テレビのニュースで繰り返し報道されていますが、
第6波はピークアウトしたものの減少曲線の傾きが鈍く、
感染の主役は小児に移行してきたことが明らかです。
この世代の特徴は「ワクチン未接種」であること。
そして「感染しても重症化しにくい」こと。
感染しても重症化しにくいため、
ワクチンを接種するモチベーションが高まらず、
子どもを持つ親は接種すべきか悩みに悩んでいます。
ウイルスがその結論が出るまで待ってくれるはずはなく、
感染拡大は止まりません。
現状のままでは、
3回目接種率がなかなか上がらないこと、
オミクロン株のBA1→ BA2への置き換わりも影響し、
GW頃には第7波の襲来が予測されています。
オミクロン株と小児に関する最近の記事から;
▢ 新型コロナ 新規感染者 半数が10代と20代 3回目接種率低い傾向
先月29日までの1週間に、新型コロナウイルスに新たに感染した人を年代別にみると、10代と20代の若者が全体のおよそ半数を占めていることが、厚生労働省のまとめで分かりました。一方、この世代の3回目ワクチンの接種率はほかの世代より低い傾向が続いていて、専門家は「若者は活動範囲が広く感染しやすい状況なので、入学や就職などに伴う新生活で感染リスクを点検するとともに、ワクチン接種も進めてほしい」と指摘しています。
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増加した人数を年代別にみると、20代が全体の26%にあたる1万1578人で最も多く、次いで10代が23%の9938人と、10代と20代の若者で全体の半数近い49%を占めています。
これに対し、3回目ワクチンの接種率は政府が1日公表した集計では、全人口の41.5%となっています。
接種率を年代別に公表している東京都のデータでは、3月31日の時点で70代や80代以上は80%を超えていますが、20代は23.8%、12歳から19歳は5.8%などと若い年代の接種率が低い傾向が続いています。
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3回目のワクチン接種については「若い世代の接種率は低いが、若者は飲食の機会が多かったり活動範囲が広かったりして特に感染しやすい状況にあるので、接種を進めてほしい」と話しています。
接種率の低さの理由として、
・危機意識が低い(小児・若者は重症化しない)
・強い副反応への不安
などが垣間見えます。
要は、他人のことはさておいて自分中心に考えるか、
身内や周囲の人々、ひいては社会全体のことに思いが及ぶか、
の違いなのでしょう。
では、小児はオミクロン株でも重症化しないのでしょうか。
アメリカでは小児の入院数云々の話が聞こえてきますが・・・
全体として小児の重症化率に変化はなく低いままです。
小児におけるオミクロン株の特徴として、
・発熱率が高くなった。
・それに伴い熱性けいれん合併率も上昇した。
・症状で増えたのは咽頭痛、嘔気/嘔吐。
・重症化の代表である肺炎合併率は低いまま。
・味覚・嗅覚障害の合併はより少なくなった。
などを挙げています。
▢ 小児コロナ症例、重症化傾向に変化はあるのか
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の日本国内の小児例において、臨床症状と重症度の変遷が明らかになった。2020年2月から2021年7月の流行初期に40%ほどに認めた発熱は、オミクロン株流行期に入って80%に増加。また、肺炎の合併頻度は成人に比べて低率で推移し、デルタ株やオミクロン株の流行期でも大きな変動は認められなかった。日本小児科学会が実施しているレジストリ調査の結果で、2022年3月7日に中間報告・第3報として公開された。
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今回公表された中間報告・第3報は、臨床症状と重症度の変化に焦点を当てて解析している。調査対象は、2020年2月1日から2022年2月20日の間に、レジストリに登録された0~15歳の5129例。
解析は、国内における主要な流行株をもとに、
(1)流行初期(2020年2月~2021年7月)
(2)デルタ株流行期 (2021年8月~12月)
(3)オミクロン流行期(2022年1月〜2月20日)
の3期に分類して行った。それぞれの症例数は、流行初期が1830例(55.2%)、デルタ流行期が1241例(24.2%)、オミクロン株流行期が1058例(20.6%)だった。
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オミクロン株流行期に入ってからの特徴は、発熱が倍増し、痙攣が熱性痙攣の好発年齢である1~4歳だけでなく、5~11歳の年長児においても増加している点だ。また、咽頭痛を訴える症例が増え、悪心・嘔吐も特に5~11歳において割合が増えていた。このうち、悪心・嘔吐のために「一部の患者においては補液や入院管理が必要となっていた」ことは懸念される。一方で、味覚・嗅覚障害はほとんど見られておらず、コロナに特徴的な症状が薄れていることには留意すべきだろう。
「小児患者の重症化傾向は確認されなかった」
また、重症度では以下の4点が明らかになった。
