第3問 世界史上の経済政策について述べた次の文章A~Cを読み、下の問い(問1~9)に答えよ。(配点 25)
A 漢では、当初、郡県制と封建制を併用する郡国制が施行され、封建された諸侯王は領域内の政治や経済に大きな権限を持った。
漢は徐々に諸侯王の権力を削減する政策を採ったが、それに対して、領域内で銅山開発や海塩生産を行い大きな経済力を持っていた呉王が中心となって反乱を起こした。
この反乱は結局平定され、その後は、郡県制と変わらない中央集権体制が確立された。1)前2世紀後半になると、対外積極政策を採る武帝は、北アジアの匈奴を攻撃し、西域に勢力を拡大し、また朝鮮半島北部や2)ヴェトナム北部にまで進出した。
しかしながら、度重なる戦争は財政を圧迫したため、3)新たな経済政策を打ち出して難局を乗り切ろうとしたがうまくいかなかった。
問1 下線部1)の時期に起こった出来事について述べた文として正しいものを、次の1)~4)のうちから一つ選べ。[19]
1) 張騫が、大月氏に派遣された。
2) 仏図澄が、仏教の布教に活躍した。
3) 耶律大石が、西遼(カラ=キタイ)を建てた。
4) 班超が、西域都護となった。。
問1 「前2世紀後半」とは前150年から前101年までの時期を指します。この時期に在位していた皇帝は景帝(位前157~前141)と武帝(位前141~前87)です。下の問3でも指摘しているように武帝時代といっていい時期です。1)が正解。
2)仏図澄は五胡十六国時代に布教にきた僧侶です。
3)カラ=キタイは、遼(契丹)が宋金に挟み撃ちされて滅び、逃げてきた契丹人がつくった12世紀の王朝です。
4)班超は和帝(後漢の4代皇帝)より西域都護に任ぜられました。この都護府の置かれた都市の亀茲(クチャ)は仏図澄や鳩摩羅什の出身地です。
問2 下線部2)の地域に建国され交易で栄えた国の名として正しいものを、次の1)~4)のうちから一つ選べ。[20]
1) マタラム
2) チャンパー(林邑)
3) パルティア
4) カルタゴ
問2 「ヴェトナム」でこの頃「交易で栄えた国」のは中部・南部を支配した2)林邑です。この林邑より1世紀前にヴェトナム南端からカンボジア南部にかけて交易で栄えた扶南(プーナン)がありました。チャンパーの方は唐代に環王、宋代に占城と呼ばれます。これが正解。
1)マタラム王国はジャワ島東部のイスラム教国です。
3)パルティアは前250~後226までつづいたイランの王朝です。
4)カルタゴはフェニキア人建設の都市でチュニジアです(前9世紀)。
問3 下線部3)に関連して漢の武帝の時代の経済政策について述べた文として正しいものを、次の1)~4))のうちから一つ選べ。[21]
1) 中小商人への低利の貸付である市易法を施行した。
2) 土地政策として均田制を施行した。
3) 物価対策などのために均輸・平準法を施行した。
4) 貨幣を半両銭に統一した
問3 3)が正解。物価対策は名目で、安いところで買って高いところに売るのが均輸法、安いときに買い占めて高くなってから売りに出すのが平準法です。政府が商売をしてます。
1)宋の王安石による新法です。
2)これは北魏に始まり唐・両税法の転換までつづいたもの。
4)これは始皇帝の貨幣。武帝は? 五銖銭(「始皇帝は半両銭、武帝は五銖銭(ぶ・ご、と濁点)」)。
B 16世紀は、銀が大量に流通し、東アジアとヨーロッパが銀を介して結びついていった時代である。
16世紀前半、まず東アジアにおける銀の流通に大きく作用したのは、日本の石見銀山などで産出された銀であった。
この銀の動きには、インド洋を経由して東アジアに到達した4)ポルトガルが大きくかかわっていた。
16世紀後半になると5)アメリカ大陸で産出された銀が中国に流入し始める。すなわち、スペインがアメリカ大陸の銀を、太平洋を経由してフィリピンの交易拠点にもたらし、これが中国へ流入していったのである。
このような銀の流れは、中国やヨーロッパ諸国の6)経済政策に大きな影響を与えた。
問4 下線部4)の国が交易の拠点とした都市の名とその位置を示す次の地図中の a または b との組合せとして最も適当なものを、下の1)~4)のうちから一つ選べ。[22]
1) バタヴィア ─ a
2) バタヴィア ─ b
3) マカオ ─ a
4) マカオ ─ b
[解答] 3
問4 ポルトガルの「交易の拠点」なので a マカオなのですが、マカオの位置を確認したことがないと混乱するかも知れません。香港の西隣の島ですよ。
問5 下線部5)に関連して、16世紀にアメリカ大陸で大量の銀を産出した鉱山の名として正しいものを、次の1)~4)のうちから一つ選べ。[23]
1) クスコ
2) ポトシ
3) アンボイナ(アンボン)
4) ゴア
問5 2)が正解。標高3900mにある都市でもあり、日本の富士山より高い位置にあります。
1)これはインカ帝国の都。標高3500mにあるので、富士山に近い高さの都市。
3)香料諸島の一つで、英蘭の衝突があった島。
4)ポルトガルが占領した港市。インド西海岸にあります。
▼ゴア(赤いところ)
問6 下線部6)に関連して、中国の税制のうち次の a ~ c が、導入された時期の古いものから順に正しく配列されているものを、下の1)~6)のうちから一つ選べ。[24]
