【現代思想とジャーナリスト精神】

価値判断の基軸は自らが判断し思考し実践することの主体であるか否かであると考えております。

日本人が「イスラム国」の人質となった事件について

2015-01-21 16:57:07 | 言論対話原稿所収
日本人が「イスラム国」の人質となった事件について
櫻井智志

 私は腰痛でパソコンをひらけずにいたきのう一日、考えていた。きょうパソコンをひらき二つの情報が印象的だった。
1山下芳生氏ツイッター
2日刊ゲンダイweb「日本人拘束 安倍首相のバラマキ中東歴訪が招いた最悪事態」

1【山下芳生氏ツイッター】
山下芳生 (写真右)
@jcpyamashita

「イスラム国」を名乗る集団が日本人2人を人質に2億ドルの身代金を要求したと報じられている件について、メディアから問われて次のようにコメントしました。「テロ集団による卑劣な行為は絶対に許されない。政府として、情報の収集、事件解決のためのあらゆる努力をおこなうことを求める」

【感想】日本政府の姿勢としてどう対応すべきか明快な姿勢を貫くことを求めている。しかし、次の日刊ゲンダイの記事はもう少し掘り下げて考えていて大いに参考となった。

2【日刊ゲンダイ政治・社会面フォロワーズ】

日本人拘束 安倍首相のバラマキ中東歴訪が招いた最悪事態

2015年1月21日

 衝撃的な事態だ。日本人2人が「イスラム国」に人質として捕まり、72時間以内の殺害を予告された。
 イラクとシリアの北部一帯を支配し、残虐の限りを尽くしているイスラム国は、これまで人質に取った白人を容赦なく殺しているだけに、殺害予告は脅しじゃない。
 人質は湯川遥菜さん(42)と、フリージャーナリストの後藤健二さん(47)とみられている。イスラム国はビデオ声明で、72時間以内に2人の身代金2億ドル(約235億円)を払うように要求している。

 イスラム国が20日に流したビデオ声明は、「日本政府と国民へのメッセージ」というタイトルで、1分40秒ほどのもの。〈日本の首相へ。日本はイスラム国から8500キロも離れていながら、自発的に十字軍に参加した〉〈日本国民に告ぐ。おまえたちの政府は、イスラム国と戦うのに2億ドル支払うという愚かな決定をした。日本人の命を救うのに2億ドル支払うという賢明な判断をするよう政府に迫る時間が72時間ある〉とナイフ片手に英語で凄んでいる。
 ビデオ声明でも分かるように、今回の人質事件、安倍首相の「中東外交」が引き金になったのは明らかだ。
 16日から中東4カ国を訪問している安倍首相は、17日にカイロで行った演説で、「イスラム国の脅威を食い止めるために2億ドルを支援する」とブチ上げた。この演説がイスラム国の怒りに火をつけたのは間違いない。湯川さんは昨年8月、後藤さんは昨年10月にイスラム国に拘束された可能性が高いが、これまで殺害を予告されることはなかった。

元レバノン大使の天木直人氏がこう言う。
「イスラム国が、安倍首相の中東訪問のタイミングを狙っていたのは間違いないでしょう。しかも、首相は、イスラム国と戦うために2億ドルを支援すると表明した。彼らにとっては、飛んで火に入る夏の虫です。イスラム国は、ネットを駆使して世界中の情報を手にしている。恐らく、安倍首相が何を語るか、じっくり観察していたはず。深刻なのは、彼らは、日本の中東政策を問題にしていることです。日本は文字通り、イスラム国との戦争に巻き込まれてしまった」

 安倍首相は真っ青な顔をして「2億ドルは避難民への支援だ」と釈明していたが、もはや「イスラム国」に言い訳は通用しない。

■カネをバラまいただけの中東歴訪

 そもそも、安倍首相は、このタイミングで中東4カ国を訪問する必要があったのか。
 ちょっと考えれば、いま中東にノコノコと出掛けて、「イスラム国がもたらす脅威を食い止める」と2億ドルのカネを出すと表明すれば、イスラム国を刺激することは容易に想像がついたはずだ。

「地球儀を俯瞰する外交」を掲げる安倍首相は、これまで50カ国以上を訪問し、毎月、外遊すると心に決めているらしいが、中東に行く緊急性はまったくなかったはずである。

 実際、16日から20日まで駆け足でエジプト、ヨルダン、イスラエル、パレスチナを訪ねているが、中身のある外交はゼロだった。エジプトに430億円、ヨルダンに147億円……と、ひたすらカネを配っていただけだ。総額2900億円である。浮かれてカネをバラまき、その結果、人質事件を引き起こしているのだから、どうしようもない。

「安倍首相は中東歴訪を中止すべきでした。いま、中東諸国は“イスラム国”を相手に必死の戦いをしている。フランスではシャルリー紙に対してテロが起きたばかりです。各国の首脳は正直、安倍首相をゆっくりもてなす状況ではなかったと思う。そもそも、安倍首相は、どこまで中東外交を理解しているのか。今回、ゼネコン、銀行、商社など46社の首脳をズラズラと引き連れていったのが象徴です。トップセールスといえば聞こえはいいが、結局、安倍外交はカネ、カネ、カネ。日本人2人の人質事件は、カネにものをいわせる安倍外交の虚を突かれた格好です」(天木直人氏=前出)

 中東4カ国歴訪は、安倍首相が「どこでもいいから外遊に行きたい」と外務省をせっついて組んだ日程なのだろうが、人質事件を引き起こした責任をどう取るつもりなのか。

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【私見】
 政府の対応としては山下芳生氏の対応がふさわしいと思う。しかし、なぜこのような事態が生まれたのか、天木直人氏が発言されていることには、深い洞察が感じられる。
 安倍総理は、むやみに海外にカネをばらまく遊説外交を見直すべきだ。日本国民が福島原発下の県民をはじめ、すさまじい窮状に
おかれていることを考えると、ばらまく金をまず日本国内の内政に、しかも日本国行政から切り捨てられようとしている人々に手厚い行政に使うべきだ。

 そうとう国内で弾圧を強いられている国民ばかりか、海外のひとびとも戦後70年、憲法九条のもとに戦争と武器使用に歯止めをかけて平和をめざしてきたことに敬意を払ってきた。それが安倍総理の政治姿勢でがらがらと崩壊しつつあることが、今回の事件の背景にある。

 今後具体策として、総理がもう少し見通しと洞察をもって外交にも取り組むべきだ。事件には情報を集め慎重な見通しで対応を進めていくべきだ。福田赳夫総理の時にダッカ事件が起きた。ハイジャック犯人は刑務所に入れられているメンバーの釈放を要求した。福田総理は、「超法規的措置」として犯人に収容されていたメンバーを渡した。
 いまでも「超法規的措置」への批判は強くある。しかし、具体的に発生した問題に対応した福田赳夫政権の対応は、足元をささえる腰がすわっていた。言うことがコロコロ変わるような総理には、統治能力があるかどうか疑わしい。下手な対応をすると、安倍総理は首相の座を失うことさえある。首相と自公政権の真価が問われている。さらに安易に「イスラム国」に参加したいとか取材したいとか、物見遊山のような日本国民の国際感覚のうすっぺらさも嘆かわしい。