『これから三年のうちにやるべきこと。
明神様のために田んぼを作る。社も作る。流鏑馬を幾度もやる。
これすべて鎌倉殿の大願成就と東国の太平のため』

文字を満足に書けない上総介広常(佐藤浩市)が机ではなく、この姿勢で書くから伝わるんですね。
これは上総介の嘘偽りのない魂の叫び。
しかし、他人にはそれがわからない。
外面ばかり見てしまう。
頼朝(大泉洋)の上総介の認識は「いずれ何とかしなければならない男」。
兵力や所領など、大きな力を持っているのだから頼朝が怖れるのは当然だ。
いつ気が変わって歯向って来るかもしれない。
大江広元(栗原英雄)いはく、「最も頼りになる者が最も怖ろしい」
その前夜、上総介は頼朝にこんなことを言っていたのになあ……。
「お前は自分勝手な男だ。だが、おのれの道を行け。
御家人が騒ぎ出したら俺が何とかしてやるよ」
だが、頼朝の頭に残っていたのは「御家人は駒だ」ということだけだった。
頼朝の「闇落ち」は早かった。
権謀術数、脅威になる者は排除する。
これが都風ということなのだろうか?
義経(菅田将暉)も今回『淀んだ鎌倉』って言ってたなあ。
一方、板東武者たちは無骨で素朴過ぎる。
父・時政(坂東彌十郎)はこれを敏感に察して所領の伊豆へ。
父上、無意識にやってるんだろうけど、なかなか賢明だ。
梶原景時(中村獅童)は葛藤している。
さすがに上総介殺害には抵抗があったようで、決行するか否かは、サイコロの目で決めた。
そして義時(小栗旬)。
彼もまた葛藤している。
上総介が脅威になり得ること、上総介殺害は御家人たちへの見せしめになることは理解している。
これで頼朝の板東での『足固め』は完了するかもしれない。
しかし……。
『新撰組』の土方歳三、『真田丸』の真田幸村──
彼らは権力を持たない人物であったから「純粋」でいられた。
だが、北条義時は──
権力維持のために、時には手を血で染めなくてはならないことを、今回理解したのであろう。
上総介の死は理不尽で悲惨だった。
上総介は最期に頼朝のことを『武衛』でなく『鎌倉殿』と呼んだ。
あのすがるような顔は義時や頼朝の心に焼き付いたことだろう。
それが人の心を蝕んでいく。
頼朝は恐怖政治と所領の分配で鎌倉を経営していくのかな?
そこには信頼や心の交流はない。
そして義時。
もはや『純粋』ではいられない。
生まれた子供の存在が闇落ちを妨げるのかもしれない。
明神様のために田んぼを作る。社も作る。流鏑馬を幾度もやる。
これすべて鎌倉殿の大願成就と東国の太平のため』

文字を満足に書けない上総介広常(佐藤浩市)が机ではなく、この姿勢で書くから伝わるんですね。
これは上総介の嘘偽りのない魂の叫び。
しかし、他人にはそれがわからない。
外面ばかり見てしまう。
頼朝(大泉洋)の上総介の認識は「いずれ何とかしなければならない男」。
兵力や所領など、大きな力を持っているのだから頼朝が怖れるのは当然だ。
いつ気が変わって歯向って来るかもしれない。
大江広元(栗原英雄)いはく、「最も頼りになる者が最も怖ろしい」
その前夜、上総介は頼朝にこんなことを言っていたのになあ……。
「お前は自分勝手な男だ。だが、おのれの道を行け。
御家人が騒ぎ出したら俺が何とかしてやるよ」
だが、頼朝の頭に残っていたのは「御家人は駒だ」ということだけだった。
頼朝の「闇落ち」は早かった。
権謀術数、脅威になる者は排除する。
これが都風ということなのだろうか?
義経(菅田将暉)も今回『淀んだ鎌倉』って言ってたなあ。
一方、板東武者たちは無骨で素朴過ぎる。
父・時政(坂東彌十郎)はこれを敏感に察して所領の伊豆へ。
父上、無意識にやってるんだろうけど、なかなか賢明だ。
梶原景時(中村獅童)は葛藤している。
さすがに上総介殺害には抵抗があったようで、決行するか否かは、サイコロの目で決めた。
そして義時(小栗旬)。
彼もまた葛藤している。
上総介が脅威になり得ること、上総介殺害は御家人たちへの見せしめになることは理解している。
これで頼朝の板東での『足固め』は完了するかもしれない。
しかし……。
『新撰組』の土方歳三、『真田丸』の真田幸村──
彼らは権力を持たない人物であったから「純粋」でいられた。
だが、北条義時は──
権力維持のために、時には手を血で染めなくてはならないことを、今回理解したのであろう。
上総介の死は理不尽で悲惨だった。
上総介は最期に頼朝のことを『武衛』でなく『鎌倉殿』と呼んだ。
あのすがるような顔は義時や頼朝の心に焼き付いたことだろう。
それが人の心を蝕んでいく。
頼朝は恐怖政治と所領の分配で鎌倉を経営していくのかな?
