落ちこみ、気力がでない社員がいます。「うつ病」ではないかと考える人が多いのではないでしょうか? そうとは限りません。「適応障害」の可能性もあります。この二つは、一見すると似たような症状を示しますが、うつ病は休職期間が長くなる傾向があります。2人の例から病気の違いを紹介します。
うつうつとして朝起きられないのが始まり
職場復帰の際には、精神科産業医が可否やどのように復帰するかを提案するので、主治医から職場復帰可能の判断が出ると、まず、私のところに面談に訪れます。メーカー課長の西野太郎さん(44歳、仮名)が来ました。
産業医 : 精神科産業医の夏目です。職場復帰をご希望ですね。
西野さん: そうです。主治医から「症状軽快につき、職場復帰可能である」との、診断書が出ましたので。
産業医 : 状態把握のために、お聞きします。どのくらいの期間、休養加療をしたのでしょうか?
西野さん: 5か月になります。
産業医 : 初期の症状は、不眠や落ち込みでしたか?
西野さん: 知らないうちに、うつうつとした気持ちになり、朝、起きられなくなったのです。
出勤日も休日も違いはない
産業医 : ストレスはありましたか?
西野さん: 特に意識はしていなかったのですが。
産業医 : 寝起きはどんな感じですか。
西野さん: どんよりした気分で、なかなか起きられませんでした。
産業医 : そうですか。気力はどうでしたか。
西野さん: 何かするのが面倒でしたね。
産業医 : 休日と出勤日では、違いがありましたか?
西野さん: 特に変わりはありません。
産業医 : おくすり手帳を見せてください。
西野さん: これです(手渡す)。
産業医 : 抗うつ剤、あとは抗不安剤と睡眠導入剤が処方されていますね。うつ病の処方です。
西野さん: 先生、出勤できますか?
産業医 : ポイントになるのは、通勤できて、職場にあいさつに行けて、簡単な作業が数時間できることです。
西野さん: いずれも大丈夫です。
産業医 : 現在の職場に復帰することになりますが。
西野さん: 職場に不満はないです。慣れたところがやりやすい。
西野さんは1か月後に職場復帰しました。
うつ病の方の場合、休日も平日も関係なく気分が沈み、回復には時間がかかります。
営業所のセールスマンから本社係長に抜てき
一方、販売会社係長の遠藤次郎さん(32歳、仮名)が職場復帰面談に訪れました。西野さんとはだいぶ事情が異なります。
産業医 : 精神科産業医の夏目です。
遠藤さん: 遠藤です。職場復帰を考えています。
産業医 : 状態を知りたいのでお聞きします。しんどいと気づいたのは?
遠藤さん: 転勤後です。以前は営業所主任で、トップセールスマンとして頑張ってきました。本社営業企画係長をしてほしいと言われた時からです。
産業医 : それは抜てきですね。
遠藤さん: 喜んで本社に行ったら、仕事内容がガラリと変わり、戸惑いました。
産業医 : 例えば?
遠藤さん: 会議や対外折衝が多く、好きな外回りはなしです。一線の営業マンとは全く異なる管理的な仕事ばかりです。
産業医 : なるほど。
遠藤さん: 外に出られないのはつらかった。
産業医 : 向いてないか。
遠藤さん: 営業は売れれば、満足感もあるし、それが仕事の手応えです。本社に上がってしまうと、面白いと思っていたことができません。
産業医 : 力が発揮できないか。
遠藤さん: 周囲を見て、管理するマネージメントも難しい。
産業医 : なるほど。
遠藤さん: それでも頑張りました。
出勤日はうつで、休日は元気にテニス
遠藤さん: 努力すればするほど空回りです。2か月目からは疲れ、落ちこんできました。
産業医 : 適応ができていないんだね。
遠藤さん: 気力もなくなって。
産業医 : 休日は、どうかな?
遠藤さん: 休みは問題なくて、仲間と好きなテニスをしています。
産業医 : 休日と出勤日で気分変わるのが「適応障害」の特徴ですね。
遠藤さん: 「適応できていない」と主治医にも言われました。
復帰では、営業所勤務を希望
2週後の面談です。
産業医 : 調子はどうかな?
遠藤さん: 眠れて食欲もあります、パソコン入力も3時間以上できます。ヒマですから。
産業医 : 職場復帰ですが、希望はありますか?
遠藤さん: 本社より営業所、できればセールスマンで頑張りたい。社の人事制度で専門職があり、営業は実績で評価されるようになっています。
産業医 : 係長は適性でないからね。
遠藤さん: うれしいです。
産業医 : 人事や上司とも相談し、営業現場にもどれるようにします。
遠藤さん: やったー。これで働けます。
うつ病と適応障害の違いが、わかりやすい2人を紹介しました。適応障害では、強いストレスがあり、休日は元気なのが特徴です。ストレスの原因が、仕事や職場にあれば、復職時の異動を考えることが多いです。「会社とは上司のこと」という言葉がありますが、上司との関係がうまくいかず、適応障害を招くこともよくあります。うつ病と適応障害の違いは、休日の状態とストレス度が鑑別のポイントです。(夏目誠 精神科医)
2021年3月3日 医療・健康・介護のコラム
感想;
うつ病と適応障害
双極性障害とうつ病
メンタルの診断は難しいようです。
医者も間違えている場合があるようです。
先ずは知ること。
知るには身体と心の声を聴くことではないでしょうか。
そして自分がどれに当てはまるか近いかを自分で確認することでしょうね。
うつ病は薬では治せないと断言されている精神科医も多くおられます。
精神科医がうつ病になって、自分のうつ病を薬で治せなくて、試行錯誤して治した方法を本などに紹介されています。
寝られない。不安で大きい。食べられないことを改善するためにお薬を出して、身体の回復機能を待っている内に治ると、お薬が効いたように思うのです。
逆にお薬の弊害で酷くなっていき、医者によってはどんどんお薬を増やす医師もいて、自分が自分で亡くなっていくこともあります。
医者に妻が殺されたと本に書いてあったこともありました。
まずは睡眠と食事、そして運動が大きいです。
快便はその目安かもしれません。
メンタルは特に医者任せにせず、自分の病気は自分が主治医だと思うことが大切なように思います。メンタル以外の病も自分が充分な説明を医者から受けて、納得して治療を受けることになるのでしょう。
そのためにはいろいろな人のケースを知っておくのも役立つように思います。
また多くの本、医者や体験者が出されています。それを読むのも助けになります。
また、生きる意味を見失っていると、やる気も起きて来ません。
意味の消失は医者では治せません。これは多くの哲学者や宗教者、それから多くの人が本を書かれていますので、読むことも大きなヒントになるように思います。