徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

2016年インフルワクチン事情:経鼻生ワクチンに期待していたのに・・・(T_T)。

2016年09月15日 07時09分39秒 | 小児科診療
 現在日本で使用されているインフルエンザワクチンは「皮下・不活化ワクチン」というタイプです。
 ご存じのように、有効率は他のワクチンほど高くありません。
 例えば、MR(麻疹/風疹)ワクチンでは1回で95%、2回で99%の有効率ですが、インフルワクチンでは2回接種しても70%程度にとどまります。
 加えて、その年流行したインフルエンザのサブタイプと一致しなければ、さらに有効率が低下してしまう始末。
 他に予防する方法がないので接種を勧めていますが、「罹らないというより、軽く済ませるために接種しましょう」と苦し紛れの説明を余儀なくされています(^^;)。

 天然痘ウイルスを撲滅した現代医学ですが、ことインフルエンザに関してはいまだ負け戦(いくさ)、と言わざるを得ません。

 その劣勢を跳ね返すべく、他のインフルエンザワクチンもいろいろ開発されています。
 2003年にアメリカで登場して注目を浴びてきたのが「経鼻生ワクチン」。
 注射ではなく、鼻の穴に弱毒化したウイルスを噴霧するタイプで、軽く感染させるため不活化ワクチンより有効率が高く、当初は90%(!)といわれました。
 しかしその経鼻生ワクチン、最近有効率が落ちてきたという噂がチラホラ。
 そのタイミングで、日経メディカルに以下のような記事が掲載されました;

■ インフル用経鼻ワクチンが効かなくなった理由
2016/9/15:日経メディカル)より
 2003年に米国で登場した、経鼻の弱毒生インフルエンザワクチンの「フルミスト(FluMist Quadrivalent)」。発売当初は15歳以上だった対象年齢が2歳以上に引き下げられたことで乳幼児への接種例が増えてきた。これまで米CDC(米疾病対策センター)は「子どもへの感染予防効果が認められる」と勧奨してきたが、この6月に一転、「2016-2017シーズンは勧奨しない」と発表。米国のみならず、フルミストの承認申請が出されたばかりの日本でも衝撃が走った。
 CDCの発表は、米予防接種諮問委員会(ACIP)の「2〜17歳での効果(全型のインフルエンザを対象)は、2013-2014シーズンがマイナス1%、2014-2015が3%、2015-2016が3%」などとする調査報告を受けたものだ。効果がマイナスとは、後からの集計でワクチン未接種の方が感染しにくいという解析結果だったことを示す。
 ACIP報告では、2012年までの過去3シーズンはフルミストの効果が50%から70%で、一般的な皮下接種の不活化ワクチンとほぼ同程度だった。一方、2013-2014と2015-2016のシーズンは皮下接種の不活化ワクチンの効果が約60%なのに対し、フルミストが有意に低かったとされている。「報告書から、特にH1N1型への効果はほぼゼロだったことがわかる」と、新潟大学小児科学分野教授の齋藤昭彦氏は話す。


 う〜ん、効きが悪いどころか、効果ゼロ!?
 「有効率90%」を誇ったことがウソのようです。

 フルミストは、弱毒化させたり低温馴化させるなどの処理を行ったウイルスの遺伝子断片を細胞に組み込み、再集合させてできたウイルスを鶏卵に感染させて作製する弱毒生ワクチンだ。2013-2014シーズン以降は、A型のうちH1N1型、H3N2型とB型の山形系統、ビクトリア系統を対象とした4価のワクチンとなっている。開発したのはMedImmune社だが、現在は、後に同社を買収した英AstraZeneca社の傘下で販売されている。
 欧州でも使われているが(商品名Fluenz Tetra)、英国からもこの数年は効き目が弱いと報告されていた。AstraZeneca社の研究者を筆頭著者とする論文においても、「市販後調査により2013-2014シーズンの米国では効果が弱かったことが明らかになった」と報告されている(Vaccine 2016;34:77-82)。ただし、この6月のCDC発表直後にAstraZeneca社は「2015-2016シーズンでは46%から58%の有効性が認められた。CDCは流行株とワクチンの型が合えば、一般的にワクチンの有効性は50%から60%だとしている。今後、データに基づき、CDCと協議を進めていきたい」とするリリースも出している。