(1)入院の割合は、流行初期 79.4%、デルタ株流行期53.4%、オミクロン株流行期28.6%と経時的に減少傾向を認めた。しかし、流行初期は隔離目的、経過観察目的などによる入院が含まれていた可能性が高いことから、「入院率で各流行期における重症度を評価することは困難」と結論している。なお、PICU入院率は、各流行時期で大きな変化を認めていない。
(2)酸素需要、呼吸・循環管理、抗ウイルス薬、抗体療法、ステロイド全身投与などの治療の実施は、デルタ株やオミクロン株などが流行した後も大きな変動は認めなかった。
(3)小児例における肺炎の合併は、流行初期に1.1%、デルタ株流行期に1.6%、オミクロン株流行期に1.3%だった。肺炎の合併は、成人と比較し低率であり、デルタ株やオミクロン株などの変異株流行においても変化は認めなかった。その他の合併症に関しても、デルタ株やオミクロン株などが流行した後も、それぞれの頻度に大きな変動は認めなかった。
(4)合併頻度は高くないものの、重篤な合併症である心筋炎・心外膜炎が、流行初期に0.2%、デルタ株流行期に0.1%に認めた。オミクロン株流行期には、今のところ認めていない。
今回の報告は、対象症例の62.6%が入院例だった。また、レジストリに登録されているのは国内小児コロナ症例の0.5%に過ぎないことから、調査結果をまとめた日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会は「国内においてはレジストリに登録されていない軽症外来患者が多数存在する」と推定。「レジストリには比較的重症度が高い症例が登録されている可能性が想定される」としている。
その上で同委員会は、比較的重症度が高い症例が登録されているレジストリにもかかわらず、「オミクロン株を含む変異株の流行による小児患者の重症化傾向は確認されなかった」と結論付けている。
アメリカからの情報もひとつあげておきます。
オミクロン株になってから小児の入院数が急増し、
小児科医の間で話題になっている「クループ症候群」の合併が問題視されています。
※ クループ症候群とは;
のどの奥の声帯がある辺りの炎症が強く、
赤く腫れ上がると声帯を変形させて声がかすれ、
犬が吠えるような(犬吠様)、オットセイのような、
のどの奥深くから出てくるような咳になる病態。
炎症によるむくみがひどければ呼吸困難に陥りますが、
ふつうの風邪では滅多にそこまで悪化しません。
春と秋にパラインフルエンザ・ウイルスによる発症が有名です。
ところがオミクロン株で5歳未満のワクチン未接種世代で発症すると、
重症化しやすく入院率が他のウイルスが原因の場合より高いと報告されています。
声帯より奥の下気道である肺炎の合併率は低いけど、
上気道が狙われているのですね。
その重症化率の高さを見ると、
やはり新型コロナウイルスはただ者ではないことがわかります。
▢ 乳幼児のオミクロン株感染、「クループ症候群」重症化の要因か 米研究
これまで子どもたちの大半は、新型コロナウイルス(SARS-CoV2)に感染しても軽症で済むとされてきた。だが、変異株のオミクロン株が流行の主流になったことにより、ここ数カ月は子どもの入院者数が急増しているという。
米疾病対策センター(CDC)のデータによると、米国ではオミクロン株の前に優勢となっていたデルタ株が中心だったころと比べ、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)で入院する0~4歳の子どもの数が、およそ5倍にのぼっている。
そうしたなか、ボストン小児病院の研究者らが新たに発表した論文から、Covid-19にかかった子どもたちには、「クループ症候群」と診断される例が多くなっていたことが明らかになった。
クループ症候群は乳幼児に多い疾患で、犬の鳴き声のような咳(犬吠様咳嗽)と高音の雑音が混じる呼吸(吸気性喘鳴)が特徴だ。原因は呼吸器系ウイルスへの感染で、咽頭や気管、そして肺につながる気管支の周囲に腫れが生じる。
一般的には、クループ症候群は軽症で済むことが多く、Covid-19のパンデミック発生前には、入院が必要となる小児の患者は5%未満とされていた。
だが、新たに発表された研究結果によれば、Covid-19にかかった後にクループ症候群を発症した乳幼児の場合は、12%に入院治療が必要となっていた。さらに、その半数近くには集中治療室(ICU)での治療が必要だった。これらの子どもたちは全員が5歳未満で、SARS-CoV2のワクチン接種は受けていなかった。
研究チームがこの調査の対象期間としたのは、2020年3月~2022年1月だが、クループ症候群の患者のうち8割が、オミクロン株が主流になって以降に確認されていた。
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SARS-CoV2に感染し、その後クループ症候群を発症した子どもたちは、ほぼ全員がステロイド系抗炎症薬「デキサメタゾン」による治療を受けていた。
また、クループ症候群の治療にはパンデミック発生前から、デキサメタゾンが一般的に使用されていた。Covid-19にかかり、その後クループ症候群を発症した子どもにはさらにエピネフリンも投与され、治療後は全員が回復し、退院している。