昨日の続きです。
それで、並木に向かってペダルを漕いだのですが、かなり手前で鉄パイプのゲートに行く手を阻まれてしまったのです。工事車両以外進入禁止とあり、ガードマンが入り口に立ち車両のチェックをしているのです。
見れば、工事は並木の、ずっと、ずっと、先の方で行われているのです。ここは交渉だと思い、
「スイマセン。あそこの並木の写真を撮りたいのですが、中に入れてもらえませんか?」
「危険なので一般の方は入れてはいけないと指示されていまして・・・・・・」
「あの並木のちょっと手前までの処で、ちょっとだけで、すぐ終わりますから、それにしても、なかなか、いい眺めですよね、筑波山をバックにして・・・・・・、この並木は、片側だけですか?」
「いいえ、道路の拡張で片側は切り倒されて・・・・・・」
「はァ・・・・、そうなんですか、勿体ないないですよねェ・・・」
「えェ、この辺は雑木林で、この並木から眺める筑波山は、本当に絶景でした」
どうやら、このガードマンさん、地元の方らしいのでした。年齢は私より五つか六つ年上とお見受けしました。
そして、並木に眼をやりながら、
「この並木も、記憶だけにとどめていては、いつかは忘れ去られてしまうし、記録に残して置いた方が・・・・・・・」
「ちょっとだけ、すぐに戻りますから、見なかった事にして・・・・・・」
「まぁ、そういう、事にしますか・・・・・・」
このガードマンですが、背が高くて、痩せていて、陽に焼けて、彫りが深く、頬が痩け、鋭い眼差し、深い皺、インドの修行僧のような、哲人のような、そんな雰囲気を漂わす方でした。
まぁ、そんな方と、そんな、こんなの、やりとりをして、並木に近づいたのです。
なかなかの並木、松のようです。
確かに、筑波山をバックに、かなりの絶景。
この高さ、この太さ、そこそこの樹齢。それでも、雑木林に囲まれていた頃は、それほど目立たなかったような気もします。
周囲の樹が切られたことで、これまでよりも、ずっと、ずっと、並木としての景観が際立ったような、これから世間の注目を浴び、名前も何々並木と呼ばれるかも知れません。
写真を撮り終え、ガードマンさんにお礼を云ってゲートを出ると、彼は奥の工事現場に向かって歩き出したのです。ゲートでの警備はもういいの?
背筋を伸ばしてゆったりと歩くその後ろ姿は、もう、インドの哲人そのものでした。もしかして、ガードマンは世を忍ぶ仮の姿?
まぁ、それから、別の角度から並木を撮ってみたのです。
宅地の外れからは、このように、見窄らしいのです。“不動並木”と違って、“春の雨”でも傘は要るようです。
建て売り住宅も完成間近、ここから見る並木はちょっと、ちょっとです。
宅地の周囲は、まさに荒涼。
広大な赤土の平原の先に、疎らな並木。並木は遠くの横から見るより、近くの正面から見る方が良いのでした。
道路が完成し、周囲に住宅が密集した、その頃は、並木のある風景はどう変わるやら・・・・・・。
兎に角、こんな処に、こんな松並木が・・・・・・、でした。
それでは、また来週。