徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

インフルエンザ脳症、再襲来!

2025年01月15日 14時59分03秒 | 小児科診療
新型コロナ禍以降、最大級のインフルエンザ流行が猛威を振るっています。
それに伴い、子どものインフルエンザ脳症発生がニュースで流れるようになりました。
紹介する記事でも、地域基幹病院の小児科医師が、
脳炎・脳症の患者がこれほど多いシーズンは経験したことがない
とコメントしています。

診療経験のある私にとって、
「アッという間に命をさらわれる」
という印象の合併症です。
発熱後、1日のうちに進行して意識障害・けいれんが出てきます。
タミフルなどの抗インフルエンザ薬は間に合わないのです。

罹ってからではもう遅い、有効なのはワクチンだけです。

以前にも書きましたが、1990年代後半に多発した頃と今の状況が似ています。
その当時、インフルエンザ脳症を発症すると、
・3割は死亡
・3割は後遺症
・3割は助かる
とされていました。

あれから四半世紀が経過して医療が進み、
現在では死亡率1割未満、後遺症3割未満と改善していますが、
やはり恐い合併症です。


▢ インフル感染原因で子供らに「急性脳症」発症相次ぐ  幼児死亡例や重い後遺症  脳炎も注意
2025/1/11:産経新聞)より一部抜粋(下線は私が引きました);

全国で猛威をふるっている季節性インフルエンザだが、医療現場では感染が原因で「インフルエンザ脳症」などを発症する子供らが相次ぐ。・・・熱が下がった後も意味不明な言動が続くなど症状が悪化するケースもあるとされ、医師らは、迷わず医療機関を受診するよう促している。 

【ひと目でわかる】インフルエンザ脳症を疑って受診する目安 

 

静岡県静岡市の県立こども病院では、インフルエンザの流行に伴い、昨年12月中旬から、発熱してけいれんや意識障害での救急搬送が増加している。小児救急輪番日では一晩で4~5人が運ばれてくるとし、インフルエンザ脳症の症状の有無を慎重に評価する。 

▶ 基礎疾患なく
 小児感染症科の荘司貴代医長によると、運ばれてくる多くは短時間でけいれんが止まる「熱性けいれん」。だが、けいれん後に意識が戻らない、もしくはけいれんが続いて呼吸状態も不安定になる場合は中枢神経合併症を疑われ、緊急で処置が始まる。先月中旬から今月6日までに乳幼児3人がインフルエンザ脳症と診断され、うち幼児1人が死亡した。 幼児は生来健康で、ワクチンは未接種での初感染だった。ウイルスから体を守ろうと、免疫が過剰反応し、脳が急激にむくみ血液循環の悪化で脳の一部が壊死する「急性壊死性脳症」だった。インフルエンザ脳症の中でも重症で死亡率が高く、後遺症が出ることが多いという。 
 国立感染症研究所のまとめによると、昨シーズン(令和5~6年)のインフルエンザ脳症の患者数は189人(昨年10月8日まで)で、少なくとも8人が死亡。元~2年は患者が258人、死亡が16人だった。 荘司氏はインフルエンザで療養中に受診する目安として、
・けいれん
・意味不明な言動
・異様に興奮している
―といった神経症状などを挙げ、「インフルエンザでは高熱でうわごとを言う熱せん妄が出やすいが、解熱剤を使っても持続する場合は迷わず受診してほしい」とする。
 
▶ 通常診療に影響
 治療の緊急度が高いインフルエンザ脳症患者が急増している影響で、小児集中治療室(PICU)で神経機能を検査する脳 波計などの検査機器が占有され、通常の予定されている診療が難しくなってきているという。
 加えて、感染症の治癒過程でウイルスに免疫が過剰に反応するなどし、中枢神経に炎症が起きて歩行障害などが出る「急性散在性脳脊髄炎」などの脳炎の患者も多く、荘司氏は「脳炎・脳症の患者がこれほど多いシーズンは経験したことがない。機器もマンパワーも足りていない」と訴える。
 さらに、総合診療科の入院患者の半数がインフルエンザによる肺炎や喘息(ぜんそく)などの症状で、家庭内感染が目立ち、ほぼ全員がワクチン未接種だという。荘司氏は「多くの患者が入院しているが、ワクチンを接種した方の重症化はまれだ。チャンスがあればワクチンを打ってほしい」と話した。



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