・「『なぜ』を五回繰り返せ」
「言いわけをする頭で実行することを考えよ」
・「『モノを探すな、モノを取れ』が合言葉です。モノを探すと、どうしてもミスが起きます。ミスを防ぐために熟練度を上げるのは、新工場ではとても困難です。そのため、モノをいっさい探さなくてもいいように改善しました。新人でもミスが少なく作業ができます」
・張富士夫氏が「どういう人が伸びるか」と聞かれ、「きちんと行動できる人」に加え、「全体を見るセンスが必要だ」と答えている。
・大野耐一氏
「問題があって代案を考えないのは『越権行為だと遠慮する』のではなく責任転嫁である」
・『自分の城は自分で守れ』石田退三氏(トヨタ中興の祖といわれた)
・本田宗一郎氏
「過去を持っているオトナというやつは、うんと進歩的であるように見えても、実は古いところが多々ある」
・「指示よりうまく」には段階がある。
①最初は指示された通り
②方向だけを示し、答えは自分で考えさせる
③答えにアドバイスだけを送る
・大野耐一氏の下で厳しく鍛えられた張富士夫氏が、
「(トヨタでは)失敗しても責任を追及するという雰囲気がありません。なにがまずかったか、どう直すかに大勢の人の頭が働くようになっています。こういう雰囲気に持っていくと、かなりの部分うまくいくような気がします」
・いい失敗のルール
①失敗したら自分で直す
②同じ失敗を二度としない
③失敗を記録しておく
・改善には二種類がある。
①ムダ取り型改善・・・日々ムダ取りを続けていく改善
②課題解決型改善・・・大きな目標に新たな発想で立ち向かっていく改善
・豊田英二氏の社長時代に、こんな逸話がある。
若いトヨタマンHさんが「開発に必要だ」と購入した高価な外国製機械について大失敗をしてしまった。その機械は数十万もした。大学卒業者の初任給が数千円の時代だ。Hさんは覚悟を決め、トップである英二氏のもとへ一人で謝りに行った。
「購入した機械が使えないので謝りに来ました」と会社に大損害を与えたことを説明し、厳しい叱責を待った。英二氏はこう聞いてきた。
「その失敗の理屈はわかったのか」
「わかりました」
すると英二氏は、いつもの口調で一言だけ言った。
「わかればいい。その失敗はお前の勉強代だ」
今なら数千万円の損害となる失敗を「勉強代」の一言ですませられる経営者が、どれだけいるだろうか。トヨタ式は、こうした「ムダ」を、人づくりのために必要な「投資」と考える。トヨタ式は、ムダには非常に厳しい目を向けるが、将来に向けて必要な「ムダ」まで一律にカットすることはない。
必要なムダとは、たとえば技術開発であり、販売の先行投資であり、人づくりだ。
・問題や課題が多いのは、決して悲観すべきではない。それだけ改善し、伸びる余地があるということだからだ。トヨタ式では、「問題がない」ことのほうが問題ありなのである。
・豊田英二氏
「失敗してもいいから思い切ってやれ。そしてその失敗のレポートを書いておけ。それを書かないで覚えているだけだと、次の世代まで伝わらないからダメだ」
・学問の人というより実践の人であり、試行錯誤を繰り返しながら世界に誇る自動織機を発明した佐吉氏の信念が「まずやってみる」であったのは理解できる。では、東京帝国大学を卒業した喜一郎氏までが「まずやってみる」をモットーとしたのはなぜか。
そのきっかけを、このように話している。
「私は父を必ずしも天才とは思っていない。議論すれば学問した私のほうが勝った。アイデアも、必ずしも突飛なものをひょいひょいと思いついているわけではない。しかし非常に感心したことがある。自動織機の研究中にいろいろな案を片端からやったことだ。人間は、案外なところがある。自分がつまらぬと思ったことを実際に案外よかったり、自分がよいと思ったことをやってみると案外つまらなかったりする。実地第一主義である。
私は最初、議論を先にして実地をあとにした。だが、父とあることについて議論して、私のほうが勝った。すなわち議論では実行してみる価値なしになった。そのとき父から『とにかくやってみよ』と言われたので、やむを得ずやってみた。それが私の予想を裏切ってよい成績を示した。そんなことがあり、それからもう議論を先にすることをやめた」
・それをどう仕事に活かすんだ?