a 地丁銀制
b 両税法
c 一条鞭法
1) a → b → c
2) a → c → b
3) b → a → c
4) b → c → a
5) c → a → b
6) c → b → a
[正解] 4
問6 a 地丁銀は清朝・康熙帝が始め雍正帝のときに普及したもの。
b 両税法は均田法の崩壊を告げる唐中期の税制でした。
c 明末の税制。 1581年 〈一条鞭法の施行を全国に命じる〉★
この中に欠けている税制は両税法の前の租庸調です。これは均田法とともに出てくるもの。正解は4)。
C ヨーロッパでは19世紀半ばまでに、イギリスを中心とする自由貿易体制が確立されるとともに、自由放任主義が各国に浸透した。だが、1870年代に発生した「大不況」の結果、各国で7)保護関税政策が台頭し、自由貿易体制は崩れた。
また、ドイツで8)ビスマルクが世界に先駆けて制度化した一連の社会保険は、それまで自助原則にゆだねられていたライフサイクル上の様々なリスクを軽減させた一方で、人々の生活に対する国家の介入を招いた。
そして、このような国家的介入は、9)第一次世界大戦中の総力戦体制によって本 格的に展開することとなる。
問7 下線部7)に関連して、世界史上の関税について述べた次の文 a と b の正誤の組合せとして正しいものを、下の1)~4)のうちから一つ選べ。[25]
a 清は黄埔条約によって、イギリスに対する関税自主権を失った。
b イギリスは穀物法によって、輸入穀物に対する関税を撤廃した。
1) a ─ 正 b ─ 正
2) a ─ 正 b ─ 誤
3) a ─ 誤 b ─ 正
4) a ─ 誤 b ─ 誤
問7 a 黄埔(こうほ)条約は清朝とフランスの条約。アメリカとは望厦(ぼうか)条約。
不幸なアホう。
フランス黄埔条約
アメリカ 望厦条約
b これも誤文。「撤廃」でなく施行したのです。
この法ができた時期を考えたら容易。ナポレオン戦争が終わって戦争中に高騰した穀物価格が下がることになり、戦争中に大儲けした地主たちと農業資本家たちは、安い輸入穀物が入ってくると不利益になるので、輸入穀物に高い関税をかけて、戦争中と同じ価格で穀物を売ろうとした法です。高価格維持法です。ともに誤文なので、正解は4)。
問8 下線部8)の人物(ビスマルク)の事績について述べた文として正しいものを、次の1)~4)のうちから一つ選べ。[26]
1) ロシアと再保障条約を結んだ。
2) フランクフルト国民議会を開いた。
3) ユダヤ人に対する文化闘争を展開させた。
4) 積極的な海外進出を目指す「世界政策」を打ち出した。
問8 1)が正解。「再」保障条約は「二重」保障条約ともいい、バルカン半島で対立するロシアとオーストリアの双方に秘密の条約を結ぶことで、背後ロシアと南オーストリアとの対立を避け、西のフランス孤立化を実現するためです(1887、年)。ビスマルクが辞めさせられて、皇帝ヴィルヘルム2世が4)世界政策を推進するために邪魔と考えて3年期限のこの条約を破棄した(1890)ことが、ロシアとフランスが結ばれる(露仏同盟)原因となり、ドイツ孤立化に転換する。
2)これは三月革命(1848)を受けて開かれたドイツ統一をめぐる話し合いでしたが、この時期はビスマルクはまだ登場していません。かれの首相任期期間も注目しましょう。1862-1890年。
3)「ユダヤ人」がまちがい。カトリック(旧)教徒に対して、旧教徒の集まる中央党に対して、なら正しい。
問9 下線部9)の時期(第一次世界大戦中)に起こった出来事について述べた文として正しいものを、次の1)~4)のうちから一つ選べ。[27]
1) フランスで「平和に関する布告」が出された。
2) ドイツ領南洋諸島が、日本によって占領された。
3) イタリアのキール軍港で、水兵が反乱を起こした。
4) 中国で、共産党が結成された。
問9 1)「フランス」でなく「ソビエト・ロシア/レーニン」。
2)これが正解。これが正解か自信がないひとも、日本が占領後、ドイツ領だった太平洋の島々を戦後に委任統治領としてもらい受けることを知っていたら推理できたはず。
現在のマリアナ諸島・パラオ・マーシャル諸島・ミクロネシア連邦などの地域。
2001年のセンターで次のような問題が出ています。以下。
問1 下線部1)(いわゆる南洋諸島での委任統治や満洲(州)国)に関連して、第一次世界大戦後、日本が委任統治を行った西太平洋上の諸島の名として誤っているものを、次の1)~4)のうちから一つ選べ。 [12]
1) マリアナ諸島 2) フィリピン諸島 3) カロリン諸島 4) マーシャル諸島 (正解はアメリカ領の2))
3)「イタリア」でなく「ドイツ」です。キールの位置を地図上で指させますか? リューベック市のすぐ北です。
4)共産党の結成は戦中でなく、戦後の1921年です。
年代がキッチリ浮かばない場合は前後を思い出し、戦中にロシア革命がおき、戦後コミンテルンができてから各国の共産党が結成されていく、また五・四運動を見て孫文は中国国民党(1919)をつくり、陳独秀が共産党をつくる、という流れでもいい。
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