和歌山県発注の串本町と那智勝浦町を結ぶ八郎山トンネルの施工不良問題で、工事を請け負った共同企業体の浅川組(和歌山市)が17日、同社で記者会見した。社内調査の結果、工事当初から施工不良が重ねられたとし、開通後の利用者への安全に対する意識はなかったとの認識を示した。同社は補修工事の実施で特別損失が約20億円発生する見通しという。
会見の冒頭、西口伸社長らが「施工不良で開通が遅れ、おわび申し上げます」と謝罪。同社のコンプライアンス対策委員会の委員長を務める弁護士の松川雅典社外取締役は「(施工不良で)積み上げてきた信頼を失った」と述べた。
社内調査では、県内でのトンネル工事17件の実績がある現場所長に権限が集中した問題を指摘。
掘削後に厳密な計測を行わず、現場所長の目視だけだった
▽内部のコンクリートの厚さ不足を認識していた▽トンネル内部を支えるアーチ状のH型鋼「支保工」(約700カ所)のほとんどが正確に設置されなかった-などの施工ミスを重ねながら、報告書には虚偽の記載を続けていたという。
この際、開通後の利用者の安全について考慮することはなかったという。現場所長は施工不良を重ねた理由を「叱責される」「工期が遅れる」「赤字にしたくない」「お前がなんとかしろといわれる」などと説明したとしている。
施工不良を知る現場の社員らが内部通報しなかった理由については「内部通報制度があることを知らなかった」「現場所長の判断が絶対である」「現場所長を超えて通報できない」との回答が大半で、松川社外取締役は「内部通報制度がほこりを被っていた」と反省の弁を述べた。
再発防止策として、コンプライアンス順守意識の醸成
▽上下の意見交換ができる風土の醸成
▽内部通報制度の説明
▽工事の品質を管理する品質検査員の創設-などを挙げた。
実施した工事について県と同社が再点検を行う。池内茂雄会長は「一から『誠実施工』の理念で信頼回復に努めたい」と話し、経営陣は辞任せずコンプライアンスの改善に取り組む姿勢を見せた。 施工不良を受け、同社は昨年8月に西口社長と池内会長を役員報酬20%カット(3カ月)としたのをはじめ、現場所長の降格など計8人に懲戒処分を行った。
八郎山トンネルは令和2年9月に着工し、4年9月に工事が完了。5年12月に開通予定だったが、4年12月、コンクリート壁に空洞を確認。調査の結果、壁の厚さが調査範囲の約7割で基準を満たしておらず、ほとんどの支保工が設計位置からずれているなど施工不良が発覚した。県が設置した同トンネル技術検討委員会は「掘削以外の工事を全面的にやり直す」との方針を決定し、同社の負担で工事を行う。開通まで約2年かかる見込みという。
感想;
この問題は経営陣の考え方と行動が引き起こしたと言えるのではないでしょうか?
ダイハツも同じです。
「(施工不良で)積み上げてきた信頼を失った」
ではなく、偽の信頼を積み上げてきただけなので、失ったのではなく、明らかになっただけです。
第三者による工事のチェック機能がなかった。
叱責される
無理な工期であっても「なんとかしろ」と違反してでもやれと受け取れることしか言わない経営層
経営層を変えないと問題は表面的な改善で、よくなりません。
「心理的安全性」のない会社だったようです。