平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

パラサイト 半地下の家族~人間の深層心理に根ざしたもやもやとした何か

2021年04月17日 | 洋画
 米国アカデミー賞の外国語映画賞を受賞した韓国映画「パラサイト~半地下の家族」

 半地下の家族は、
 大学生を装って家庭教師になり、
 美大生を装って絵画教師になり、
 今までいた運転手を罠にはめて運転手になり、
 今までいた家政婦をクビにして家政婦になり、
 金持ちの家に入り込んで寄生(パラサイト)する。

 知らず知らずのうちに見知らぬ家族がパラサイトしてる。
 ううっ、怖い……。
 でもコメディタッチで描かれているから笑ってしまう部分もある。
 でもこの家族、心のうちに狂気を秘めている感じがするから、どこか怖い。
 コメディタッチだけど怖い。
 不思議な感覚の作品だ。
 …………………
 
 象徴的なのは「窓」である。

 金持ちの家には一面に広がる大きな窓がある。
 窓の外には、豊かな芝生と計算され尽して配置された木々──
 美しく造園された庭がある。

 一方、半地下の家族の住んでいる窓は隙間のようで小さい。
 窓から見えるのは、通行人の足、
 台に上がれば、酔っ払いがゲロしたり小便をしている姿が見える。
 大雨が降れば、水が窓から入って来て家がプールのようになる。

 見える風景がまったく違う金持ちと半地下の家族。
 その格差の中で、半地下の家族は次第に怒りと憎悪を募らせていく。

 そんな静かな緊張感の中、物語を大きく動かすのは──
「金持ちの家の地下に住むもうひとつの家族」だった。

 おおっ、怖い。
 地上→半地下→地下。
 という三重構造。

 韓国の富裕層は、北朝鮮のミサイル攻撃や税務署の税金徴収から逃れるために家に地下室を造っているらしい。
 だが作中の金持ち一家は前の所有者から家を買ったので、地下室の存在を知らない。
 自分の家に地下室があって、そこに人が住んでいることを知らない……!
 地下に住んでいる人間はときどき地上に出て来て食料を調達する。

 くううっ……これで恐怖は頂点に達する!

 この3者の関係がどのように崩れて、どんな結末を迎えるかはネタバレになるので書かないが、
 何だろう、この観た後のモヤモヤした感じは?
 テーマ=「格差社会」と断定してしまえばスッキリするのだが、それだけでは収まらない感じもある。
 地上→半地下→地下。
 ここには人間の深層心理に根ざした何かがある。

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イミテーション・ゲーム~エニグマを解読した天才数学者アラン・チューリングの物語

2021年04月08日 | 洋画
 第2次世界大戦におけるドイツの暗号機エニグマのをめぐる物語は面白い。
 映画『イミテーション・ゲーム』では、いよいよ天才アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)の登場だ。

 チューリングは実在の人物。
 彼は現在のコンピューターの前身である演算マシーンを使ってエニグマの暗号を瞬時に解こうとする。
 エニグマを解読できれば、ドイツ軍の作戦や部隊の動きを把握できてさまざまな対応が出来るのだ。
 そしてチューリングは試行錯誤の末、マシーン・ボンブを開発してエニグマの暗号解読に成功する。
 結果、後の評価に拠れば、ドイツの敗戦が2年早くなった。

 ここまでで言えば、チューリングは英雄であり、成功の生涯だったかに見える。
 しかし、多くの天才数学者がそうであるように、チューリングの生涯は悲惨であった。
 2つのことが彼の精神を蝕んだのだ。

 ひとつはエニグマ解読に成功したことを極秘にされたこと。
 英国軍とMI6は、ドイツとの戦争を有利に展開するために「エニグマ解読」を秘匿する。
 もし解読されていることが知られたら、ドイツはエニグマを使わなかったり、改良したりするからだ。
 英国軍はエニグマ解読の結果を大きな作戦で効果的に使おうとする。
 解読されていないことを知られないために、わざと味方の犠牲を出したりする。
 チューリングは悩む。
 エニグマ解読で敵の動きや作戦がわかっているのに味方が犠牲になってしまうことに罪悪感を抱く。