そこには信頼や心の交流はない。
そして義時。
もはや『純粋』ではいられない。
生まれた子供の存在が闇落ちを妨げるのかもしれない。
人名でWikiを見ると、いやでもその最期まで見えてしまいますので。
今回は二重底構造の見事な作劇だったと思います。
広常が頼朝と酒を酌み交わすまでの前半部は、広常・義時の大活躍で八方丸く収まって一旦は「めでたしめでたし」。
それが、後半で一挙にどんでん返し。
予備知識無しに見た人にとっては、衝撃的な展開だったことでしょう。
この三谷さんの策を素直に味わっても良かったかな、と少しWikiを見る癖を後悔しかけましたが、Wiki汚染した私でも前半部だけ見た段階で、ここから「梶原景時による斬殺」へとどう展開するのか、とハラハラしました。
>もはや『純粋』ではいられない。
親友三浦義村に「お前は少しずつ頼朝に似てきているぜ」と言われているところからして、今後は某か変化があるのかもしれませんが、二重底構造の作劇は少なくとも今回までは義時を「純粋」なままにしておくための仕掛けだったと言えます。
前半部では、義時は「明るい主人公」であり、広常はこれを支える「陰の功労者」。
義時は、頼朝と大江広元による策を全く知りませんでした。
もし知っていたならば、広常に敢えて反頼朝勢力に参加するよう唆した義時は今回の陰謀最大の実行犯ということになります。
しかし、広常は「小四郎!来ればお前も斬る」という頼朝の言葉を聞き、絶命前に義時の目に浮かぶ涙を見て、かすかに笑みを浮かべたように見えました。
「秘密警察長官」景時はもう少しマキャベリストかと思いましたが、結構悩んでいました。
しかし、反撃できないよう「死神」善児に予め懐刀を掏り取らせていたところから見て、すでに腹は決まっていたのでしょう。
泰時は誕生しましたが、八重さんはまだ無事のようなのでひとまず安心しました。
たしかに、ここで退場では「夫婦の物語」として物足りないのですが、八重に長生きさせるとなると、表の歴史では記録がないという事実と整合性を保つ工夫が必要となります。
いつもありがとうございます。
>ここから「梶原景時による斬殺」へとどう展開するのか、とハラハラしました。
なるほど、史実をあらかじめ知ってハラハラする。
こういう見方もあるんですね。
ハラハラするか? ショックを受けるか?
僕の場合は頼朝、大江の話を聞いた時はショックを受けました。
義時は完全にハメられましたよね。
大江や頼朝に乗せられて、知らず知らずのうちに片棒を担がれてしまった。
人を信じるか、信じないか。
義時と上総介は前者であり、頼朝・大江は後者。
信じて裏切られる側はつらいですね。
世の中は、大抵信じる側が損をするようにできているのですが、こちらの方が人して上等のような気がします。
景時のドラマは今後も楽しみになって来ましたね。
景時の今後については、永井路子さんの小説を読んでいて僕も何となく知っているんですけど、三谷幸喜さんがこれにどう味付けするのか?
八重については阿波局とは別人物で、義時と結婚させて泰時を産んだのは三谷さんの創作のようですね。
・伊東祐親の八重が頼朝の子を産んで、その子が殺されたのは事実。
・阿波局が御所で下働きをしていたのは事実。
こうした史実の断片を三谷さんがつなぎ合わせたようです。
詳しくは、こちら。
『歴史学的にはフィクション…それでも三谷幸喜が八重と義時を結婚させた理由』(女性自身)
https://jisin.jp/entertainment/entertainment-news/2089597/
今、録画を見終わったところです。
上総介謀殺の裏については、お二人で語り尽くされているので触れませんが
佐藤浩市さんが演じられたことで上総介の悲劇性が増しましたね。
昔、見た「草燃える」でも双六中に謀られて殺されたのは同じですが
演じたのは小松方正さんで、とんでもなく御し難い人として描かれていました。
こんなふうならば、早晩 排除されても仕方が無いと思えるような上総介像でした。
今回の方が、上総介のの無念と頼朝の冷酷さが際立っていたと感じました。
いつもありがとうございます。
>とんでもなく御し難い人として描かれていました。
おそらく実際の上総介は御しがたい人だったんでしょうね。
そこを三谷さんがひとひねりした。
「草燃える」は見ていないのですが、頼朝がより冷酷に描かれている点で、「鎌倉殿」の方がハードになるのかもしれませんね。
それから、めぐみさんお薦めの『炎環』読みました。
永井路子さんの作品って案外図書館にないんですね、
なので本屋で文春文庫版を買いました。
人物の視点を変えて同じ時間を描く手法、面白かったです。