・日本の希望を考えるとき、やはり若い世代、未来に生きる世代が、希望を持てることが何よりも大事だと思います。そのためにはまず先に生きてきた世代が、自分自身が経験してきたことを、良いこともそうでないことも、正直に若い世代に話すことが大切です。
・希望を取り戻す手立てを探るうち、ニートやひきこもりを取り巻く周囲に欠けているものの一つの象徴として、あるとき、ふと思ったことがありました。ある言葉です。彼らが苦しい状態になって以来、おそらくは家族をはじめ、周りの人たちから一切いわれたことがない言葉があります。
それは「大丈夫」という言葉です。
・私は希望額の研究を通じて、一人ひとりが希望を持つには、周囲が的確に「大丈夫!」の言葉を投げかけていくことが、とても重要だと感じるようになりました。
・ひきこもりやニートを支援する、富山県にある「はぐれ雲」という共同生活を運営するNPO、そこでは、二か月に一回、父母研修会というのがあって、親子で会う時間があります。
・「頑張れ」という言葉、ぜったいに使ってはならないわけではありません。上手な使い方をすれば、頑張れという言葉は、人に元気や勇気を与えてくれる。そんなことを、以前、作家の村上龍さんから聞いたことがあります。
「その人が今なにかに打ち込んでいて、それをずっと続けることが一番大事なとき、頑張れと応援されると、エネルギーになる」
・実は浄土真宗のお経のなかに「希望」という言葉は出てこないのです。普段の生活の中で「南無阿弥陀仏」と唱えることが何より大事とされます。今生きていることをありがたいと思い、念仏を唱えて暮らしていく。そうすれば、ことさらよりよい未来を希望しなくても、お釈迦様の導きによって、ちゃんと極楽浄土に行くことができる。だから、あえて未来に希望を持てと説かれることはないのです。
・キリスト教における希望は、神による救世という意味合いを含みます。
パウロの「コリントへの使徒への手紙 一」
「それゆえ、信仰と、希望と、愛、この三つは、いつまでも残る。その中で最も大いなるものは、愛である」
同じ手紙のなかには
「(愛は)すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを希望し、すべてに耐える」(13章7節)
・Hope is a Wish for Something to Come True by Action.
「どうやら希望というのは、四つの柱から成り立っていることがわかってきました。
一つはWish、日本語にすれば「気持ち」とか「思い」「願い」と呼ばれるものです。
二つ目の柱は、あんたにとっての大切な「何か」、英語でsomethingです。
三つ目の柱は、come true、「実現」です。
四つ目の柱はaction、つまり「行動」です。
・希望がある人では、84.2%が現在幸福だと答えており、希望がない人よりも明らかに多くなっています。
希望がないと幸福になれないわけではない。でも、将来に対して希望をを持っているふおが、現在に幸福を感じることが多いのです。
さらに幸福にとって重要な希望とは、なんといっても実現見通しのある希望です。実現しそうな希望を持つ人は、87.4%が幸福であると述べました。それに対して、実現しそうもない希望の持ち主では70.6%にとどまります。
・「年齢」「収入」「健康」といった要因が、希望の有無に明らかに影響を与えています。
・収入が増えれば増えるほど、希望が持ちやすくなるというわけではない。その境目となる年収の水準は、300万円前後でした。
・教育を積み重ねることで得られる知識や経験は、みずからの思考や行動の範囲を広げることにつながります。そのことが、十分な教育をうけなかった場合と比べて、より希望を持ちやすくなります。
・社会学の「Weak Ties」(米国の社会学者であるマーク・グラノヴェターが提唱)
自分と異なる情報を持っている人との緩やかなつながりが、転職を成功させる条件として重要だというのです。
・「希望の多くは失望に変わる。しかし希望の修正を重ねることで、やりがいに出会える」。これが、希望の物語性についての第一の発見です。
・挫折を経験しなかったおよそ「5割」の人々。
挫折を経験して乗り越えられなかったおよそ「1割」の人々。
挫折を経験して乗り越えてきたおよそ「4割」の人々。
この三種類のうち、現在希望を持って仕事をしている割合が圧倒的に高かったのは、挫折を乗り越えた経験を持つ人々だったのです。一方、挫折を乗り越えられなかった人々と、そもそも挫折を経験しなかった人々では、仕事に希望を持つ割合は、ほぼ同じ程度で低い水準にありました。
・計量歴史社会学者の佐藤香さんは、未婚者のうち、失恋という挫折を経験したことのない人ほど、恋愛や結婚医希望を持てないことを指摘しています。
・日本近世史の第一人者、大石慎三郎先生
「ボクは講義でも講演でも、今日はアレと、コレを、つまりは三つくらいしゃべろうかなと思っていくだけです。今日は反応が悪そうだから二つにしとこうとか、今日はみんな聞きたがっているから、四つ目を話そうか・・・。その程度です」
・「目先の損得勘定だけにしばられて判断するなよ。迷ったらやってみればいいじゃないか。駄目だったらそのとき考え直しても遅くない。それにやってみることで、思いもかけないチャンスが生まれることもあるんだよ」
・希望は一つのフィクションであるという考え方
・辞めた女性に、改めてその理由を率直に聞いて、結局のところ、大きく二つに集約されることがわかったのです。
