孫崎享氏の論評にまなぶ
櫻井智志
孫崎享のつぶやき
集団的自衛権と自衛隊:集団的自衛権推進が主流。危機感を持つ隊員も存在。多分後者が内部文書共産党に提供。
2015-08-15 10:303
集団的自衛権の本質は、「米軍の戦略のために自衛隊を使用する」ことにある。
これを実現するには次の手段がある。
憲法を改正して、国民の納得をえた上で実施する、
憲法の改正は国民の反対があるので、それを行わずに、国内法を制定し、対処する。
その際には国会の多数を占めていれば実施できる。
法律も制定せずに、自衛隊と米軍の協力を強化し、事実を先行させていく。
安倍首相の登場前までは、基本は②と③で対処するというものであった。
これに憲法を自分の手で改正したいという安倍首相の政治家としての個人的野心があったので、国民もその危険を次第次第に理解してきたという流れである。
この中で、では自衛隊の制服組はどのように対応しようとしたか。
自衛隊の制服組の海、空は創設以降、米国と一体に対処する流れが主流であった。
しかし、現実的に、外国軍が日本本土を攻めるというシナリオはほとんど存在せず、陸上での日米軍の協力の必要度合いは低く、陸上自衛隊は米軍の影響をさほど受けずに存続できた。
しかし、米国の要請は強く、イラク戦争での自衛隊の海外派兵を契機に、自衛隊の陸上部隊の中に米国との協力を強く主張するグループが台頭してきた。これに属するのが、第1次イラク復興支援群長である番匠幸一郎や現国会議員佐藤正久である。
しかし、現実に米軍の作戦で自衛隊を派遣するとなると、確実に死者が出る。
特に近年、道路脇に爆弾を仕掛けることで、戦場での死者よりも後方支援での死者の方が多くなるという実態を前に、制服内にこれでいいのかという懸念が急増してきた。
勢力的に言えば、「 ③ 法律も制定せずに、自衛隊と米軍の協力を強化し、事実を先行させていく」は、番匠幸一郎の例でみられるように主流になっている。
こうした中で、自衛隊関係で2つの重要な事態が発生した。
A:自衛隊内で「8月中の戦争法案成立・来年2月施行」を前提に、法案の実施計画が立てられていた―。
防衛省統合幕僚監部の内部文書「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)及び平和安全法制関連法案について」(防衛省統合幕僚監部の内部文書PDF)で、国会・国民無視の計画が初めて明らかに。
文書は、今国会に戦争法案が提出された5月末時点で作成。
「今後の進め方」とする日程表では、法案成立を前提に、最も早いパターンで「8月法案成立」、それから「6カ月以内の施行」開始として来年2月に施行を明記
また、7日に部隊派遣延長が閣議決定されたばかりの南スーダンPKO(国連平和維持活動)について、来年3月から「駆けつけ警護」を認めるなど、戦争法案を反映させる日程が具体的に。
中谷氏は「ご提示していただいている資料がいかなるものかは承知をしていない」と、文書の真偽について答弁を避けた。
B:沖縄県うるま市で訓練中の米軍ヘリコプターが米艦船への着艦に失敗した墜落事故で、負傷した陸上自衛官二人は、陸上自衛隊の特殊部隊員で、米軍特殊部隊の訓練中の事故に巻き込まれた。
今回の訓練は、米陸軍トリイ通信施設(沖縄県読谷村)の特殊部隊「グリーン・ベレー」などが行った。武装勢力に乗っ取られた船にヘリで近づき、特殊部隊員がロープなどで降下、船を制圧するとの想定だった。ヘリは低空飛行中に船の甲板上のクレーンなどに接触して墜落したとみられる。
ヘリに同乗し、負傷した二人は、陸自の「特殊作戦群(特戦群)」に所属。防衛省は「研修の一環として搭乗していた」と説明しているが、実際には訓練に参加していたのではないかと考える関係者も多い。
二人は、ほか八人の特戦群隊員とともに今月一~十五日の日程で「研修」に参加していた。この「研修」は二〇〇九年度から毎年、米陸軍が実施している。
特戦群はテロ・ゲリラ対処などを想定した部隊として〇四年に発足。〇七年には防衛相直轄の中央即応集団の傘下部隊となった。隊員のほとんどが空挺(くうてい)(パラシュート降下)とレンジャーの資格を保有している精鋭部隊だ。
特戦群はグリーン・ベレーなどに教育訓練を受けて部隊の練度を向上させた。その後も共同訓練を継続して連携強化を図っているとされる。
ある防衛省関係者は「米軍との訓練は各部隊レベルでは日常的にやっている」と話す。しかし「特殊部隊同士の訓練になると詳しいことは、身内でさえまったく分からないのが実情だ」と言葉を濁した(東京新聞)。
AとBとの事例は法律と無関係に訓練を行い、既成事実化していこうという流れである。
防衛省統合幕僚監部の内部文書「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)及び平和安全法制関連法案について」(防衛省統合幕僚監部の内部文書PDF)は共産党の小池議員によって暴露されたが、危機感をもった自衛隊員が情報提供した可能性が高い。
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私見
日本共産党小池晃議員に渡った内部文書は、自衛隊内にスパイが潜伏していたわけではない。自衛隊員自身が、安倍政権の軍事戦略の危険性に危惧して情報提供したと考えるのが、孫崎氏の見解である。軍事専門家の自衛隊員自身が危惧するような無鉄砲な作戦に、日本を乗ぜられるようでは、安保法制の危険性があらわである。
