鬼ヅモ同好会第3支部・改「竹に雀」

鬼ヅモ同好会会員「めい」が気ままに旅して気ままにボヤきます。

松江の郷土料理「やまいち」

2021-10-29 | グルメ


令 和 元 年 神 在 月 廿 弐 日 ( 即 位 礼 正 殿 の 儀 )

午 後 伍 時 廿 伍 分

島 根 県 松 江 市

宍 道 湖 夕 日 ス ポ ッ ト





宍道湖に沈みゆく日輪を仰ぎ、松江の市街地に戻りました。



宍道湖の湖畔からママチャリで約10分ほど。
宍道湖から中海へと流れる大橋川のほとり、松江新大橋の北詰・・・



「やまいち」さん。
店構えからもわかる老舗の居酒屋で、吉田類氏の「酒場放浪記」にも登場しています。
松江でも指折りの有名店であり、かつ人気店で、今宵は松江の郷土料理をいただきます。

店の1階は5、6席ほどのカウンターと、3組程度の座敷席。
比較的早い時刻で入店したので、客はほとんどいない様子でしたが、
「予約でいっぱいなのですが、7時までならいいですよ」
ということだったので、その条件で食事をすることとなりました。
さすがは人気店です。


カウンター席の入口側から2席目に着座しました。
何をオーダーしようかな・・・

宍道湖七珍 しじみ」「煮魚 めばる」「宍道湖七珍 もろげ」 etc...

カウンターの中に、本日のお料理が掲示されています。
ちょっと気になるのが、値段表示が一切ないこと。
事前に確認したところ「ぼったくり」といった口コミもなく、むしろ「安い」という言葉が多く出ていたので、まぁ問題ないだろう。
そう思いながらも、何を注文しようか迷っていました。



まず、やってきたのはお酒。



冷酒をオーダー。
米田酒造「純米吟醸 豊の秋」です。
松江の地酒でしたたかに酔いつつ、郷土料理で舌鼓といきましょうか。




最初のお食事は、おでん
お出汁をたっぷり吸いこんだ大根さんに、おでんにはあまり見られない春菊さん。
春菊さんは常時お出汁に浸かっているのではなく、食べる直前に出汁にくぐらせ、湯がく程度に煮てから供されます。
普段は好んで食べない春菊・・・あの苦味があまり得意ではないのですが、お出汁の旨味との相性が思いのほか良く、ちょっと苦味が残っているのが却って美味しくいただけました。




汁物はやっぱりしじみ汁
松江に来たら、これは絶対に欠かせませんね。
「宍道湖七珍しっちんの筆頭ともいうべきしじみは、宍道湖が日本一の水揚量を誇ります。
普段食べるしじみ汁とは明らかに違い、しじみの旨味がなんとも柔らかく、何杯でも食べられそうです。
しじみの身もぷっくりとしていて、食べごたえがありました。


宍道湖大橋川中海から境水道を経て日本海へと至る斐伊ひい川水系
宍道湖から日本海までの高低差はほとんどなく、そのため海水が宍道湖まで流入し、宍道湖は淡水と海水が混ざり合う汽水湖となっています。
また季節ごとに海水の混じり方が異なるため、宍道湖では多彩な魚介類が獲れます。
昭和5年(1930年)新聞記者の松井柏軒は、松陽新聞(現在の山陰中央新報)に「宍道湖十景八珍」を寄稿しました。
これが「宍道湖七珍」の始まりとされています。
「珍」にあたる魚介類は議論が重ねられ、現在はスズキモロゲエビウナギアマサギシラウオコイ、そしてシジミが「七珍」とされています。
覚え方は、それぞれの頭文字を取って、「相撲、足腰(すもうあしこし)」





「宍道湖七珍」のひとつ、もろげえび
吊り下がっていたメニューの「もろげ」という文字にいたく興味を抱いてしまい、オーダー。
もろげえびさんは塩焼きで登場。
背ワタが少なく殻が薄いので、まるごといただきました。

もろげえびは、標準名をヨシエビといい、ヨシ(葦)の生えている浅い内海に暮らしています。
旬は秋で、まさに私が訪れているころだったんですね。



さて、お店は齢六十代と思われる女将さん、齢四十前後のオーナーさん、そして女将さんの友人という淑女殿の3人が切り盛りしているようです。
オーナーさんは女将さんの息子さんのようで、先代のオーナーさんであるご尊父の後を継いだのだとか。
厨房はオーナーさんが主に担当し、接客は淑女殿が主に担当しています。
女将さんは両者の中間、といったポジションのようです。

女将さんの友人だというこの淑女殿、とっっってもお元気な方です。
春菊のおでんをおすすめしてくださったのも淑女殿ですし、お店の内情?をいろいろとお話ししてくださったのも淑女殿
隣席に着いた50代と思われる紳士殿ともども、淑女殿の賑やかな応対にタジタジです。

紳士殿は都内で勤務されているようですが、このときは帰省されていたとのこと。
地元民でありながら「やまいち」さんに来店したことはなかったようですが、なるほどここは名店だとおっしゃっていました。
こうして紳士殿と会話を弾ませながら、お食事は続きます。





地の物ではありませんが、肉もやし炒めもいただきます。
ランチが質素なものだったので、かなりの空腹状態であった私は、ガッツリ系のメニューもオーダーしました。
うんうん、ここは何を食べてもうまいですなぁ。



「明日は出雲大社を詣でます」
紳士殿に言ったところ、
「出雲に行かれるのなら、市内の古墳群に寄られてはいかがですか。なかなかすごいものですよ!」
とおすすめされました。
翌日は出雲大社と日御碕ひのみさきを訪れる計画でしたが、時間に余裕があったら行ってみようと思っていると・・・

「ほら、お兄ちゃん、机拭いて!」

冗談なのか本気なのか、元気の良すぎる淑女殿の小気味良いキンキン声。
まぁ客に机拭けなんて冗談に決まってるでしょうが、初対面の男たちに対してのこのようなセリフ回し。
恐るべき淑女殿です。

時とともに予約客が来店し、店内は賑わいを増していきます。
そして淑女殿も然り。
紳士殿に私の食欲も増進していきました。



カウンター内に吊り下げられていたお品書きに、デカデカと「メバル」とあったので・・・



メバルの煮付けをオーダー。
これもまた、良し!
しかしメバルが高級魚であることを、当時は認識していませんでした。


メバルを丁寧に食べ尽くし、



おでんをおかわり。
先ほどの春菊に加え、あつあつふっくらの揚げ豆腐
あと、関東のおでんには見られない里芋もいただきましたが、これまたうまい。
自分でおでんを作るときは、春菊とともに里芋も入れてみようと思いました。



6時45分ごろ、酒瓶も空いたのでお勘定としました。
お食事代は、5,500円ほど。
(レシートをもらわなかったので正確な金額は覚えていませんが、それくらいだったかと)
メバルの煮魚がお代を押し上げたようですね。
それでも、松江の郷土料理を堪能できて、大満足で店を後にしました。



後日、吉田類氏の「酒場放浪記」で、「やまいち」さんを拝見しました。
覚えのある淑女殿のキンキン声を聞いて、また松江に行きたくなっちゃいました。






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