①「このまま会社で働いたとしても、先がまったくみえないから辞めた」
②「このまま会社で働くことに、先がみえてしまったから辞めた」
・希望を考えるということは、自分自身のこれまでの体験に、もう一度向かい合わないではいられないということでした。
・私自身が希望額から学んだ一つは、「わからない」から逃げないことの大切さでした。そしてそれこそが、勉強や学問の意味だということを、あらためて思い知らされた気がしています。
・経済学は何を学ぶか
「どうすればみんなが今よりも少しでもいいから、ハッピーに暮らすことができるのか。そんな社会をどうすればつくれるか。そんなことを、バカみたいに真剣に考えるのが、経済学なんです」
・私の師匠である経済学者・石川経夫
「同じように努力する人たちの間でなぜ所得が異なるのか? そのような違いを構成だと評価することができるのか」。
この問いこそが、19世紀の英国の経済学者であるジョン・スチュアート・ミル以来の経済学者が答えるべき課題
・私は、政治が希望を語ることには慎重であるべきだし、語るとすればその使いかをもっとよく研究しなければならないと思っています。・・・
希望を語る以前に政治がまずやるべきことは、何よりその苦しみに対する想像力を持ち、共感しようとすることです。
・成熟社会における政治の最大の役割は、希望とは反対に、未来に起こるかもしれない絶望を避けることです。そしてそのための最大の努力を、今することです。
・歴史から謙虚に学ぶ姿勢を失ってはいけないでしょう。歴史を軽視した先には、再び絶望が待っているのだということを、私たちはつねに肝に銘じておくべきです。歴史を蔑ろにして、希望はけっして語れません。
・労使関連論が専門の仁田道夫さんは、「希望がない」社会状況は、「どう生きたらいいかわからない」状況から発するといいます。
・地域再生の条件として、発見した第一が、対話による「希望の共有」ですが、もう一つが「ローカル・アイデンティティの再構築」でした。
「地域の個性」「地域の自分らしさ」「地域の強み」
・「結局、希望には遊びが一番大事だとおもうんです」
遊びとは、まえもって単一の価値や意味を決めておくことをあえてせずに、余裕を持って大切に残された部分です。遊びそれ自体は無駄に思えるかもしれませんが、遊びがあってはじめて偶発的な出会いや発見が生まれます。遊びのある社会こそ、創造性は生まれますし、希望もつくりだせるのです。
・一番いいたかったのは、希望は与えられるものではなく、自分で(若しくは自分たちで)つくり出すものだということでした。
・ヒント
①希望は「気持ち」「何か」「実現」「行動」の四本の柱から成り立っている。希望がみつからないとき、四本のうち、どれが欠けているのかを探す。
②いつも会うわけではないけれど、ゆるやかな信頼でつながった仲間(ウィーク・タイズ)が、自分の知らなかったヒントをもたらす。
③失望した後に、つらかった経験を踏まえて、次の新しい希望へと、柔軟に修正させていく。
④過去の挫折の意味を自分の言葉で語れる人ほど、未来の希望を語ることができる。
⑤無駄に対して否定的になりすぎると、希望との思いがけない出会いもなくなっていく。
⑥わからないもの、どっちつかずのものを、理解不能として安易に切り捨てたりしない。
⑦大きな壁にぶつかったら、壁の前でちゃんとウロウロする。
⑧最後のヒントは、「***」自分でみつける。
・「苦しいときも、〇〇していたら大丈夫」といえる〇〇こそが、自分自身の希望をつくる秘訣なのです。
感想;
「希望学」を真剣に研究されている先生がおられることを初めて知りました。
下記のHPに詳細が掲載されています。
「希望学とは」
チーズは他のどこかにあるはずだと希望を持って探し回ったねずみは新しいチーズを見つけましたが、「***だから、もうどこにもチーズはない」と諦めたネズミは飢えてなくなりました。
希望を最後まで持って諦めないことなのでしょう。
真っ暗なトンネルにいると、出口が見えません。
何処にも出口がないと諦めるか、トンネルだからどこかに出口があるはずだと一歩前を進むか、この違いが大きいのでしょう。
根拠のない「大丈夫。何とかなる」と思える人は大丈夫なのでしょう。
何か根拠のある大丈夫は、その根拠がなくなると大丈夫でなくなります。
岸洋子さん『希望』が好きでした。
歌詞に、「希望と言う名のあなたを探して・・・」があります。
あなたを希望にしたので、あなたが去ってしまうと希望が見えなくなったのでした。
希望は自分がつくりだすものだったのです。
でも、自分を理解して、わかってくれ、無条件で支えてくれる”あなた”がいれば大きいでしょうね。多少の困難も乗り切れるのでしょう。
ただ、突然去ってしまう”あなた”は避けておきたいです。
世界が敵に回っても味方でいてくれる人が一人でもいると心強いです。
青梅慶友病院(青梅)が八王子に新しく老人病院を建てました。
そこへ、師長(女性)さんが移ることになりました。
人気がある師長さんでした。
入院している、師長さん大好きな老人二人(男性)が、「ぜひ私たちも師長さんと一緒に移らせて欲しい」とお願いしました。理事長は、通常入院者を移さないのですが、残りの人生ももうわずかなので希望をかなえさせてあげました。
なんと、師長さんと一緒に移った人はその後も元気だそうです(エッセイ掲載時)。ところが師長さん大好きだけど、移ることを遠慮した男性の入院患者さんはその後まもなく亡くなられたそうです。
人を好きになることは生きる希望にもなるようです。