櫻井智志
孫崎享のつぶやき
集団的自衛権と自衛隊:集団的自衛権推進が主流。危機感を持つ隊員も存在。多分後者が内部文書共産党に提供。
2015-08-15 10:303
集団的自衛権の本質は、「米軍の戦略のために自衛隊を使用する」ことにある。
これを実現するには次の手段がある。
憲法を改正して、国民の納得をえた上で実施する、
憲法の改正は国民の反対があるので、それを行わずに、国内法を制定し、対処する。
その際には国会の多数を占めていれば実施できる。
法律も制定せずに、自衛隊と米軍の協力を強化し、事実を先行させていく。
安倍首相の登場前までは、基本は②と③で対処するというものであった。
これに憲法を自分の手で改正したいという安倍首相の政治家としての個人的野心があったので、国民もその危険を次第次第に理解してきたという流れである。
この中で、では自衛隊の制服組はどのように対応しようとしたか。
自衛隊の制服組の海、空は創設以降、米国と一体に対処する流れが主流であった。
しかし、現実的に、外国軍が日本本土を攻めるというシナリオはほとんど存在せず、陸上での日米軍の協力の必要度合いは低く、陸上自衛隊は米軍の影響をさほど受けずに存続できた。
しかし、米国の要請は強く、イラク戦争での自衛隊の海外派兵を契機に、自衛隊の陸上部隊の中に米国との協力を強く主張するグループが台頭してきた。これに属するのが、第1次イラク復興支援群長である番匠幸一郎や現国会議員佐藤正久である。
しかし、現実に米軍の作戦で自衛隊を派遣するとなると、確実に死者が出る。
特に近年、道路脇に爆弾を仕掛けることで、戦場での死者よりも後方支援での死者の方が多くなるという実態を前に、制服内にこれでいいのかという懸念が急増してきた。
勢力的に言えば、「 ③ 法律も制定せずに、自衛隊と米軍の協力を強化し、事実を先行させていく」は、番匠幸一郎の例でみられるように主流になっている。
こうした中で、自衛隊関係で2つの重要な事態が発生した。
A:自衛隊内で「8月中の戦争法案成立・来年2月施行」を前提に、法案の実施計画が立てられていた―。
防衛省統合幕僚監部の内部文書「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)及び平和安全法制関連法案について」(防衛省統合幕僚監部の内部文書PDF)で、国会・国民無視の計画が初めて明らかに。
文書は、今国会に戦争法案が提出された5月末時点で作成。
「今後の進め方」とする日程表では、法案成立を前提に、最も早いパターンで「8月法案成立」、それから「6カ月以内の施行」開始として来年2月に施行を明記
また、7日に部隊派遣延長が閣議決定されたばかりの南スーダンPKO(国連平和維持活動)について、来年3月から「駆けつけ警護」を認めるなど、戦争法案を反映させる日程が具体的に。
中谷氏は「ご提示していただいている資料がいかなるものかは承知をしていない」と、文書の真偽について答弁を避けた。
B:沖縄県うるま市で訓練中の米軍ヘリコプターが米艦船への着艦に失敗した墜落事故で、負傷した陸上自衛官二人は、陸上自衛隊の特殊部隊員で、米軍特殊部隊の訓練中の事故に巻き込まれた。
今回の訓練は、米陸軍トリイ通信施設(沖縄県読谷村)の特殊部隊「グリーン・ベレー」などが行った。武装勢力に乗っ取られた船にヘリで近づき、特殊部隊員がロープなどで降下、船を制圧するとの想定だった。ヘリは低空飛行中に船の甲板上のクレーンなどに接触して墜落したとみられる。
ヘリに同乗し、負傷した二人は、陸自の「特殊作戦群(特戦群)」に所属。防衛省は「研修の一環として搭乗していた」と説明しているが、実際には訓練に参加していたのではないかと考える関係者も多い。
二人は、ほか八人の特戦群隊員とともに今月一~十五日の日程で「研修」に参加していた。この「研修」は二〇〇九年度から毎年、米陸軍が実施している。
特戦群はテロ・ゲリラ対処などを想定した部隊として〇四年に発足。〇七年には防衛相直轄の中央即応集団の傘下部隊となった。隊員のほとんどが空挺(くうてい)(パラシュート降下)とレンジャーの資格を保有している精鋭部隊だ。
特戦群はグリーン・ベレーなどに教育訓練を受けて部隊の練度を向上させた。その後も共同訓練を継続して連携強化を図っているとされる。
ある防衛省関係者は「米軍との訓練は各部隊レベルでは日常的にやっている」と話す。しかし「特殊部隊同士の訓練になると詳しいことは、身内でさえまったく分からないのが実情だ」と言葉を濁した(東京新聞)。
AとBとの事例は法律と無関係に訓練を行い、既成事実化していこうという流れである。
防衛省統合幕僚監部の内部文書「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)及び平和安全法制関連法案について」(防衛省統合幕僚監部の内部文書PDF)は共産党の小池議員によって暴露されたが、危機感をもった自衛隊員が情報提供した可能性が高い。
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私見
日本共産党小池晃議員に渡った内部文書は、自衛隊内にスパイが潜伏していたわけではない。自衛隊員自身が、安倍政権の軍事戦略の危険性に危惧して情報提供したと考えるのが、孫崎氏の見解である。軍事専門家の自衛隊員自身が危惧するような無鉄砲な作戦に、日本を乗ぜられるようでは、安保法制の危険性があらわである。