◇ 上気道粘膜でウイルスの侵入を阻止する経鼻ワクチン
 インフルエンザにおいては、一般的な皮下接種の不活化ワクチンは乳幼児への効果が弱い。過去に感染歴があれば接種により抗原特異的な血中抗体(IgG)を速やかに産生できるが、感染歴がなければそのようなブースター効果を期待できないからだ(ただし、乳幼児でも脳炎や心筋炎などの重症化を抑制する効果はあるとされる)。一方、フルミストのような弱毒生ワクチンは体内で感染状態を作りだすため、乳幼児にも有効とされている。
 さらに、鼻に噴霧するフルミストには、体内でのウイルス増殖に対して起こる血中IgG産生だけでなく、上気道粘膜における分泌型抗体(IgA)の産生も誘導するという他にはない特徴がある。粘膜局所から分泌されるIgAには、いち早くウイルスを捉えて侵入そのものを食い止める効果が期待できる。
 2008年までの10年以上にわたって、米California大学San Diego校などで小児感染症の臨床現場を経験した斎藤氏は、「米国で小児感染症専門医として仕事をしていた頃、フルミストの効果は一般的な皮下接種ワクチンの約2倍高いとされ、臨床現場で小児へのフルミスト接種が急速に広がっていったことを覚えている。フルミストが日本でも中心的役割を担うようになるだろうと思っていたので、今回の報告は残念だ」と語る。


◇ 明確にならない、効かなかった理由
 不活化ワクチンと異なり、生ワクチンの場合は、すでに感染歴があるとワクチンウイルスが体内で排除されてしまうために効果が弱いことが知られている。国内でフルミストの臨床試験に関わる北里大学北里生命科学研究所ウイルス感染制御学特任教授の中山哲夫氏は、この特性がフルミストにマイナスに働いた可能性を指摘する。直近の数年、同じH1N1型が流行しており、気づかないうちに多くの子どもがH1N1ウイルスに暴露されたことで効果が発揮されなかったのではないかというのだ。


 既に免疫があったので、ワクチンで免疫を上乗せしても差が出なかったという推測ですね。

 さらに、中山氏とともに、国立感染症研究所感染病理部部長の長谷川秀樹氏も指摘するのが、2013-2014シーズン以降のワクチンが3価から4価に変更された点だ。中山氏は「異なる型の生きたインフルエンザウイルスは互いに干渉し合うことが知られており、体内で増えなかった型のワクチン効果は下がることになる」と話す。ただし、「それでも、なぜH1N1型に対する抗体価が上がらなかったのかなど、謎が多い」と首をかしげる。
 前述のVaccine誌における報告では、特定の生産ラインにおける保存の問題、2〜8℃とされる推奨温度の妥当性、ウイルスのヒト細胞への結合能の変化など、複数の可能性が示唆されているが、齋藤氏は「AstraZeneca社内で検討されたものが多く、科学的な裏付けに乏しい。インフルエンザワクチンの効果判定に影響する因子は多く、原因の究明は本当に難しい」とコメントする。