 チューリングの精神を蝕んだもうひとつのことは、彼がゲイであることだった。
 当時の英国ではゲイであることは法律で罰せられていた。
 チューリングは自分の秘密を隠す。
 一時、同僚の女性ジューン・クラーク(キーラ・ナイトレイ)に魅かれて婚約したりするが、結局は破談。
 やはりチューリングは男性しか愛せなかったのだ。
 そして孤独の中で荒んでいく。
 このあたりは映画『ボヘミアン・ラプソディ』で描かれたフレディ・マーキュリーに似ている。
 フレディ(ラミ・マレック)もメアリー・オースティン(ルーシー・ポイントン)に魅かれたが、結局はダメだった。

 ハードな人生だな……。
 チューリングは国家と社会的偏見・差別の被害者だった。
 天才ならではの鋭敏さもチューリングを追い込んでいった。
 結果、彼は自殺。
 ゲイを治すための薬物治療(←そんなものがあるのか?)もされたらしい。

 唯一の救いは、エニグマ解読で終戦が2年早まったという後の評価。
 そして彼の恋したジューンの存在。
 自分がゲイであることを告白したチューリングをジューンは受け入れ、こう言う。
「わたしは普通の結婚なんて望まないって言ったでしょう? わたしはあなたと結婚したいのよ!」
 こんなことも言っていた。
「あなたが普通でないから世界は素晴らしい!」
 しかし、チューリングはこんなジューンも拒む。
『ボヘミアン・ラプソディ』のメアリーもそうだが、やはり女性は強いね。

 余談だが、
 トップシークレットであるチューリングと彼のチームのことが公になったのは21世紀になってから。
 英国はエニグマ解読を第2次世界大戦後も秘匿し、エニグマを暗号機としてインドなどの第三世界に提供していたらしい。
 そうすれば相手の情報はすべて筒抜けになるからだ。

 やはりエニグマをめぐるドラマは闇が深く、枚挙に暇がない。

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映画音楽で映画を語ろう!~「マンマ・ミーア!」 踊れば、あなたはいつくになっても17歳、ダンシングクィーンなのだ!

2020年08月14日 | 洋画
 僕が通っているスポーツジムのW先生はダンスのレッスンの終わりにこの曲をかける。
 僕たちはこの曲を踊る!

 ABA 「Dancing Queen」

♪ You are the Dancing Queen.
 young and sweet, only seventeen.

 あなたはダンシングクィーン!
 若くて可愛くて、まだ17歳!

 You can dance. You can jive.
 having the time of your life.

 踊って、スウイングして
 人生を楽しもう!

 See that girl. Watch that scene.
 digging the Dancing Queen.

 あの子を見ろよ、踊ってる姿を見ろよ
 彼女はダンシングクィーンだ!   ♪
 ………

 いいですよね、このメッセージ。
 年配の女性が集まるダンスのレッスンで、この曲を使用するW先生のセンスが素晴らしい。
 なので、W先生のダンスのレッスンは僕を含めて、みんな笑顔になる!

 さて、この曲を使ったミュージカル映画がある。

 映画『マンマ・ミーア!』

 

 中年女性のメリル・ストリーブ、ジュリー・ウォルターズ、クリスティン・バランスキーが「ダンシング・クィーン」を歌い踊るシーンは圧巻。

 すっかりおばさんモードになってしまったドナ(メリル・ストリーブ)に友人たちが挑発するのだ。
「何言ってるのよ、わたしたちはまだ若いのよ!」
「躍って、恋をして人生を楽しみましょう!」
「あなたはダンシングクィーンなのよ!」
 これに触発されて、ベッドの上で飛び跳ねてはしゃぎ、踊り出すドナ。

 これをイタいと言うなかれ。
 いや、他人の目なんか気にするのはつまらない。
 人生は楽しんだもの勝ちなのだ。

 こんなメッセージが伝わってくる。

 僕は「マンマ・ミーア!」のこのシーンを見るたびに前向きに生きる元気をもらっています。

 それでは聴いて下さい!

