カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

作品その37・師匠の帰還

2018-09-19 21:35:56 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『孔雀石』と『三日放置した魚シチュー』を材料に『雨粒のエーテル回復薬』を錬成しました。用途は戦闘用です。

 暫く落ち込んでいた師匠は、やがて物凄く辛そうな表情で回復剤のレシピを渡してきて面倒だからお前が作れと言い、とても口に出来そうにない材料に戦慄しながら僕が調合した薬を一気に飲むなりどこかに行ってしまった。色々な意味で心配ていると数日後、いつもと変わらぬ師匠が何事もなく帰還した。だから僕は最近森に出没していた盗賊団が忽然と消え去ったという噂に耳を傾けないことにした。
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作品その37・幻影を留める

2018-09-18 21:18:21 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『土塊』と『青胡椒』を材料に『静止した結晶精霊』を錬成しました。用途は不明です。

 良くも悪くも常に笑っている師匠が声を荒げて泣いているのを、一度だけ見たことがある。夜更け過ぎまで研究室の灯りが点っていたので何事かと見に行ったら、僕の姿にも気づかぬまま土塊を使って誰かの姿を創り出そうとしていた。しかしその姿は朧気で、何度繰り返そうと一瞬で崩れ去り、その度に師匠は吠えるように哭くのだった。
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作品その36・死者の幻影

2018-09-17 15:20:25 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『星の砂』と『水砂糖』を材料に『静止した幽霊の素』を錬成しました。用途は戦闘用です。

 死んだ人間の姿は時として生きている人間を殺す手段に使えると、師匠は苦い表情で僕に話した事がある。例えば人間が避けるのが難しい物理的な危機の只中に追い込まれた時、かつて愛した死人がいきなり目前に現れたらどうなるかは考えるまでもないだろうと。ただ、昔自分に何があったのかを師匠は決して僕に語らなかった。
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作品その35・天翔ける馬

2018-09-15 13:27:14 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『蛍石』と『呪文を織り込んだレース編み』を材料に『吸血の羽根馬』を錬成しました。用途は戦闘用です。

 とある大貴族の息子のより、誰よりも見栄えのする乗騎が欲しいという依頼に悩んでいたら、師匠が羽の生えた馬でも作って渡してやれと言う。冗談かと思ったが本気だったらしく、気分が乗ったと言って自分で絡繰りを組み始めた。結局依頼人は満足して無事に納品が完了したが、個人的には、どんな風に鞍を置いて騎乗するのだろうと疑問だ。
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作品その34・新薬実験

2018-09-14 19:22:01 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『土塊』と『十年物の春風』を材料に『可愛い苦味飴玉』を錬成しました。用途は飲用です。

 大地の記録と風に乗って届いた情報を錬成して完成した飴玉を、刺激が強すぎると言って水で溶かしてから飲んた師匠は何故か激しく笑ってから眠りに就いた。目覚めるなり何らかの毒性が発生したようだと意味不明な数式を書き散らし始めた師匠は、何故か昔から絶対に僕を新薬の実験台に使おうとせず、結果としてたまに壊れた行動を取るのだ。
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作品その33・四六の蝦蟇(多分)

2018-09-13 19:06:47 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『月長石』と『筑波蝦蟇の油』を材料に『太古の妖怪時計』を錬成しました。用途は体力回復です。

 月に波長を合わせた石を使って組み上げた生物周期時計の燃料に使う油は普通なら鯨油だが、師匠は山ほど用意したヒキガエルを鏡張りの箱に突っ込んで採取した油を使っていた。その方が時計に使用者の体調を同調させやすく、結果として体力回復が早いと言っていたが、一体どこからその知識を得たのかは全くの謎だ。
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作品その32・汚れなき悪戯

2018-09-11 23:55:13 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『まがい賢者の石』と『日光』を材料に『鮮やかな理酒』を錬成しました。用途は滋養強壮です。

 師匠はたまに自分で作ったお酒を嗜む程度に飲むが、醸造するのは菓子と同じく僕にはとても真似できない見事なお酒だ。元々錬金術と酒造りは密接に関係していると言いながら自らが発光しているような幻想的な液体をグラスに注ぐと、絡繰り犬がいきなり体当たりを食らわせて床にこぼした酒を嬉しそうに舐めはじめた。

 絡繰り犬を解体処分にしてやると怒り狂う師匠をなだめるのは、なかなか大変だった。

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作品その31・駄犬注意

2018-09-10 19:26:01 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『賢者の石』と『水砂糖』を材料に『絡繰り仕掛けの犬餅』を錬成しました。用途は戦闘用です。

 うちには錬金術師という職業柄、高価な素材や錬成品が沢山置いてある為、師匠が防犯目的で絡繰り仕掛けの番犬を作ったのだが、何をどう間違ったのか外観だけは必要以上に厳ついが絡繰りのくせに甘いもの好きで遊びたがりの駄犬が完成してしまった。師匠はこんな事もあるさと笑ったが、そいつの修理調整を含む世話は総て僕の役目だ。
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作品その30・世界の極意

2018-09-07 22:59:07 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『オパール』と『純度の高い夢結晶』を材料に『巨大極意秘伝書』を錬成しました。用途は謎です。

 人間の無意識は世界の混沌と繋がっていて、正しい知識の元に夢の中を探索することで真理に到達出来ると師匠は言った。いつもの論調なので、一応の礼儀として正しい知識を夢の中でどうやって保つのかと突っ込んでみたところ、お前も成長したなぁと肩を叩かれて話が終わったので、結局、世界の真理は未だに謎のままだ。
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作品その29・美への追及

2018-09-06 23:43:46 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『水銀』と『空猫の髭』を材料に『輝き渡るエーテル強壮剤』を錬成しました。用途は観賞用です。

 ところで師匠は錬成した美容品を使ってらっしゃるのですかと尋ねると、もう使う必要は無いと断言された。若い頃に一度根本的な部分に手を入れたので、以降は外面を整える(本人談)以外の手段は必要ないのだそうだ。ただし、その根本的な部分に手を入れたときは本気で一年ほど地獄を見たので他人にはお勧めしないとか。
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