◇ 国内では経鼻ワクチンの先行き不透明、皮内ワクチンに期待
 フルミストの開発は、2015年にAstraZeneca社と契約した第一三共が行っており、現在、国内製造販売申請中で、上市に向けた最終段階にあるといえる。中山氏は「現在、免疫応答についての再確認試験を行うところだが、今回のACIP報告がどのように影響するのかは不透明」とし、齋藤氏は「これまでのデータを総合的に見ると、現時点で日本の子どもたちに接種を推奨するのは難しい」と話す。
 一方で第一三共は、皮内投与型のインフルエンザワクチンについても承認申請済みだ。濃縮することで少量化したウイルス抗原を、専用デバイスで深さ約1.2mmの皮内に接種するというもので、ワクチン成分は皮下接種のそれと全く変わらない。ただし、効き目は皮下接種よりも高いとされる。皮膚の上層部には樹状細胞やランゲルハンス細胞などが豊富で、免疫応答がより早く誘導されると考えられるからだ。
 こうした皮内接種の優位性は、狂犬病やB型肝炎などのワクチンですでに実証済みだ。いずれも、痛みは皮下よりも軽く、腫れや発赤は同程度とされる。「将来的には小児への皮内接種も可能になると期待している」と齋藤氏。


 「皮下不活化ワクチン」「経鼻生ワクチン」に引き続き、「皮内不活化ワクチン」「経鼻不活化ワクチン(↓)」を開発中、近い未来に認可されるようです。

 長谷川氏は、自身が開発中の経鼻噴霧型不活化ワクチンに期待をかける。これまで経鼻の不活化ワクチンでは、効き目を高めるためにアジュバントが欠かせないとされてきた。アジュバントとは、抗原性を補強する物質のことで、抗原と一緒に投与されてより抗体誘導能を高める。しかし長谷川氏はウイルス抗原を全粒子のまま使えば、内部のゲノム(1本鎖RNA)がアジュバント機能を果たすことを見出したという。「特別なアジュバントを加えなくても抗体価が十分上がることをすでに確認済みで、第I相臨床試験を終了するところまで進んでいる」。
 さらに、この経鼻不活性化ワクチンを投与して誘導される分泌型IgAには2量体だけでなく、3量体や4量体のIgAが含まれることも突き止めた。「花びらのような形をした多量体は、同じ亜型のウイルスが多少変異しても中和能を維持できる。この点も大きなアドバンテージといえる」と長谷川氏は紹介する。
 未だ残暑が厳しい中、WHO(世界保健機関)はすでに2016-2017シーズンのワクチン推奨株4種を選定済みだ。それを受け、国内でも検討会議が終わり、まもなく生産に入る。AstraZeneca社は、4価のフルミストについて昨年同様に供給する予定だという。国内のみならず、世界の動向を注意深く見守っていく必要がありそうだ。


 人類 vs インフルエンザウイルスの闘いは、まだまだ続きそうです。

<追記>
同様の内容のニュースがケアケットで取り上げられました。

■ 鼻スプレー型インフルエンザワクチンは避けるべきとの勧告―米AAP
HealthDay News:2016/09/28
 間もなくインフルエンザシーズンが到来するが、鼻スプレー型のインフルエンザワクチンは効果が低いため使用すべきではないとの見解を、米国小児科学会(AAP)が発表した。AAPの最新の方針声明によると、2016~17年のインフルエンザシーズンには、生後6カ月以上の小児はもれなく季節性インフルエンザの予防接種を受ける必要があるという。
 今回の声明は、今シーズンは鼻スプレー型ワクチンを使用すべきでないとする米国保健当局の勧告を支持するものだ。声明の共著者の1人であるHenry Bernstein氏は、「新たな研究で、近年のインフルエンザシーズンでは鼻スプレー型ワクチンに比べ、注射のほうが有意に優れた予防効果が得られることが示されている」と述べている。
 米国疾病管理予防センター(CDC)の予防接種諮問委員会(ACIP)によると、2015~16年、鼻スプレー型ワクチンの2~17歳の小児における有効性はわずか3%であったのに対し、注射型ワクチンは63%であったという。「われわれは小児にできる限り最善のインフルエンザ予防を提供したいと考えている。最近の研究から、注射型ワクチンのほうが高い保護効果を得られる可能性が高いことが示されている」と、Bernstein氏は付け加えている。
 AAPはさらに声明のなかで、特定集団へのワクチン接種に特に力を入れるよう勧告している。たとえば、全ての医療従事者、インフルエンザによる合併症リスクを上昇させる疾患をもつ小児~10代、米国先住民の小児、5歳未満(特に2歳未満)の小児を含むハイリスク児に接触する家族や保育者などが対象となる。
 妊娠中および授乳中の女性もワクチンを接種する必要があるという。インフルエンザの予防接種は妊娠中のどの時期に受けても安全とされている。また、妊婦はインフルエンザによる合併症のリスクが高いため、予防接種が重要である。妊婦がワクチンを受けることで、生まれる児にも生後6カ月まで予防効果が得られる。また、授乳でも新生児の予防効果を高めることができると、米シアトル小児病院のWendy Sue Swanson氏は述べている。
 医療機関は遅くとも10月からインフルエンザ予防接種の提供を開始し、6月30日まで継続する必要があるという。この声明は「Pediatrics」オンライン版に9月6日掲載された。
[2016年9月6日/HealthDayNews]Copyright (c) 2016 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
<原著論文>
Byington CL, et al. Pediatrics. 2016 Sep 6.
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麻疹ワクチンが足りない、その2

