ロジャーズが10年間の歩みを振り返った論文集。心理学専門家はもちろん、すべての人の指針となる1冊。
内容説明
ロジャーズが1970年代の自らの歩みを綴った論文集。人間中心アプローチから対人関係論、教育システム、未来の人間像まで、多彩なテーマにわたる考察を平易な語り口で説く。
目次
第1部 経験による気づきと展望(コミュニケーションの意味;対人関係論の芽ばえと発展 ほか)
第2部 人間中心アプローチの諸側面(人間中心アプローチの形成;共感―実存を外側から眺めない関わり方 ほか)
第3部 教育のプロセス、その未来(知性と感性を共に育てる学習は可能か;分水嶺を越えてからの目標 ほか)
第4部 人間尊重主義の未来(未来の世界、未来の人間)
第2部 人間中心アプローチの諸側面(人間中心アプローチの形成;共感―実存を外側から眺めない関わり方 ほか)
第3部 教育のプロセス、その未来(知性と感性を共に育てる学習は可能か;分水嶺を越えてからの目標 ほか)
第4部 人間尊重主義の未来(未来の世界、未来の人間)
・第一に皆さんと分かち合いたいのは、誰かに耳を傾けることが出来た時に感じる喜びであります。・・・他者にに耳を傾ける時に満足が生じる理由を私は理解していると確信しています。他者にに本当に耳を傾け得た時、その人と触れ合っており、それが私の人生を豊かにするからです。私が人間、パーソナリティ、対人関係について得ている知識は、すべて他者に耳を傾けることを通じて得られたものです。真の傾聴にはもうひとつの独特な満足があります。あたかも天空から響いてくる音楽のように、彼が直接言おうとしていることを超えた全体からの響きがある点です。その人が伝えようとしていることの中に、宇宙全体を司る法則のように心理学的法則が隠されているのです。則ち、その人自身に耳を傾ける満足と、人類共通の真理に触れている満足があるわけです。
・第二の点・・・。私は聞いてもらうのが好きだという点であります。私の人生におきまして、幾度となく解決不能と思われる問題をかかえこみ、抜け出すことの出来ない堂々めぐりをしながら、無力さと絶望に打ちのめされそうになったことがあります。私が幸運だったと思うのは、その時期に私に耳を傾け混沌とした感情状態から抜け出すのを助けてくれた人に恵まれていたことです。その時の私よりも、もう少し深く私の話そうとする意味を聞きとる人に出会ったことです。彼らは、判断、診断、力づけ、評価をぬきにして耳を傾けてくれました。私が伝えようとしていることに、あらゆるレベルに耳を傾け、明確化し、応答してくれたのです。
・私にとって重要な、成長を促進するコミュニケーションの要因を理解して下さったと確信します。耳を傾ける能力、聞いてもらった時の深い満足、真実であること、これによって他者をもより真実であらしめること、その結果として生じてくる愛の自由な授受。これらこそ、私の経験におきましては、対人間のコミュニケーションを豊かにし高めていくものなのであります。
・少年時代を振り返ると、今日私が他者との親密なコミュニケーションを伴う対人関係と見なすものは、完全に欠如していたと言えます。
・思春期という大切な時期を親友のいない表面的つき合いで過ごしました。
・ふり返って思うのは、私の面接や治療に対する関心は私の子供時代における孤独から出てきているということです。
・少年に彼が振る舞っている誤った行動の発生原因について説明し、かなりよい面接を持てたのに、次の日彼が私に会うのを拒否したりするような事があって驚かされたりもしました。そこで、私は何が誤っていたのかを見出して彼を説き伏せねばなりませんでした。私は経験を通して学びはじめたのです。
・私は、クライエントならびにクライエント自身の問題探求能力を信頼するという新しい気づきが、他の領域にも広がっていくのを見出しました。
・師の耳に届いたようだった
師が沈黙の中で私たちを包みこむような聞き方だった
そこで、私たちはついに耳を傾けはじめた
私たちは存在する意味があるということに。
・ブーバー
完全な人間は、-存在者の人生に干渉しない。他者に自己を押しつけない。しかし、彼は『あらゆる存在の自由を援助する』(老子)。彼の全存在を通して、彼は他者が統合されるよう導くこともある。彼は人々の本質と運命を解き放ち、人々の中にある心理を解放する。
・老子の言葉(フリードマン)
私が他者に干渉しないなら、彼らは自分のことを自分でする
私が他者に命令しないなら、彼らは自らの行動をおこす
私が他者に説教をしないなら、彼らは自ら進歩していく
私が他者に押しつけをしないなら、彼らは自ら自身になる
参考
・学びとったこと
①自分を大切にする
②落ち着きを増した?