 Mamma Mia! (2008) - Dancing Queen (YouTube)

 歌詞を知りたい方はこちら
 Dancing Queen【訳詞付】- ABBA (YouTube)
 
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ポール・ニューマンは素晴らしい!~風格・愛嬌・笑顔・凄み・シャイが混在する見事な演技!(動画あり)

2020年07月29日 | 洋画
 ポール・ニューマンをトリビュートした動画を見つけました!

 ポール・ニューマンって、目がセクシーなんですよね。
 目尻が下がってて、眼光鋭い演技をしていても、どこか愛嬌ややさしさがある。

 

 目にやさしさがあるから笑顔も素晴らしい!
 ニヤリと笑っても

 

 爆笑しても

 

 絵になる!

 

 動画では、ポール・ニューマンの目の演技を散りばめ、ニヤリ笑い→微笑み→爆笑と展開している。
 この動画の作成者さん、わかってるなあ。

 上の4つの画像は映画「スティング」のポール・ニューマン。
 こんな葉巻の似合う役者さんはいない。
 ポール・ニューマンが演じた詐欺師ヘンリー・ゴンドーフは僕の記憶に残る『カッコいい男』のひとりです。

 それではポール・ニューマンの演技をご堪能下さい!

 Paul Newman: Raindrops keep fallin' on my head.(YouTube)

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映画音楽で映画を語ろう!~「雨に唄えば」 恋がかなえば、雨にぬれることも楽しい!

2020年07月25日 | 洋画
 雨の日なのでこれだ!

『雨に唄えば』(1952)

 昔はDVDやビデオがなくて、こういう作品はミニシアターで観るしかなかった。
 だから『ぴあ』で上映されることを確認すると、必ず観に行った。
 繰り返し、観られるわけじゃないから、一瞬も見逃すまいと真剣勝負で観ていた。

 そんな昔と現在はどちらか豊かなんだろう?
 いつでも気軽に作品とアクセス出来るのは素晴らしいが、
 かつてのような真剣さやワクワクがない。
 いつでも会える彼女と一期一会の彼女だったら、いっしょに過ごす時間の濃密度は全然違うように。
 今では大阪へは新幹線で簡単に行けるが、かつては東海道を歩いてた。
 でも、東海道をテクテク歩いてた方が、まわりの景色や土地の風物を確認できて楽しいんじゃないかな?
 広く浅くよりは、狭くディープに。
 次から次へと新しいものを消費するのが現代なんだろうけど、
 自分の心にしっかり刻まれる『雨に唄えば』のような作品は少なくなる。
 …………

 

 さて、『雨に唄えば』

 別に分析する必要はなくて、単純にジーン・ケリーのダンスを愉しめばいいとは思うんですけど、
 敢えて書くと、
 このシーンの斬新な所は〝音〟にある。
 今までのミュージカル映画のタップシーンと言えば、足を踏み鳴らすのタップの音。
 でも、このシーンは違う。
 ちゃぷちゃぷ、バチャバチャ、ちゃっ、ちゃちゃちゃちゃ──
 タップを踏むたびに靴と雨の音が入ってくる。
 傘で壁をジーッと擦る音もある。
 これが耳に楽しいんだよなあ。

 あとは、『雨に濡れることが楽しい!』という価値観の転換。
 作品を観ていない方のために説明すると、
 このシーン、好きな女性との恋愛がかなって大喜びするシーン!
 恋がかなえば、雨に濡れることすら楽しいんですよね。
 雨が主人公のドンを祝福しているようにも思える。

 最後はジーン・ケリーのダンス。
 当時言われていた評価は──
『ジーン・ケリーのダンスは体育の先生みたいで、フレッド・アステアのような優雅さに欠ける』
 というものだったが、確かにやわらかさがなくて、体操のような感じはある。
 でも、型にはまらない変幻自在さ&ジーン・ケリーの笑顔がこのダンスシーンを映画史に残るものにしている。

 それでは聴いて下さい!
 
