雪がしんしんと降っている高岡山瑞龍寺。
越中が誇る名刹には、天候にかかわらず多くの参拝客が集まっていました。
拝観料は500円。
私は傘ももたずにやってきてしまいました。
受付の方は、北陸の雪をなめてかかる旅人に傘を貸してくれるとおっしゃいました。
つくづく高岡の人々は優しいのぅ~。
受付では手持ちの荷物も預かってくれます。
私は手持ちのかばん2つを預けて、中へ入ります。
高岡山瑞龍寺は、加賀藩2代藩主・前田利長の菩提を弔うため、3代藩主で弟(のち養子)の利常が建立しました。
時の名匠・山上善右衛門善広が建築を指揮し、約20年の歳月をかけて完成。
広山恕陽禅師により開山した禅宗様式の寺院です。
建立当時は水濠に囲まれており、菩提寺にかこつけた出城であったともいわれます。
まずは総門【国指定重要文化財】。
禅宗寺院らしく木材をそのまま用い、色彩は抑えられています。
総門の軒にかかる前田家の家紋・梅鉢紋。
よく見ると紋の木目が整っています。
直線的な木目の材木は、よほどの大木でなければ採れませんので、加賀前田家の財力をうかがうことができます。
総門の前に人だかりができています。
淑女がガイドをしているようです。
とても興味深い話をされていたので、このガイド率いる人の群れに交じって拝観することとしました。
瑞龍寺のおおまかな配置図。
禅宗様式の寺院では、お釈迦さまの身体をかたどったような建物配置がもっともよいとされています。
創建当時の瑞龍寺はこのような建物配置でした。
現在は、西浄(たぶんトイレ?)と浴室はなく、山門の手前に総門があります。
瑞龍寺は、
次は山門【国宝】。
延享3年(1746年)に焼失してしまいましたが、文政3年(1820年)に再築されました。
この山門は、日本が誇る数学である和算を駆使して設計されています。
淑女が説明をしていると、屋根から雪がドサっと落ちてきました。
ざわめく参拝客。
しかしガイドの淑女はこれをうまく利用して話につなげます。
山門の1層目の屋根には雪があまり積もっていません。
これは、2層目の屋根と1層目の屋根とがまったく同じ幅で構成されているといいます。
2層目からの落雪で、1層目の屋根を傷つけないようするためだそうです。
別角度からの山門。すばらしいの一言です。
次は仏殿【国宝】。
山門から望むと1枚の絵画のように見えるように配置ているといいます。
淑女なるガイドは、通路にしたたる水たまりをも利用して話を続けます。
「この時季は雪で大変ですけど、水たまり越しに逆さ山門や逆さ仏殿が拝めるんですよ~」
仏殿の屋根瓦は鉛でできています。
土の瓦では雪などの温度差で割れてしまうためです。
また一説には、鉛が鉄砲玉に転化できるので、有事に備えたものだともいいます。
巨大な屋根を、これを支えるにふさわしい大きな軒組(右)。
その軒組を支えるエビ虹梁と呼ばれるエビの形をした木組(中)。
また垂木は直線の直垂木に、扇垂木と呼ばれる曲線の垂木を組み合わせて構成されています。
ご本尊は、釈迦・文殊・普賢の三尊。
そしてその背景には、1枚の木板のみ。
木目以外には一切の装飾を施していない背景は、不思議にも曼荼羅に描かれるような宇宙?を彷彿とさせます。
再び外に。
仏殿を支える台座も、よく見ると下の部分と上の部分が一枚岩?でできています。
こうすることで地震にも強くなるといいます。
名工の仕事、ここに極まれり!といったところです。
さて私がついていった淑女のガイドは、ずいぶん詳しく説明してくれるので、別の案内人に引き連れられた別の軍団が追いついてきました。
さて次は、法堂【国宝】。
後続の案内人は、瑞龍寺の副住職のようです。
そして、法堂の中で副住職が説法をするのだそうな。
私は法堂に入らず、そそくさと離れます。
正座させられて説法を聞かされるのは、高校時代の修学旅行で懲りたから。
ということで、人の群れから分かれ、境内をじっくり見て回ります。
仏殿を別角度から見てみます。
なんだか建物は、少し斜めから望むともっと美しいような気がします。
山門から見た禅堂【国指定重要文化財】。
坐禅修行の場であるとともに、修行僧の寝食の場です。
山門から見た大
こちらは台所といったところで、寺の庶務を行うところです。
法堂のほうから回廊を通って禅堂のほうへ歩いていると、くだんの淑女ガイドが歩いていました。
しばし境内を回り、総門へ戻っていくと、くだんの淑女なるガイドは再び総門の前でガイドをしていました。
この方は瑞龍寺専属のガイドさんだったのでしょう。
そのお話に一分の無駄もなく、その場の天候をも利用し当意即妙にガイドされるこの淑女は、私が出会ってきた数少ないガイドの中で最強といっても過言ではありません。
いつもなら当ブログの編集に際しては、いろいろ検索して調べたうえで記事を作成しているのですが、瑞龍寺の段ではほぼこのガイドさんの話だけで構成できました。
受付へ戻り、傘を返して荷物を返してもらいます。
そしてご朱印も。
こうして瑞龍寺を後にしました。
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