を屈折しながら差し込んで来る光の美しさに心を奪われて溺れかけた。　その後、「天国が見えただろう」と笑われたが、確かに。

今日のお題は『薔薇色』『ライブ』『男』です。

「男の薔薇色ライブ」

何となく繁げたらとんでもない内容の文章になった。

今日のお題は『名前』『サイト』『約束』です。

　偶然、懐かしい名前をWeb上で見かけた。
　見るからに古臭い構成で素人文章を載せたそのサイトは、昔の友人のものだった。奴とは既に付き合いが途絶えた上にサイトの更新も数年前から止まっているが、最後の作品は俺がリクエストしたお題で書かれていた。付き合いが途絶える前に交わした最後の約束を、奴は律儀に守ってくれたらしい。

今日のお題は『銃弾』『擬人化』『猫なで声』です。

　銃弾のように突っ込んで来たタマ(体重10キログラムの三毛猫、名は体を表すという言葉通りの体型)は、バランスを崩して床に座り込んだ私の上で猫なで声を上げて来た。猫だから辛うじて可愛いと思えるが、ちょっと擬人化して考えると脳内画像がえらい事になったのでダイエットを決意した。何日耐えてくれるかは判らない。

今日のお題は『好き』『約束』『名前』です。

　もう名前も思い出せないが小さかった頃大好きだった女の子がいて、いつもお姫様のような服を着ていたから金持ちの家のお嬢さんなんだろうと思っていた。
　やがて結婚し、娘が生まれ、物置から娘が見つけてきた絵本にその子の姿を見つけたとき、僕はようやく約束を思い出した。
「忘れても良いから、いつかまた会いに来てね」
　娘は絵本が、正確に言うと絵本の中の彼女がとても気に入ったらしい。彼女はきっと、今度は娘と友達になってくれるだろう。