2016年09月14日 05時41分05秒 | 小児科診療
 麻疹患者がジワジワと増えてきています。
 連日メディアに取り上げられ、麻疹ワクチン希望者も増えるのは自然の道理。

 しかし麻疹ワクチンは予定数しか生産しておらず、昨年秋から綱渡り状態の自転車操業状態なのです。
 日本には麻疹ワクチン(≒MRワクチン)製造会社が3社ありますが、そのうち1社のワクチンが検定に落ち、生産数に余裕がありません。

 そこにきてこの麻疹騒ぎ。
 成人のワクチン希望者が増えるほど、乳幼児定期接種分のワクチンが減るというジレンマが発生します。

■ <はしか患者>全国で82人に 1週間前より41人増
2016.9.13:毎日新聞)より



 国立感染症研究所は13日、1月から9月4日までのはしか(麻疹)の報告数が全国で82人になったと発表した。1週間前の発表時より41人増えた。はしかは関西国際空港(大阪府)や兵庫県、千葉県などで患者が集団発生している。内訳は、大阪府26人▽千葉県18人▽東京都11人▽兵庫県10人--など。20~30代が約6割を占める。
 予防には、はしかと風疹の混合ワクチン(MRワクチン)などの接種が有効。1歳と小学校入学前の2回、公費による予防接種が受けられる。ただ大人を中心に接種が1度や未接種で免疫の少ない人もいる。厚生労働省は「ワクチンの全国的な不足は生じない見込みだが、偏在が懸念される」として、自治体や販売業者に適正な対応を求める文書を出した。


 「ワクチンの全国的な不足は生じない見込みだが、偏在が懸念される」は甘い考え方なのでは?
 実際に当院でもMRワクチンの供給が不足すると連絡がありました。
 輸入品を除く日本製造のワクチンは、民間会社が予定必要量しか生産しておらず、突然必要量が増えても増産不可能です。
 今回は、ジャスティン・ビーバーのコンサート〜関西国際空港の麻疹騒ぎで成人の接種希望者が増え、それが乳幼児の定期接種分を浸食しているのです。

■ はしか「局所的な流行状態」専門家 患者は82人に
2016年9月13日:NHK)より
はしかのウイルスは、免疫のない人が吸い込むなどすると、9割以上の人が感染すると言われ、発病すると、およそ3割の人が中耳炎や肺炎などの合併症を引き起こします。また、子どもの感染が多かった過去の流行のデータで見ますと発病した人1000人に1人程度の割合で死亡すると言われ、死亡で多いのは、1歳前後の乳幼児です。
国立感染症研究所によりますと、ことし報告された患者では、ほぼ半数の人が、ワクチンの接種歴がありませんでした。
感染症の問題に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長によりますと、特に注意が必要なのは、定期接種を受け終わっておらず、感染するリスクが高い小学校入学前の乳幼児だということで、定期接種は必ず受けることが大切だということです。
また、妊婦が感染すると、流産や早産のおそれがあることから、特に妊娠を希望する女性は、免疫が十分あるかなどを医療機関と相談したうえで、必要な場合には、接種を受けることが重要だと指摘しています。
一方、すでに妊娠中の女性は、ワクチンを打つことができないため、患者が発生した地域を訪れるのは避けたほうがよく、身近に発熱や発疹の症状がある人がいる場合は近寄らないようにしてほしいと話しています。

