櫻井智志
亡くなった芝田進午氏らは、国立感染症研究所が住宅密集地の新宿区戸山に感染研を強行移転し、実験を行うことに厖大な危険性が潜むことをあきらかにして反対してきた。2015年8月3日の新聞は、国立感染研の東京都武蔵村山市にある庁舎でエボラ出血熱などを扱う施設稼働を厚労相と市長とが合意
したことを伝えた。
芝田進午氏らの運動を継承した「国立感染研の安全性を考える会」は、日本国内にP4レベルに該当する危険な細菌を研究のためであっても国内に持ちことの重大な危険性を指摘し反対してきた。『バイオセーフティ 国立感染症研究所と住民との対話』1、Ⅱ(桐書房)でも最新の研究成果により、そのことを世に問うている。
国立感染研の戦前の石井七三一部隊の生体実験という忌まわしいルーツを、人脈的に継承している感染研でのP4施設はなぜ反対されているのか。それは今までも感染研内部での実験が外部に漏れ出ている危険な事実があきらかにされてきた。
現在の民衆側の研究見解については、2015年6月20日の新宿区箪笥会館ホールで開催された2015年平和のためのコンサート第1部の記念講演での荒井秀雄元感染研主任研究官の講演「バイオ時代の感染症」が的確である。バイオ研究が一切研究に不適切で周囲の住民と住民を取り巻く生活環境の内部で行われると取り返しのつかない結果にいたる危険がある。世界各国の開かれた研究成果共有と、致命的な致死被害の危険性の高いP4施設そのものを今までにない国家は、研究のためでも建築しないこと。この2点が現段階での最善の対応策と新井氏は述べられた。
つまり研究成果の競争のようなものでは、このバイオハザード(生物災害)は取り返しのつかない現状にある。
短いスペースでは問題の本質を丁寧には説明しがたいが、世界のP4レベルの施設と生物災害との間には、決定的に危険な要素があることを知っていただきたい。
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以下『資料・東京新聞転載』
国立感染研村山庁舎、レベル4稼働へ エボラなど扱い可能に
2015年8月3日 夕刊
塩崎恭久厚生労働相は三日、東京都武蔵村山市で藤野勝市長と会談し、国立感染症研究所村山庁舎(同市)にある、エボラ出血熱など最も危険度が高い感染症の病原体を扱える「バイオセーフティーレベル(BSL)4」施設を稼働させることで合意した。これを受け、厚労省は近くレベル4の指定を行う見通しで、国内での指定は初めて。
施設は一九八一年に建てられたが、病原体の漏えいなど安全性を心配する地元住民の反対などで危険度が一つ低いレベル3施設として使ってきた。市内の自治会は今年四月にも、市長にレベル4施設の稼働を認めないよう要望を出しており、地元には不安感が依然、残っている。
西アフリカでのエボラ熱感染者の拡大などを受け、塩崎氏が昨年十一月、市に稼働に向けた協議を要請。厚労省は同十二月に地元関係者などとの協議会を設け、施設見学会などを行うなどして、地元の理解を求めてきた。
会談で両者は、レベル4施設の使用は、感染者の診断や治療などに必要な業務に特化することや、外部有識者が施設運営をチェックすること、将来的に移転を視野に検討することなど四項目を確認。市は従来稼働に反対だったが、これらを前提に、藤野市長が稼働を容認した。
重い感染症の病原体を扱う施設は四段階に分類される。レベル4施設は、エボラ熱やラッサ熱など特に致死率が高く、有効な治療法がない六つの感染症が対象。多重壁や高性能フィルターなどを備える。感染研によると、世界では十九カ国・地域の四十カ所以上が整備されている。
レベル3施設として稼働する感染研では、エボラ熱などの診断は可能だが、ウイルスを取り出して詳しく調べたり、それを用いて治療薬の研究開発をしたりすることはできない。このため、厚労省は「国内でもレベル4施設が不可欠」と地元に理解を求めてきた。
会談後、塩崎氏は「市民の不安の声にも考慮しなくてはならない立場から、市長に大変難しい判断を頂いた」とコメント。藤野市長は「市としてあらためて安全対策に万全を期してほしいと要望した」と語った。
<レベル4施設> 各国は、ウイルスや細菌など病原体の危険性に応じ実験施設に求める安全上の厳重さを最も低いレベル1から最も高い4まで分類している。国内では、致死率が高く特に危険な感染症を引き起こす六つの病原体がレベル4に分類される。これらの病原体は感染症法で所持が禁じられているが、厚労相が指定した施設は、所持などの禁止が解除される。国内ではレベル4施設は理化学研究所(茨城県)にあるが稼働していない。長崎大で全国の大学と研究機関が共同で運営する施設の整備構想が進められている。
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