「見るだけ、聞くだけ、学ぶだけ」ではなんいもならない。その先に「実行すること」が必要だ。実行を伴って初めて、見聞は現実を動かす確かな力になる。
・喜一郎氏は、現場に出ない技術者を認めず、こうも話した。
「一日中一度も(現場で汚れた)手を洗うことなくして食事をなしうる技術者では、日本工業の再建はおぼつかないであろう」
・あるハウスメーカーの経営者は、水害や台風といった自然災害のときは「担当者ではなく、責任者が見に行け」と現場に率先して管理職がいくことを求めている。
・企業ではよく「2:6:2論」が言われる。人員構成の2割が上位で、6割が平均、残り2割が下位となるという考え方だ。それについて、張富士夫氏はこう話している。
「あまりそういう見方はしていません。というより、(人は)それぞれ特徴があって、ツボにはまると、ものすごい力を出す。適材適所といいますが、もし、そうした人たち(下の2割)がいるとしたら、うまく生かしきっていないのではないか。経営者のほうが悪いというか、管理者が悪い、そんな感じがしますね」
・「探す」「運ぶ」は仕事にあらず
・張富士夫氏が、米国ケンタッキー工場の責任者を務めていたときの話だ。
張氏が目ざしたのは、米国人の従業員を使って、日本と同じ品質の車をつくることだった。ところが、どうしても塗装の品質だけが上がらない。標準作業をつくり、改善を重ねてもダメである。「なぜ」を繰り返し、一つ一つ原因を潰していった。それでも真因が見えてこない。普通なら「塗装はこのレベルで十分としよう」と妥協するところだ。
だが、張氏は粘った。数か月間にわたり、工場を徹底的に調べ上げた。その結果、ようやく真因にたどりついた。はしょっていうと、なんと女性従業員の化粧と、工場で使っていた水道水の成分が真因だった。
・大野氏の厳しい指導を受けた人は少なくない。
別のトヨタマンも、工場でたまたまクランプ(固定器具)がちぎれたまま後工程に送られるトラブルが発生した際に洗礼をう得kた。二日間かけて探しても原因がわからず、大野氏に「見つかりません」と報告したところ、「見つかるまで探せ」の一言だけだった。
クランプがちぎれるのは、1000回に一回もない珍しいトラブルだ。そんなことのために、なぜ・・・という疑問があったが、仕方なしに探し回った、そして三日目に、ついにクランプがちぎれる現場に出くわした。
ただちに現場の担当者と相談して改善を行ったが、のちに、こう感想を述べている。
「めったにないことだから放っておくのではなくめったにないことだからとことん調べて、二度と同じ問題が起きないようにする。その積み重ねこそが品質を高め、強い現場をつくると実感しました」
回数に関係なく、「わかるまで探す」ことの大切さを学んだという。
・今日のことは今日片づけろ
トヨタ式は問題の先送りを許さない。
・佐吉氏のすごさを示す一つのエピソードがある。
あるとき、発明途中の図面を誰かに盗まれた。大変な騒ぎになるとkろおだが、佐吉氏は悠然としていた。「改良を重ねれば、あの図面は古いものになる」と言い、いっこうに動じる気配がなかたという。
・派遣にあたり、大野氏から言われたことがある。
「指導してやろう、教えてやろうと考えるな。大切なのは現場の人たちの知恵を引き出すことだ。そのお手伝いに行くのだと考えろ」
・「気持ち」を味方にせよ
人間は感情の動物である。力でムリを押しつけると、必ずどこかで反動がくる。時間はかかても、根気よく粘り強く理解と納得を得ることだ。一番手強い敵は「みんなの気持ち」であり、もっとも強力な味方も「みんなの気持ち」である。
感想;
トヨタにはモノづくりの神髄があるように思いました。
それを経営トップが考え、そして現場の人を育てているのです。
ダイハツで開発の不正がありました。
トヨタでは失敗を責めないから失敗を報告できる”
心理的安全性”があります。
しかし、ダイハツの社長はトヨタ出身者です。
ダイハツにそのトヨタの精神を根付かせずに、自分の実績を優先してしまったところに失敗があったようです。
ダイハツの問題は経営トップの考え方と行動の結果と言っても過言ではないようです。