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近所を歩く、遠くの町を歩く、見たこと食べたこと、感じたことを思いつくままに・・・。おじさんのひとりごと

蒼井優と高橋一生で「スパイの妻」②痴情のもつれで憲兵隊は動きません!

2021年04月19日 | 映画の話し

前回の続きです。

二人が満州から連れ帰った元看護婦が殺され、物語が動き始めます。

まず、ここで、幼なじみで憲兵の泰治が、聡子を憲兵隊に呼び、

①旅館の仲居が殺された。

②その仲居は満州で看護婦をしていた。

③満州から連れ帰ったのは優作と文雄。

④看護婦を旅館に仲居として世話をしたのは優作。

⑤この事件は「痴情のもつれ」と思われる。優作が潔白であることは調査済み。

⑥旅館に投宿している甥の文雄への疑いは残っている。

そして、この事件がどう動くかは、未だ分からない。あなたを呼んだのは、あらかじめ心構えして頂きたかったから。

そして、あなたと、あなたのご亭主がこれからどう振る舞われるか、我々は注視しています。

と、聡子は泰治から告げられたのです。

こう言われれば、仲居と亭主との関係を当然疑います。聡子と優作の関係に、それなりの亀裂が走ります。

『あなたと、あなたのご亭主がこれからどう振る舞われるか、我々は注視しています』と、これは泰治が、聡子と優作の関係悪化を期待しての言葉。

『我々は注視している』と云っていますが、「わたしは注視している」だと思います。

そもそもです。このような民間の「痴情のもつれ的」事件に、憲兵隊が動くことはありません。優作と聡子が絡んでいたから、憲兵の泰治が動いたのです。

そういう解釈を期待してのシーンだと思います。

話はそれますが、それにしても、このシーンですが、階段ホールに、あたかも部屋のよなセットを組み撮影しています。かなり違和感がありました。

それで、帰宅した聡子は、映画を観に行ったのは嘘で、本当は憲兵隊の分駐所に行っていたと告げるのです。

『泰治君が、僕には内緒で』と云っただけで、何故嘘を付いたのかは問わない優作。

「僕に内緒で」と「嘘を問わなかった」ことで、優作が、単なる痴情のもつれだけで無く、憲兵隊が何かを掴んで、動いているのでは?との警戒心を暗示させるカット。

連れ帰った女との関係を問い詰める聡子。

『仲居の事は?彼女は亡くなりました。』

『知っている。だが、それは君が必要のないことだ』

『何故です』

『君に無駄な心配はかけない、それが僕の信条だからだ』

『だとしたらそれは失敗です。やはり、草壁弘子とは知った仲なんですね』

『おい、ただちょっと向こうで知り合っただけだ、それ以上は何もない』

『泰治さんは、あなたがその女を連れ帰ったと云いました。お願いです本当のことをおっしゃて下さい。こんな気持ちは結婚していらい始めてです。急にあなたのことが分からなくなりました』

『問わないでくれ、後生だ』

『やっぱり・・・』

『僕は断じて恥ずべきことは何もしていない。ただ僕は君に対して、嘘をつくようには、できていない。だから黙るしかない』

『そんなの嘘と変わりません』

『君がどうしても問うならば、僕は答えざるをえない。だから、問わないでくれ。僕と云う人間を知ってるだろう。どうだ、信じるのか? 信じないのか?』

『ひきょうです、そんな言い方・・・・・・信じます』

『ありがとう』

『信じているんです』

『この話はこれで終わりだ。いいな』

これでこのシーンは終わります。

問うな!疑うな!君には関係無い!信じろ!これでは、聡子に信じろと云っても無理があります。

信じたいと思うが、信じられない聡子。二人の関係に亀裂が走ります。泰治の期待道の展開。

次のシーンで、今度は、聡子が優作に問い詰められるのです。

『この氷どうした。泰治クンは君にほれている。神戸にやってきたのもその為だ。君は、本当に気付かないふりをするのが得意だな。僕の方は君に嘘をつくようにはできていないというのに』

次のカットで、殺された仲居が登場。そうです。これは聡子の夢のなかのシーン。

聡子の心の動きを、思いを、疑いを、不安を、夢のかたちで描かれるシーン。

仲居と優作が、ベットの上でじゃれ合いつつ、

『優作さんて、ホント、嘘の付き方お上手』

『そうか』と云って、二人は声を上げて笑う。

この夢は、以前、優作が満州へ出掛けて留守の際に、女中を連れて、自然薯採りに来た聡子と、ウィスキーに入れるための、天然氷をとりに来た泰治が、偶然、近所の山の中で会った時の事が重なっているのです。

家に旨い舶来のウィスキーがあるから、帰りに寄って下さいと誘った聡子。一瞬、間を置いて『分かりました後で伺います』と応えるのです。

一瞬の間は、聡子の誘いの意味を、優作の事を口にしてないことで、もしかして留守? 亭主の居ない家に誘う意味を、そして、儚い期待も・・・、そんな事での、一瞬の間。

そして、二人でウィスキーを酌み交わすシーン。

『優作さんがご在宅でないなら寄りませんでしたのに』

これは、本音半分、嘘半分。

『そんな気がしたので云わずにおきました』

『聡子さんは楽しく過ごされていますか?』

『夫がいない間はもちろん寂しいです』

『それはどういう意味です』これはかなり露骨な質問。

『どういう・・・?フフッ、表も裏もありません』

『そうですね、あなたそういう方だ』

主人の留守に酒に誘う聡子に、忘れようにも、忘れさせないそぶりに、いまでも、聡子への思いが消ないことを意識する泰治。

総子の曖昧な態度に、これまで、泰治は苦しんできたのです。そのことは聡子も薄々は気が付いているのです。

そして、亭主の優作も泰治の気持ちを、それなりに気付いている、と、感じている聡子。

聡子と泰治は幼なじみであり、その後も、それなりの友人関係を保っているとの、設定ですが、詳細は描かれていません。

泰治と聡子の友人関係の中に、優作が登場し、優作と聡子が恋愛関係となり結婚。この過程は観る人の想像に任せています。

わたしとしては、聡子の結婚を機に、泰治は職業軍人の道を、自分の意に反して選択したと思います。過去の自分を、聡子への想いを、断ち切るための選択として。

そもそも「自分は取り調べは好きでは無い」と云ったり、聡子に「泰治さんに軍服は似合わない」と云われたり、泰治は軍人に、憲兵に、向いて居ないのです。

それでも、軍人を選択したのです。可哀想な泰治クン。わたしとしては、泰治クンに感情移入してしまいます。

本日はここまで。

次回より物語は激しく動き始めます。

『戦争という時代のうねりに翻弄されながらも、自らの信念と愛を貫く女性の姿を描くラブ・サスペンス』の背景としては、かなり残酷な歴史的事件が・・・。

それでは、また。

 

コメント (1)
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