「Singin' in the Rain (雨に唄えば , Singin' in the Rain Theme song)」(YouTube)

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映画音楽で映画を語ろう!~「明日に向かって撃て!」 雨にぬれても俺は負けない。もうすぐ幸せな日がやって来るのだから

2020年06月29日 | 洋画
 1960年代後半から70年代にかけて『アメリカン・ニューシネマ』という作品群が登場した。
『俺たちに明日はない』
『イージー・ライダー』
『真夜中のカウボーイ』
『明日に向かって撃て!』

 この時代、ベトナム戦争が泥沼化して、アメリカなるものに若者が疑問を持ち始めたんですよね。
「あれ? 俺たちの信じていたアメリカがおかしいぞ」
「あたしたち、国家やアメリカなんて信じない。夫や恋人を戦争になんか行かせない」
「ヒーロー? 勧善懲悪? 夢のような恋愛物語? 何だ、それ? 現実は全然違うじゃん!」
 それが反戦運動、ヒッピー文化、ドラッグカルチャーに発展した。
『アメリカン・ニューシネマ』も生まれた。

 その作品群の内容は──
 反体制的で、刹那的で、性や精神の解放を謳い、最終的には体制側に圧殺される。
 …………

 さて『明日に向かって撃て!』
 アメリカン・ニューシネマが西部劇を描いたらどうなるか?

 

 ううっ、ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、カッコいい!

 でも、本編の彼らはぜんぜんカッコ良くないんですよね。
 列車強盗をするが、爆薬の量を間違えて大爆発! 紙幣があたりに飛び散る!(笑)
 メキシコで銀行強盗をするが、スペイン語をしゃべれないので紙に書いたメモを読んでカネを要求する!(笑)

 ここには、ジョン・ウェインのような強くてたくましい西部劇のヒーローはいない。
 ジョン・ウエインはアメリカの象徴だが、この作品は否定している。

 おまけに、ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードが演じるブッチ・キャシディとサンダンス・キッドは保安官から追われている。
 彼らは逃げ、アメリカに居場所がなくなり、国境を越えて南米ボリビアに向かう。
 アメリカに居場所がない、というのも象徴的だ。

 そして彼らは『自転車』に乗る。

 

 西部劇の主人公なのに馬ではなく、自転車に乗る。
 これも何と象徴的だろう。

 この自転車シーンの時に流れるB.J.トーマスの『雨に濡れても』が泣ける。

♪ 雨が頭の上に落ちて来る(Raindrops Keep Fallin' On My Head)
 何もかも上手くいかない気がするよ
 だから太陽に言ってやったんだ
 寝てないで仕事しろ
 でも、わかってることがひとつある
 たとえ憂鬱な日がやって来ても俺は負けない
 幸せな日はもうすぐやって来るのだから ♪

 これ、まさにブッチとサンダンスの気持ちなんだよなあ。

 保安官に追われてて自分の居場所がない。いつ殺されるかわからない。
 すごく不安だ。憂鬱だ。
 でも負けない。
 もうすぐ幸せな日がやって来る。
 不安だけれども、今は愛する人と自転車に乗って、一瞬の幸せを確認しよう。

 こんな彼らの迎える結末は何なのか?
 映画のラストシーンは警官隊に囲まれたブッチとサンダンスが突撃するシーンで終わるんだけど、もしかしたら彼らは生きているのかもしれない。
 だって幸せな日は必ずやって来るのだから。

 それでは聴いて下さい。

 雨に濡れても  [日本語訳付き] B.J.トーマス(YouTube)
 ※『明日に向かって撃て!』の名場面で構成されています。

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映画音楽で映画を語ろう!~「サタデーナイトフィーバー」 ニューヨークの街はペンキを持って歩くのがカッコいいのだ!

2020年06月23日 | 洋画
 ニューヨークをどのような音楽で表現するか?

