カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

旅路その84・バタークッキーの思い出

2019-10-06 18:58:29 | 旅人の記録
たかあきは晩夏の宗教都市に辿り着きました。名所は特に無し、名物は焼き菓子だそうです。

 僕の姉は結婚して半年で夫を亡くし、それから一年経たずに尼僧になった。たまに周囲に何もない教会で静かに暮らす姉の元に僕が会いに行くと、いつも穏やかな笑顔でバザー用に焼いたというバター味のクッキーを持たせてくれて、だから、まさか姉が修道士と駆け落ちするなどとは想像もしていなかった。
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旅路その82・歴史は夜に創られる(多分)

2019-10-05 09:06:34 | 旅人の記録
たかあきは収穫月の工業都市に辿り着きました。名所は駅、名物は貝料理だそうです。

 嘗ては豊富な鉱脈を有した金山によって隆盛を誇った歴史ある街の駅前に設置された戦国武将の銅像は当時の金山採掘の為に開発され超技術の粋を凝らして作られた有人型ロボットだと言う噂があるが、山間部でありながら貝そっくりの果実を秘密裏に栽培して加工した名産品を工場生産している街ならやりかねないと思ってしまう。
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旅路その83・断食道場

2019-10-03 23:17:53 | 旅人の記録
たかあきは芽月の辺境に辿り着きました。名所は神殿、名物は野菜料理だそうです。

 世間が平和だとよく分からない事が流行るもので、最近は辺境の神殿に泊まり込んでの断食修行が人気らしい。断食と言っても全く食べない訳ではなく、ある程度内臓の中身を空にしてから代謝を促す野菜料理を摂らせて体内を清掃するという触れ込みで、やはりというか参加者は美を求める女性が多いそうだ。
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旅路その81・お探しの本を見付けます(有償)

2019-10-01 21:25:03 | 旅人の記録
たかあきは西域の学生街に辿り着きました。名所は王立図書館、名物は肉料理だそうです。

 学生街の国立図書館は季節を問わず大勢の学生で溢れ返っているが、幾階層も重なった図書室では不慣れな者が案内もなしに目的の本を見出すのは至難の業だ。そんな訳で古参学生の中には依頼者が必要とする本を書架から見つけ出すアルバイトをしている者までいる。ちなみに相場は本一冊で肉饅頭一個だ。
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