平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

どうする家康 第47回「乱世の亡霊」~乱世の生き残りを根こそぎ引き連れて滅ぶ覚悟にございます。

2023年12月11日 | 大河ドラマ・時代劇
 今回は茶々(北川景子)と秀頼(作間龍斗)が掘り下げられた。

 茶々は乱世の被害者である。
 父と母を殺され、幸せな家庭を壊された。
 宿敵というべき秀吉(ムロツヨシ)に身を寄せて、憎悪を内に秘めていた。
 憧れの人だった家康(松本潤)は「我が身を顧みず助けに来なかった」。
 誰もが自分が可愛い。エゴの塊だ。
 人間とはそんなものだと理解しているが、純粋な少女時代に負った傷は大きい。
 茶々は新たな「憧れの人」「理想の人」を作ろうと思った。
 それが秀頼だった。

 しかし家康の手紙で、それがエゴだと気づく。
 同時に、乱世に翻弄されて生きて来た結果、歪んで、屈折して、
 自分が「乱世の亡霊」になったしまったことに気づく。
 家康もまた乱世に翻弄されて生まれた亡霊であることを知る。

 家康の手紙を読んで、茶々はこう考えたのだろう。
・乱世が終われば自分たちのような被害者は生まれなくなる。
・力が支配する世界から解放されて、穏やかな世界がやって来る。
・秀頼はこの穏やかな世界に生きるべきではないか?
 だから茶々は秀頼に言う。
「母はもう戦えとは言わぬ。そなたが決めよ。徳川に従うもよし。そなたの本当の心で決めるがよい!」

 茶々としては秀頼に「穏やかな世界」で生きて欲しかったのだろう。
 だが、秀頼はそれを拒んだ。
「ともに乱世の夢を見ようぞ!」

 秀頼には乱世を求める心があった。
 織田と豊臣の血がそうさせた。
 自分のもとに集まって来た浪人たちも乱世を求めていた。

 こんな思いもあった。
・自分は天下人となるべき正当な人間である。
・家康は天下の簒奪者である。
 なぜ従わなければならないのか?

 母の教えた理想像も頭の中にあった。
 それは「我が身を顧みず人を助け、世に尽くす人物」だ。
 たとえ厳しい状況であっても、仲間を見捨てない人物だ。
 秀頼は自分について来た浪人たちを放逐することが出来なかった。
 ………………………………………………………………………………………

 今回はなかなか難しいテキストだった。
 茶々の心情、秀頼の思いを書いてみたが、今ひとつしっくり来ない。

 キイワードは「乱世の亡霊」
・茶々は乱世に翻弄された結果、歪んでしまった。
・家康は乱世に翻弄され、不本意な修羅の道を歩くことになった。
・秀頼は、織田と豊臣の血、母の思いによって亡霊になってしまった。
 大坂城に集った浪人たちの乱世を求める心がそれを後押しした。

 こんな感じだろうか?
 個人的には、ラストの秀頼の決断を茶々に否定してほしかったな。
 秀頼の決断は一時的な熱狂がもたらしたものであり、本当の心ではない気がする。
 茶々は自分の価値観を押しつけたことを秀頼に謝り、諭してほしかった。

 さて次回、秀頼と茶々は何を語るのか?


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2 コメント

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「乱世が産み出した最後の化け物」 (TEPO)
2023-12-11 14:12:15
>秀頼は自分について来た浪人たちを放逐することが出来なかった。
先週始めてしまったので、今週も「ぶち壊し」型の「史実」観を一つ。
そもそも茶々、秀頼には完全な自己決定を行う自由は無かったとする見方があるようです。
大阪城に集結した10万もの浪人衆の存在は、もはや城主母子の制御を超えていたというわけです。
茶々、秀頼が敢えて徳川に恭順しようとした場合、下手をすると、ちょうど250年後の徳川慶喜がしたようなアクロバティックな「大阪城脱出」により「ついて来た者たち」を裏切る羽目にもなりかねません。
さらには「彰義隊」が出現することも考えられます。
しかし、本作では茶々、秀頼はそれぞれ自分の意思で行動したとする前提で見てゆきましょう。

>茶々は新たな「憧れの人」「理想の人」を作ろうと思った。それが秀頼だった。
以前、秀頼は外界から隔絶された大阪城の中で「純粋培養された戦国武将」だったと書きました。
しかし、彼は「本物の戦国武将」では無かった。
本物の戦国武将は「自分が可愛いエゴの塊」で、平気で人を裏切り、見捨てる。
秀頼は「傷ついた純粋な少女時代」の茶々の理想像が投影された「戦国武将」に育ってしまった。
ここに秀頼の悲劇性がある。

「どうやら豊臣秀頼こそ、乱世が産み出した最後の化け物、なのかもしれませぬな」
本多正信のこの言葉が今(第47)回の結論なのでしょう。

家康の手紙はたしかに茶々の心に届いたのでしょう。
しかし、秀頼は自分の意思で「乱世の亡霊」たることを決断してしまった。
茶々は、自分が息子を「乱世が産み出した最後の化け物」へと育ててしまったという事実を前にして、おそらくは愕然として、諦念の思いをもって家康の手紙を火中に投じたのでしょう。

気の毒なのは千姫ですね。
今や心は完全に「大阪方」となり、「最後の化け物」と化した夫と心を一つにしようとしています。
しかし、彼女は家康の手紙を燃やした現在の茶々の思いは知らないことでしょう。
茶々も秀頼自身も、この時点で「秀頼の助命」の可能性を拒否する決断をしています。
しかし、予告編などによれば、千姫は家康に茶々、秀頼母子の助命を嘆願しているようです。
これは完全な「ボタンの掛け違い」。
その時点では「大阪城滅亡」以外はあり得ず、家康は「なさねばならないことをなす」だけでしょう。
しかし、千姫の目には家康はさぞかし非情に見えることでしょうね。
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千姫の物語 (コウジ)
2023-12-12 09:10:10
TEPOさん

いつもありがとうございます。

>「どうやら豊臣秀頼こそ、乱世が産み出した最後の化け物、なのかもしれませぬな」
象徴的な台詞ですよね。
僕は松山ケンイチさんの本多正信推しなのですが、松山さんの台詞まわし、味があって好きです。

>茶々は、自分が息子を「乱世が産み出した最後の化け物」へと育ててしまったという事実を前にして、おそらくは愕然として、諦念の思いをもって家康の手紙を火中に投じたのでしょう。
なるほど。
ラストの茶々の心情はこうだったんですね。
ここで秀頼の決断を否定してしまったら、秀頼は今後も母親の作った籠の中の鳥ですし。
やはり次回、最期を迎えたこのふたりが何を語るのか楽しみです。

大坂城の浪人たちの制御が効かなくなってしまったという説。
現実はこうなんでしょうね。
おっしゃるとおり、ここで恭順してしまったら徳川慶喜になってしまうでしょうし、浪人たちは暴走するかもしれない。
プライドや立場というのは厄介なものです。

千姫は、大坂落城前に秀頼と茶々から城を出るように言われるんでしょうね。
「そなたは豊臣の妻として立派に役割を果たした」
「愛するがゆえ、そなたには生きていてほしい」
みたいなことを言われて。
千姫としては不本意ですが、秀頼たちの助命嘆願のために城を出る。
ここで家康がどう判断するかは見所ですが、おそらく秀頼と茶々は下ることを潔しとしないのでしょう。
家康も、秀頼たちのことを理解しているので下らないとわかっている。
現状、千姫は完全に蚊帳の外という感じですが、年月が経て、秀頼、茶々、家康の思いを理解できるといいですね。
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