③新しい考えを受けいれる
④親しみ
・けれども死は終わりであるという私の考え方は、この十年の経験で少し変わってきています。
・生きるということは、確実なことをやるのではなく、人生をかけて試みるということであると発見しました。
・未来においては、私たちの生き方や教育を、真理は人間の数ほど多くあるという仮説に基づいて行わなければならない、そしてこの仮説から引き出された事を受けいれ、そこから出発していく事を最優先させねばならないという事です。
非指示的カウンセリング、来談者中心療法、生徒中心授業、集団中心のリーダーシップ
・成長促進的雰囲気を出現させるには三つの条件が必要とされます。
①見せかけのない事、真実、一致と呼ばれる要因です。
②変化の兆しが受容され、大切にされ、賞賛される雰囲気を創り出す事です。
③共感的理解です。
・パーソナリティーと行動の建設的変化を生じさせる効果を持つ態度特性を発見したことであります。それらの特性が基本に流れる環境に生きる個人は、自己理解、自信、行動選択能力等を有効に行使することが出来ます。自分である自由、自分を生かす自由を効果的に学びとります。
・望ましいセラピストは、第一に、共感的である。
・共感的雰囲気のもたらすもの
①共感は疎外を解き放ちます。
②受け手が価値、思いやり、存在を受けとめられた感じを持つ事です。
・共感の意味
①評価的でない受容的な特性
②理解的な人に聞いてもらう体験
③自己理解、自己承認の増大
・エレン・ウエスト その孤独
・ジェラード・マンレー・ホプキンズ『死肉のなぐさめ』
私はできる。
何かできる、希望がある。
その日よ来たれ。
生きようなどとわざわざ選ばなくてっもよい日よ・
・援助的職業への新しい緒戦
①なぜ人間科学を発展させるのか?
②未来の設計者になれるのか?
古いものの修復ではなく新しいものを作ることを主眼とするアプローチの開発です。
③専門性の脱却は可能か?
④全人としての男性あるいは女性でありうるか?
⑤これが唯一の現実だろうか?
⑥結論
心理学がひとつの科学としてまた専門分野として、各疑問を肯定的に受けとめ、各挑戦に積極的に取り組むなら、必ず前進すると信じます。
・知性と感性を共に育てる学習は可能か
感想;
少年期のコミュニケーションの苦手が無ければ、心理学を学ぶこともなかったかもしれません。
苦手なこと、人生からの試練、ネガティブな要素ですが、そこから学ぶことがあるとそのことが大きな成果のきっかけになるのでしょう。
今の試練をそういう視点から見つめると何か役立てることが出来るかもしれないと思いました。
カール・ロジャーズはカウンセリングの実体験から、学ばれたようです。
・人には自ら立ち直る力がある。
・その力を引き出す。
それがをロジャーズの方法に辿り着いたのでしょう。
ロゴセラピーも、人は自分の悩みを悩み考え、そこから行動する力を一人ひとりが持っていると考えます。それに気づき行動するお手伝いをします。
いろいろな心理療法があります。
カール・ロジャーズの方法はベースになるように思いました。
カール・ロジャーズはあまりにも有名でいろいろな人が紹介しています。
でも、案外本人の本を読んでいないと思いました。
それで読んでみました。
はっきり覚えているのは下記の本は読みました。
『エンカウンター・グループ―人間信頼の原点を求めて』カール R.ロジャーズ著
いろいろなグループのエンカウンターがあることも知りました。
カール・ロジャーズが行ったエンカウンターのビデオを見ましたが、カール・ロジャーズの人としての温かさを感じました。
このようなエンカウンターなら気付きになったり、助けられたりする人も多いかと思いました。