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インフルエンザ流行による学級閉鎖、はじまる。

2016年09月10日 19時51分10秒 | 小児科診療
 世間は麻疹流行に目を奪われる中、インフルエンザ流行による学級閉鎖のニュースが流れました。
 まだインフルエンザワクチンの接種前なのに・・・。

■ 2016.9.8:茨城県の幼稚園(A型)
■ 2016.9.8:東京・足立区内の小学校、インフルエンザで学級閉鎖(TBSニュース)
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麻疹ワクチンが足りない。

2016年09月10日 19時28分02秒 | 小児科診療
 麻疹流行騒ぎで、麻疹ワクチン接種希望者が一気に増加し、麻疹ワクチンが足らなくなり、子どもの定期接種に支障が出つつあります。
 日本脳炎ワクチンも足らないという情報有り。
 こちらは3歳未満の日本脳炎患者が発生したため、従来より早い時期にワクチンを希望する患者さんが増えたため。

 こんなちょっとしたバランスですぐに足らなくなってしまう日本のワクチン。
 いつもギリギリで生産していることが判明する結果となりました。

 思い起こすのが、東日本大震災後のガソリン不足です。
 「ガソリンが手に入らなくなるかもしれない」という不安が、みんなをガソリンスタンドに追い立て、あっという間に手に入りづらくなりました。

 麻疹ワクチンについては、反省すべき点があります。
 数年前に風疹が流行して、先天性風疹症候群が多発して社会問題となりました。
 その時に、接種していない大人達が話題になり、風疹ワクチン接種が推奨されました。
 風疹ワクチンはふつう麻疹ワクチンと一緒になったMRワクチンとして接種します。
 つまり、このときに接種していない大人達にMRワクチンをもれなく接種しておけば、今回の麻疹騒ぎは起こらずに済んだ可能性が大なのです。

 しかし、今回の発端者は本人も家族も麻疹ワクチンを受けていなかったと報道されています。
 「ワクチン反対」のポリシーだったのでしょうか。
 ワクチンで免疫を得るより、自然感染で抗体ができる方が健康的、と説明する困った医師がいます。
 重症麻疹患者を診たことがないからそう言えるのでしょう。
 江戸時代には「はしかの命定め」と言われて恐れられた感染症です。
 現代医学を持ってしても、乳幼児の麻疹患者は1/3〜1/2が入院するほど重症です。
 15年ほど前、勤務医時代に麻疹の流行に遭遇しました。重症化しても特効薬はなく、入院病棟には一晩中乳幼児の泣き声と咳き込む音が響き渡り、自分の無力さに悔しい思いをしたことが忘れられません。

 ワクチン反対派の人が麻疹にかかって辛い思いをしても、それは自分の責任だからかまいません。
 しかし、麻疹患者は他の人にうつす加害者になり得ます
 うつった相手が赤ちゃんだったら、重症化して入院したら、将来SSPEを発症したら・・・悔やみきれません。

