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近所を歩く、遠くの町を歩く、見たこと食べたこと、感じたことを思いつくままに・・・。おじさんのひとりごと

“父親たちの星条旗”くり返される反戦映画とは・・・

2010年09月16日 | 映画の話し
9月も半ば、やっと涼しくなりました。外は雨です。

それでも、まだ、8月からの、途切れ途切れの終戦特集で、戦争映画のお話です。

今日は「父親たちの星条旗」です。第二次大戦の大平洋戦域での激戦地、硫黄島攻略作戦を描い2006年制作の作品です。

わたし知らなかったのです。戦いのあった年号も硫黄島の地図上の位置も、戦闘での両軍の死傷者数も、まったく知りませんでした。

それで、映画を見終わって調べると、戦闘があったのは1945年2月19日から3月17日で、大本営が玉砕を発表したのが3月21日で、その後、司令官以下300名による戦闘が3月27日にあったそうです。終戦の5ヶ月前だったのです。

終戦の年の5ヶ月前だったとしたら、米国は勝利がもう直ぐそこに見えていて、前線の兵士も国民も士気は高揚し、戦費は使い放題で、軍艦も航空機も戦車も爆弾も、作り放題だと思っていました。

でも、かなり、そうではなくて、4年も続く戦争に、兵士も国民もかなり疲れていたようで、戦費も底をついていたようです。

硫黄島での1ヶ月の戦闘で、日本軍の死者が「2万129名」、米軍は死者「6千821名」負傷者「2万1865名」で、計「2万8千686名」だったそうです。

“擂り鉢山この英雄的な光景”が、米国の士気を高揚させ、戦費調達の為の国債販売に一役買ったそうなのです。4人の兵士も、撮影者も、それを利用した軍部も、政治家も、撮影された状況は知っていたようです。


映画の冒頭で、

「皆、物事を単純に考えている、善か悪、たいがいは、そんな単純なものではない」
「彼らは、自分たちを英雄だと考えていなかった」
「戦争で行われているのは、信じがたいほどの残虐行為、それでも、大義名分が欲しい」
「それには分かりやすい真実が必要、説明はいらない」
「いい写真が撮れれば、それが戦争の勝敗まで左右する」
「英雄とは必要に迫られて人が作るものだ」・・・・・・


この写真一枚で、4人の兵士が“英雄”とされ、戦時国債の販売促進係として、全米を引き回されたのでした。

この映画が作られたは2006年で、あの「2001年」の“9・11”から5年目です。

9・11の報復として、テロとの戦いを宣言し、世界中に、“自由と平和を守るアメリカに正義あり”として、世界中に“有志連合”に加わること要求し、有志連合に参加しない国は敵と見なすと、世界に“正義か悪か”の“善悪二元論”で、二者択一を迫りました。

思い起こせば、あのとき、ブッシュ大統領の呼びかけに答えて、小泉純一郎首相が世界で一番最初に手をあげて、有志連合に加わったと思います。

まあ、そんな背景からイーストウッドは映画の冒頭で「皆、物事を単純に考えている、善か悪、たいがいは、そんな単純なものではない」と云わせたのでしょう。

それにしても、第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガン戦争、イラク戦争、いゃ、それ以前の戦争でも、大きな戦争が終わると、戦争関連の文学、映画が数多く創られました。

戦争はドラマチックで、究極的な状況で、人間に厳しい選択をせまります。反戦でも、非戦でも、厭戦でも、物語が生まれす、物語が創り易いのでしょう。

反戦でも、非戦でも、厭戦でも、まして好戦でも、それなりに、その意識に近い人達が、自分の意識にあった映画や文学に触れるのでしょう。

それで、「英雄とは必要に迫られて人が作るものだ」と云ってましたが、どう見ても、必要に迫られていた筈ですが、戦況を逆転するような“英雄”は、ベトナム戦争以降は作れませんでした。

“英雄的行為”に見える一枚の写真で、戦争の勝敗は左右されないと思います。

誰しもが、疑う事なき“それなりの大義”がなければ、戦争は、そうは勝てないのだと、そう思います。ベトナム戦争以降、アメリカにそれなりの大義がなかったのです。

でも、しかし、誰しもが疑う事なき戦争の大義など、この世にはありません。

敵も、大義を正義を掲げて戦っています。“正義の敵は、もう一つの正義だァ”と、かの“クレヨンしんちゃん”も、云っていたそうです。

それで、映画“父親たちの星条旗”ですが、アメリカ人が創り、アメリカ人が観るならば、それなりの反戦的で、良くできた映画だと思います。

でも、アメリカは、それでも、これからも、いろいろな大義を創り出し、熱狂して、世界の平和と自由の為に、戦争を起こすかも・・・・・・。

そして、また、新しい、反戦映画が生まれ・・・・・・。もう、戦争関連映画はいりません。

まあ、兎に角、いろいろ、勉強できる映画でした。


それでは、また明日。


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