 ウディ・アレンは映画『マンハッタン』でガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」を使った。
 なるほど、ニューヨークにはジャズがよく似合う。
 ニューヨーカーでクラリネット奏者のウディ・アレンならではの選曲でもある。

 George Gershwin - Rhapsody in Blue - Leonard Bernstein (YouTube)
 バーンスタインの名演です!
 ………………

 一方、こんな曲でニューヨークを表現した映画もある。

『サタデーナイトフィーバー』~ビージース「ステイン・アライブ」

 何とニューヨークをディスコミュージックで表現したのだ!
 なるほど、エネルギーの塊のような大都市ニューヨークを表現するのにはディスコミュージックが合ってるな。

 

 映画の冒頭、このビージーズの曲をバックにジョン・トラボルタがニューヨークの街を歩くシーンが描かれる。
 髪をガチガチにキメて、赤い開襟シャツを着て、ピカピカの革靴を履いて。
 ペンキを持って。

 これ衝撃だったなあ。
 だってニューヨークの街をペンキを持って歩くんですよ。
 まあ、トラボルタが演じるトニーはペンキ屋でペンキを持って歩くのは当然なんですけど。
 メチャクチャ、カッコ良かった!

 平凡で退屈な日常でも、
 バリバリにキメて、気分がディスコミュージックなら『非日常』に変わるのだ!

 この作品はこのことを教えてくれた。
 ニューヨークはペンキを持って歩くのがカッコいいのだ!

 というわけで、
 さあ、音楽を持って街に出よう!
 音楽を持って街を歩けば、ありふれた日常が非日常に変わる。
 さあ、今日はどんな音楽を持っていこうか?


 それでは聴いて下さい!
 Bee Gees Stayin Alive (Extended Remaster)(YouTube)
 
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映画音楽で映画を語ろう! 「フラッシュダンス」~自由に感じるままに! 保守的なバレエの世界にストリートダンスで挑む主人公!

2020年06月12日 | 洋画
 映画音楽で映画を語りたい!

 というわけで『フラッシュダンス』(1983年公開)!

 現在はそうでもないと思いますが、
 昔はダンスの主流は『バレエ』で、ダンサーを志す者はバレエ経験が必須だったんですね。
 ところが主人公のアレックス(ジェニファ・ビールス)はバレエの素養がない。
 ダンス経験と言えば、街のキャバレーみたいなバーでセクシーなダンスを踊ること。

 そんなアレックスがダンサー養成所のオーディションを受ける。
 しかし、アレックスに立ちはだかるのはバレエを重視する保守的な審査員たち。
 さてアレックスはこのオーディションをどう突破するか?

 最初、アレックスはバレエを踊る。
 途中でバランスを崩してコケたりする。
 だが、自分らしく、感情のままに、自由に踊ればいいことに気づいて、
 ストリートダンスやバーで踊っているようなセクシーダンスになっていく!

 審査員の皆さん、あたしを見て!
 退屈なダンスなんてまっぴら!
 この方が熱くて、生きてる躍動を感じるでしょう?
 みたいなノリ。

 
 ※かっけー! 指さしてる!(笑)

 これはストリートからの保守的な世界への逆襲だ。
 もっと自由に!
 もっと感じるままに!
 審査員たちも熱くなって、いっしょに手拍子したり、リズムを取ったりする(笑)

 いやあ、お見事!
 このオーディションシーン、いつ見ても熱くなる!
 主演のジェニファ・ビールスは何てキュート!

 

 主人公のアレックスは自転車で職場に通っていたり、倉庫みたいな家に住んでいたり、
 そのライフスタイルは結構クールだった!
 確かこのあたりからストリートカルチャーが始まったんですよね。

 それでは聴いて下さい。
 胸熱のオーディションシーンです。

 フラッシュダンス(YouTube)
 ※堀ちえみさんの『スチュワーデス物語』の主題歌でもありました。
 ※前半1分くらいは音がありません。

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映画音楽で映画を語ろう! 「Eye of the Tiger」(ロッキー3)~ハングリー精神を失ったロッキーよ、虎の目を取り戻すのだ! 

2020年06月10日 | 洋画
 映画音楽で映画を語りたい!

 その第1弾は『ロッキー3』Eye of the Tiger !

