平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「蟹工船」 小林多喜二~プロレタリア文学の代表作。権力者たちはなぜ「赤化する社会」を怖れたのか?

2025年01月10日 | 小説
「おい、地獄さ行ぐんだで」

 蟹工船はオホーツク海で猟をし、船の中で加工して缶詰にする工場付きの船である。
 ここで働くのは貧しい農民や食い詰めた者たち。
 ここでは人は軽い。
 道具でしかなく簡単に使い捨てられる。
 蟹工船の幹部たちにとっては、人が漁で死ぬよりも「川崎」という小舟が失われることの方が
 重大事だ。
 船長などの幹部は船のサロンで豊かな生活している。
 一方、労働者たちは暗くて悪臭のする船底だ。

 蟹工船の管理監督・浅川はこんなことを言って労働者たちを鼓舞する。

「言うまでもなくこの蟹工船の事業は一会社の儲け仕事ではなく国際上の一大問題なのだ。
 我々日本帝国人民が偉いか、露助(ロシア人)が偉いか。一騎打ちの戦いだんだ」
「我がカムサッカの漁業は国際的に言って優秀な地位を保っており、
 日本国内の行き詰まった人口問題、食料問題に対して重大な使命を持っているのだ。
 俺達は日本帝国の大きな使命のために命を的(まと)に北海の荒波をつっ切って行くのだ」

 この浅川の言葉に労働者たちは感激して必死に働く。
 しかし、次第に疑問を持ち始める。

「帰りてえな。カムサッカでァ死にたくないな」
「浅川の野郎ば、殴り殺すんだ!」
「日本帝国のためか、いい名義を考えたもんだ」
「いくら働いても俺達のものにならない」

 疑問を持つきっかけもあった。
 たまたまロシアの海岸に漂着した「川崎船」の労働者たちが、
 ロシアの中国人通訳からこんなことを言われるのだ。

「あなた方、貧乏人。だからプロレタリア。
 金持ち、あなた方をコクシする。金持ち、だんだん大きくなる。
 あなた方、貧乏人になる。働かない金持ち、えへん、えへん。
 プロレタリア、一人、二人、三人、百人、千人、五万人、十万人、手をつなぐ。
 みんな強くなる。働かない金持ち、にげる。
 プロレタリア、一番偉い」

 こうして労働者たちは、他の工場で働いた経験のある労働者の意見もあって、
「サボタージュ」、つまり「サボり始める」。
 これには浅川たちも困り始める。
 ひとりふたりなら力で押さえつけられるが、全員だとさすがに無理。
 漁が滞り缶詰ができなければ今度は監督者の浅川たちが会社から責められる。

 かくして労働者たちは「労働条件の改善」を浅川に飲ませることに成功するのだが……。
 ……………………………………………………

『蟹工船』(小林多喜二・著)は「プロレタリア文学」の代表作である。

 現在も格差社会はどんどん進行していて、『蟹工船』は決して古くない。
 それどころか力を持っている。
 プロレタリア文学の登場に、「芸術」を志向する芥川龍之介は危機感を抱いたらしい。

 上記の中国人通訳の言葉は「資本主義」や「社会主義革命・運動」とは何か? を
 的確に表わしている。

 資本主義とは──
「金持ち、あなた方をコクシする。金持ち、だんだん大きくなる。
 あなた方、貧乏人になる。働かない金持ち、えへん、えへん。」

 社会主義革命や運動とは──
「プロレタリア、一人、二人、三人、百人、千人、五万人、十万人、手をつなぐ。
 みんな強くなる。働かない金持ち、にげる」

 さて、皆さんは上記のことをどう考えられるだろうか?
 時代遅れだ。
 これだからパヨクは困る、と思われるだろうか?

 ただ、この点を押さえないと、
「戦前の昭和」「アメリカの50~60年代」「日本の学生運動」を理解できない。
 赤化する社会を権力者がなぜ怖れたのか、がわからなくなる。


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1 コメント

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日本共産党はイメージを払拭しないと (半沢)
2025-01-10 18:57:22
コウジさん今晩は
小林多喜二と言えば特高警察に依る激しい拷問で殺害された悲しい
出来事… 極悪非道の時代
此の記事は赤旗新聞にも時々掲載されます。
ま、資本主義の矛盾した社会を労働者が正しい方向性へと導く為の
文学ですね。今もって日本共産党を攻撃する悪党がいますが そんな輩は
相手にしません。維新などと言う下品な人々
そう、新自由主義も弱肉強食で格差拡大させる物ですね。今も変わらない…

私がよく書いてますが日本共産党は党名を日本平和党などと改名した方が
イメージアップすると思うのですが、意固地ですね…
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