■ はしかワクチンが不足 日本脳炎も、患者急増に対応難しく
2016.9.9:産経新聞
 関西国際空港などを中心に感染が拡大しているはしか(麻疹)を予防するワクチンが供給不足に陥っていることが8日、複数の医療機関への取材で分かった。はしかには特効薬がないためワクチンで予防するしかないが、このままだと接種が難しくなる恐れがある。
 関係者によると、不足しているのははしかの予防接種として一般的に使われているMR(麻疹風疹混合)ワクチンと、蚊が媒介する感染症「日本脳炎」を予防する日本脳炎ワクチン。すでに一部の医療機関では在庫不足のため接種が止まったり、接種時期の調整を迫られたりしている。
 宇都宮市の小児科クリニックでは今月に入り、MRワクチンの供給が停止。クリニックの在庫をやりくりするが、「新規の予約を受けるのは難しい状態だ」という。都内の小児科医も「いきなり手に入らなくなって驚いている。はしかが流行してきているので未接種の乳児への接種は優先したいが、このままだと時期が後倒しになるかもしれない」と危機感を募らせる。
 関係者によると、MRワクチンは生産する国内3社のうち1社の製造が止まっており、今年8月ごろから品薄状態に。平成24年から風疹が流行したことを受けて成人のMRワクチン接種に補助を出す自治体が増加したことに加え、今夏のはしか感染拡大で成人の需要も増し、追い打ちをかけたとみられる。
 一方、日本脳炎ワクチンは、乳児が相次いで日本脳炎に感染したことを受け、接種時期を従来の3歳から前倒しする自治体や医療機関が増加。供給が追いつかない状態となっている。
 厚生労働省予防接種室は「現状を注意深くみていく」としている。


 ほほう、厚生労働省は「高みの見物」ですか・・・。
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ジャスティン・ビーバーのコンサートに始まる麻疹流行、続報

2016年09月08日 08時01分38秒 | 小児科診療
 読売新聞に今回の経緯を説明したわかりやすいイラストがありましたので紹介します。
 可能であれば、ワクチン接種歴の有無も明確に記載していただきたいですね。

■ 関西空港はしか拡散...追跡困難、さらに感染連鎖の恐れ
(2016.09.06:読売新聞)
 関西空港で、8月中旬から麻疹の集団感染が広がっている。5日までに関空の従業員32人と、その診察や搬送にあたった医療関係者2人、一般客3人の計37人が発症。今後も拡大が心配されている。国際線だけで1日数万人もの利用客がある〈空の玄関口〉で麻疹の感染はどのように広がったのか。



◇ 7月31日
 「関空を7月31日に利用した誰かから広がったとみるのが有力だ」
 関空を運営する関西エアポート幹部は、関空関係者らが次々と麻疹に感染する「関空ルート」の起点を7月末と推定する。
 根拠は、厚生労働省などによる麻疹感染者の行動調査。国内で8月9〜11日に、麻疹を発症した4人が全員、7月31日に関空にいたことがわかり、麻疹の潜伏期間(10〜12日)から逆算すると、この時期に関空にいた「誰か」から感染したとみられるためだ。
 4人の内訳は1人が関西エアポートのグループ会社の従業員、残り3人は一般客で、麻疹の遺伝子型も同じ「H1」で中国やモンゴルで多い型だった。
 さらに、感染した一般客3人のうちの1人については、兵庫県内の家族4人と、8月に行った千葉市でのコンサート会場にいた2人の発症が確認されており、「関空外」にも感染が広がっている。

◇ 「風邪」と診断
 関西エアポートによると、7月末に感染したとみられる従業員は、国際線でカウンターなどの接客を担当。8月9日に勤務中、発熱し、医療機関では当初、「風邪」と診断された。
 診断後、従業員はいったん休んだが、熱が下がり、同13日に出勤。だが再び発熱して同日、早退し、2日後に体調が悪化して救急搬送され、17日に麻疹と診断された。
 その後、この従業員の同僚らが8月27日以降、次々と発症。大半が20〜30歳代で、ワクチンの定期接種を1回受けるか、受けそびれたとみられる若い世代だ。また関連は不明だが、8月28日に関空対岸の商業施設を利用した30歳代の男性1人も麻疹と診断された。
 関西エアポート幹部は「8月9日の診察時点で『麻疹』と診断できていれば、拡大は防げたかも」と話すが、麻疹の発生件数は全国でも2015年は35件と少なく、同年3月、世界保健機関(WHO)は日本に土着のウイルスがいない「排除状態」と認定。大阪府医療対策課の幹部はこう話す。
 「麻疹は日本ではほぼなくなったとされているうえ、風邪と見分けがつきにくく、医師も気付けなかったのだろう」