『ロッキー3』って、Eye of the Tiger を取り戻す話なんですよね。

 Eye of the Tiger =虎の目とは何か?
 ハングリー精神

 アポロ・クリードを倒して世界チャンピオンになったロッキー(シルベスター・スタローン)。
 しかし、優雅な暮らしや地元の名士になって銅像を立てられたりして、ハングリー精神を失ってしまった。
 そんな中、ハングリー精神のかたまりのクラバー・ラング(ミスターT)が襲い来る。

 ロッキーとクラバーでは目が違う。
 ハングリー精神を失ったロッキーの目はおっとりしているが、
 クラバーの目はギラギラして獲物を追い求める虎のよう。
 まさにEye of the Tigerだ。

 
 試合前のにらみ合いでは、ロッキーは目を逸らしてしまう。
 象徴的なシーンだ。
 目を逸らせた時点でロッキーの負けは決定。
 すでに気力で負けている。
 心の支えのセコンドのミッキー(バージェス・メレディス)は発作で倒れて不在だ。

 ロッキーはノックアウトを喰らって無惨に敗北。
 このまま失意のまま引退してしまうのか?
 そんなロッキーに火をつけたのが、前チャンピオンでライバルのアポロ・クリードだった!
 Eye of the Tiger  を取り戻すべく、ロッキーはアポロと特訓を開始する!
 特訓の開始場所はロッキーの原点であるフィラデルフィアの古びたボクシングジム。

 おおっ、この燃える展開!
『ロッキー』はこの単純明快さがいいんですよね。
 王道のストーリー展開で、何も考えずに見ていられる。
 見るべきは「闘う男たちの肉体の躍動」と「取り戻していくEye of the Tiger 」!
 まさに肉体の復権だ。

 1980年代、『ロッキー』シリーズと平行して、ウディ・アレンの映画が評判になったが、
 ウディの演じる主人公たちは、ひ弱でおしゃべりで神経症。
 一方、ロッキーはただひたすらマッチョ。

『ロッキー』はアメリカ映画史の中で「肉体の復権」を高らかに歌った作品として位置づけられるだろう。
 ベトナム戦争で自信を失ったアメリカは『ロッキー』でマッチョなアメリカを取り戻したのだ。
 そのマッチョなアメリカは『ロッキー4』でソ連と闘う!
 う~ん、単純明快だなあ(笑)

 それでは聴いて下さい。

 Rocky III • Eye of the Tiger (YouTube)
 ※この動画、よく出来ていて、4分間で『ロッキー3』のすべてがわかります!

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変態村~辺境の村に迷い込んだ歌手♂が捕まって女装させられて掘られてしまう話。怖いのはやっぱり人間だなあ

2020年02月12日 | 洋画
『変態村』という映画を見てしまった!
 だって荒木飛呂彦先生の本に面白いって書いてあったんだもん!

 内容は──

・フランスの辺境の村に迷い込んだ歌手♂が捕まって女装させられて掘られてしまう話!(笑)
・宿屋の主人は「歌手の車を修理してやるよ」と言って、エンジンを取り外して車を燃やしてしまう(笑)
・ある村人は愛犬を探してて、「犬が見つかった」と言って牛を連れて来る(笑)
・村人は「獣姦」を日常的にやっていて、酒場ではおかしな踊りを踊り出す(笑)

 赤塚不二夫の漫画やマルクス兄弟の映画のような笑いとして捉えることができるが、作品としては『悪夢』を見ているような感じ。
 総尺94分の作品の中で、観客は悪夢でうなされる。

 で、夢から覚めて、しみじみと思うのは──
 世の中で一番怖いのはモンスターなどではなく『人間』だなあ、という思い。
 特に常識や通常の論理が通用せず、自分なりの論理で動いている人間は怖い。
 常識のある人間は、エンジンをはずして車を燃やしたり、牛を犬だと思ったりしないですからね。

 でも、このことをさらにツッコんで考えてみると、
 僕たちのまわりには、自分とはかけ離れた論理で行動している人間がウヨウヨいる。
 かろうじて法律や道徳や共通の文化や最大公約数の常識というやつで秩序が保たれているが、それらがなくなったら、世界はこの作品のように混沌として来るだろう。
 この世界認識って怖くないですか?

 監督はベルギーのファブリス・ドゥ・ヴェルツ。
 DVDにはヴェルツの短編映画も特典として入っていたが、これも悪夢のような世界だった。

 映画を観るというのは、映画館という暗闇の中で夢を見ること。
 その夢が理路整然としていて楽しいものならスッキリするが、今作のようなメチャクチャで混沌とした内容だとうなされる。

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