2022年に自殺した小中高校生が過去最多の514人に上った。自殺の原因として多いうつ病は、子供にも発症のリスクがあり、自殺対策としても早期発見と治療が求められている。しかし、日本では子供のうつ病に対する治療法や医療体制が確立しておらず、早急な対応が必要とされている。北海道大学病院の齊藤卓弥特任教授(児童思春期精神医学研究部門)に子供のうつ病の特徴や課題を聞いた。
厚生労働省と警察庁の発表によると、全国で昨年1年間に自殺した人は2万1881人。このうち小中高生が514人で過去最多となり、小学生は17人、中学生が143人、高校生が最も多く、354人だった。小中高生を含む19歳までの1006人のうち、自殺の原因・動機がうつ病とされたのは79人で、学業不振の104人、その他の精神疾患(うつ病、統合失調症、アルコール依存症、薬物乱用、摂食障害以外)の97人、進路に関する悩み(入試以外)の84人に次いで多かった。
厚生労働省と警察庁の発表によると、全国で昨年1年間に自殺した人は2万1881人。このうち小中高生が514人で過去最多となり、小学生は17人、中学生が143人、高校生が最も多く、354人だった。小中高生を含む19歳までの1006人のうち、自殺の原因・動機がうつ病とされたのは79人で、学業不振の104人、その他の精神疾患(うつ病、統合失調症、アルコール依存症、薬物乱用、摂食障害以外)の97人、進路に関する悩み(入試以外)の84人に次いで多かった。
「反抗期」として見逃されることも
うつ病は、気分障害の一つで、気分がひどく落ち込んだり、何事にも興味を持てなくなったりし、眠れない、食欲がない、疲れやすいなどの身体症状が現れ、日常生活に支障が生じるようになる。
斉藤教授によると、うつ病を発症すると、大人は元気がなくなったり、抑うつ状態になったりすることが多いが、子供の場合は、イライラしたり、怒りっぽくなったり大人とは違う症状が出ることが多い。そのため、反抗期などと見なされ、見逃されてしまうことも多いという。
また、小学校低学年から中学年ごろの「児童期」と小学校高学年から高校生ごろの「思春期」では、症状が異なる場合もあり、児童期では不安やイライラ、癇癪(かんしゃく)などが見られ、一方、思春期では食欲や睡眠の障害、他者からの非難に敏感になる、自殺行動が増加するといった現象がみられることもある。
さらに、大人以上に別の病気を疾患する併存症が多く、「うつ病とともに、不安症や注意欠如・多動症(ADHD)などの病気を同時に抱えるケースもある」(斉藤教授)という。
子供のうつと自殺が社会問題化し、医療整備などが進む米国でも、子供のうつが認知されだしたのは、1980年代の後半からだという。70年代後半に公開されたRDCという精神医学の診断基準で子供のうつ病が診断されたことがきっかけとなった。
「それまでは、精神分析的な考え方が優勢で、子供は自我の発達が達成されていないということで、うつ状態はあっても、うつ病にはならないとされていた」(斉藤教授)という。
米国小児学会(AAP)は子供のうつに関するガイドラインを作成。自殺予防対策として、うつ病の早期発見、治療につなげるため、12歳以上の子供のすべてを対象としたスクリーニング検査を年に1回行うよう推奨している。
現在は、診断基準として、アメリカ精神医学会が作成する「DSM」とWHO(世界保健機関)が作成する「ICD」などがあり、日本の医療現場でも利用されている。
薬物治療などに課題
うつ病の治療は、薬物治療のほか、認知と行動に働きかけ、思考のバランスを整える認知行動療法や家族など他者との関係性に焦点を当てて治療する対人関係療法などがある。
しかし、斉藤教授によると、海外で子供のうつに有効とされている薬が日本では承認が下りておらず、認知行動療法や対人関係療法についても治験が行われていないため、治療法が根付いていないという。
斉藤教授は、「抗うつ剤は、年齢が低いほど有効性が低くなり、薬が限られる」と言う。国際的にはWHOが「フルオキセチン」を子供のうつ病の必須医薬品としてどの国でも使用可能にすべきものと考えている。米国では子供のうつ病の治療薬として「フルオキセチン」が8歳以上、「エスシタロプラム」が12歳以上に有効だとして承認されている。しかし、日本では、フルオキセチンは承認も販売もされておらず、エスシタロプラムは販売されているが子供のうつ病には承認されていない。
このため、日本では、子供のうつ病の治療の選択肢が少なく、「併存症の別の治療を先に進めたり、家庭や学校などに働きかけてストレスを取り除く『環境調整』をしながら、うつが続く要因を減らしていくのが最大限の治療となり、症状が重い場合には12歳以上にエスシタロプラムを未承認であることを説明の上処方することもある」(斉藤教授)。
ほかにも、児童精神科医の不足の解消や、復学後に勉強や人間関係で取り残されないように支援するなど、さまざまな課題やサポートが必要とされているとし、斉藤教授は「国を上げて子供のうつ病のための医療整備を進めてほしい」と訴えた。
腹痛など身体の不調がサインに
長引く新型コロナウイルス禍では、子供のメンタル面への影響が懸念されている。国立成育医療研究センターが21年12月、全国の小学5年生から中学3年生までの子供2350人(回答率52%)に、郵送で行った調査では、小学5~6年生の9~13%、中学生の13~22%に、病院への相談が望ましい中等度以上の抑うつ症状が見られた。また、うつになっても「誰にも相談せず様子をみる」と答えたのは、小学5~6年生で25~29%、中学生で35~51%だった。
また、身体の不調を自覚する子供ほど抑うつ症状が見られるとし、週1回以上、腹痛があると答えた子供11~18%のうち、51%の子供に中等度以上のうつ症状が見られた。症状のない子供に比べ、10倍多かった。
同センターの社会医学研究部長、森崎菜穂氏は、親の不安感などが子供に影響したり、相談しにくい状況になったりする可能性もあるとし、自分だけで抱え込まず、日本小児科医会が認定した「子供の心相談医」など、外部に早めに相談することが重要だと指摘。「言葉で伝えられない子供も多いので、周囲の大人がSOSのサインを知り、早めに気づけるようになってほしい」と呼びかけた。
【相談窓口】
「日本いのちの電話」
0570・783・556(ナビダイヤル)…午前10時~午後10時
0120・783・556(フリーダイヤル)…毎日午後4時~9時、毎月10日:午前8時~翌日午前8時
感想;
子どもが苦しんでいます。
それを子どもにやる気がないとか言って子どものせいにしている教育関係者がいるようです。いじめられている子が虐められる何かをもっているから。
不登校はやる気がないからとか。
そうではなく、学校に行きたくてもいけないのです。
苦しんでいるのです。
それを放置していると子どもたちの自殺が増えるだけです。
10代、20代、30代の死因トップが自殺の国、日本。
何かおかしいのです。
その対策を打てずにいます。いのちの電話の相談先よりも、チャイルドラインの相談先を載せた方が良いと思います。チャイルドラインでは電話とチャットがあります。
フリーダイヤルで話す 0120-99-7777(毎日 午後4時~午後9時)
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