◇ 1日最高6万人
 麻疹の集団感染は今夏、関空とは別ルートで千葉県松戸市などでも起きているが、1日に数万人が行き交う「関空ルート」での調査対象の規模は、同市などに比べて、はるかに大きい。
 今夏のお盆の時期は、1日の利用客が国際線で約6万人と1994年の開港以来、最高を記録。厚労省担当者は「利用者の行動を追うのは、至難」と指摘する。
 また、麻疹の潜伏期間を考慮すると、二次感染した関空従業員らから、さらに感染が広がる三次感染の発症時期が9月上旬にあたり、「今後も油断はできない」(関西エアポート幹部)と警戒する。


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麻疹が疑われる患者さんは、事前に医療機関に電話した上で受診してください。

2016年09月06日 06時46分53秒 | 小児科診療
 ジャスティンビーバーのコンサートに麻疹患者が参加、その接触者である関西国際空港の職員が発症(二次感染者)、その患者の診療に当たった医療関係者も発症(三次感染者)と、麻疹感染はじわじわと広がりを見せています。

 麻疹は感染力が非常に強く、“空気感染”します。
 ふつうの風邪はくしゃみ・咳で飛ばしたつばの飛沫を吸い込んだり鼻・喉について感染します(飛沫・接触感染)が、その飛沫から水分が蒸発しフワフワ浮遊する飛沫核を吸い込めば感染してしまう・・・つまり近くにいなくても同じ空間を共有するだけで感染するのが特徴です。

 病院・医院を受診する際、ふつうの受付カウンターへ行くと、待合室の患者さん達に感染が広がるリスクがあります。
 直接受信する前に、電話で「熱が出て麻疹の可能性があるんですが・・・」と問い合わせ指示をもらってください。
 一般に小児科医院は隔離室を用意していますので、そちらから入って他の患者さんと接触しないようにできます。

■ 関空の麻疹アウトブレイク、新たに3人の患者、医師や救急隊員も
(2016/9/5:日経メディカル)
 大阪府は9月4日、関西国際空港で発生した麻疹アウトブレイクで新たに3人の患者が確認されたと発表した。患者の中には救急隊員や医師も含まれ、従業員以外に感染者が確認されたのは初めてとなる。また、関空のアウトブレイクとの関連は不明だが、8月27日に発症した30歳代の男性が翌日、関空の対岸にある商業施設を訪れていたことも明らかになった。
 大阪府によると、関空関連で新たに確認された患者は、関空従業員の20歳代女性と、麻疹患者の搬送・診察を担当した救急隊員と医師(ともに40歳代の男性)だった。これで関空の麻疹アウトブレイクの患者は8月以降、34人となった。
 これとは別に大阪府は、8月27日に麻疹と診断された30歳代男性が翌日、関空対岸にある「りんくうプレミアム・アウトレット」へ出かけていたことも明らかにした。大阪府は、同施設に対して従業員への注意喚起を行うよう求めた。一方、施設を利用していた買い物客らに対しても、麻疹の症状が出た場合には、事前に医療機関に電話したうえで、早期に医療機関を受診するよう呼び掛けている。


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千葉県船橋市の学習塾で結核の集団発生

2016年09月02日 09時37分17秒 | 小児科診療
 麻疹の感染拡大が話題になりそうな気配。
 それとは別に結核の集団発生が報告されました。こちらも侮れません。

 下記記事の感染者/発症者は結核の予防接種であるBCGをふつうに受けているはずです。
 実は、BCGの肺結核予防効果は低く、50%程度とされています。

 ではなぜ赤ちゃんにせっせとBCGを接種し続けるのか?
 その理由は、乳幼児期特有の重症結核(結核性髄膜炎/粟粒結核)予防が目的で、その有効性は80%とされています。

 私が子どもの頃は、小学1年生でツベルクリン反応検査をして、反応が弱い(紅斑が小さい)とBCGを再接種していました。
 しかしその後、上述のように肺結核予防効果が低いことが判明し、省略されて現在に至ります。

 実は現在、日本での結核まん延率が低くなったことを理由に、乳児に対するBCG接種廃止論も登場してます。

 一方で、この記事のような集団感染例はまだ散発しています。
 結核が死亡原因第一位であった戦中・戦後に罹患した人々が感染源になる可能性が指摘されています。
 私個人としては、BCG廃止はあと数十年待った方がよいのでは、と考えています。

■ 学習塾で56人が結核に集団感染 千葉 船橋
2016年8月29日:NHK
千葉県船橋市の学習塾の講師や生徒など56人が結核に集団感染し、このうち15人が発病していたことがわかりました。船橋市ではこれとは別に8人が感染、6人が発病する結核の集団感染が起きていて、保健所は結核と疑われる症状が出た場合には、必ず医療機関を受診するよう呼びかけています。
船橋市保健所によりますと、先月5日、市内の30代の男性がせきなどの症状を訴えて病院で診察を受けたところ、結核と診断されました。
保健所が調査したところ、家族と男性が講師を務める学習塾の同僚や生徒も感染していることがわかり、合わせて56人が感染し、このうち15人が発病していたということです。
またこれとは別に、去年11月に船橋市の60代の男性が結核と診断され、保健所が男性が客として訪れた市内の遊技場の従業員や利用客を調べたところ、男性も含め合わせて8人が結核に感染し、このうち6人が発病していたということです。
発病した人の中には入院中の人もいますが、いずれも快方に向かっているということです。
船橋市保健所は、新たな感染が広がる可能性はほとんどないとしていますが、集団感染が相次いだことから、2週間以上せきが続くなど結核と疑われる症状が出た場合には、必ず医療機関を受診するよう呼びかけています。
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8/14のジャスティン・ビーバーのコンサートを介して麻疹が全国へ拡散か

2016年09月01日 08時44分21秒 | 小児科診療
 関西国際空港での麻疹発生の続報です。
 やはり件名のコンサートと関連しているようです。

■ 関西空港で働く16人はしか感染 コンサート参加男性も
2016年9月1日:朝日新聞
 関西空港を運営する関西エアポートは空港内の誘導や受付などを担うグループ会社の社員ら16人が麻疹(はしか)に感染したと発表した。ほかに21人にはしかの疑いがあるという。

◇ はしか感染者、幕張のコンサートに 国が注意呼びかけ
 関西エアポートによると、20代女性社員が8月18日に医療機関ではしかと診断され、27日以降、同様の症状が広がった。同社は空港内の業務を担う約320社の従業員1万5千人に向け、出勤前の熱の測定などを呼びかけている。利用客からの問い合わせは専用電話(072・455・2288)で受け付けている。
 一方、厚生労働省によると、はしかに感染し、8月14日に千葉市の幕張メッセでのコンサートに参加した兵庫県西宮市の男性も7月下旬に関空を利用していた。感染が確認された関空で働く社員とこの男性のウイルスは同じ型で、厚労省はいずれも関空内で感染したとみている。ほかに7月下旬に関空を利用した近畿在住の4人の感染が確認されているという。


 今後、日本全国で同じような現象が起こることが懸念されます。
 東京都内でも患者が発生しているとの情報があります。
 皆さん、ワクチン接種は済んでいますか?

<参考>
News Up はしか 知っておくべき5つのこと(2016.9.2:NHK)
 ・・・わかりやすい解説です。
コメント
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