平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「べらぼう」 第6回「鱗剥がれた『節用集』」~鱗の旦那、濡れ手で粟餅、有り難くいただきやす

2025年02月10日 | 大河ドラマ・時代劇
「告げ口はクズ山クズ兵衛、性に合わねえ」

 鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)が『節用集』の贋板(海賊版)をつくっていることを知った
 蔦谷重三郎(横浜流星)。
 訴え出れば鱗形屋は捕らえられ、蔦重は取って代わって版元になることができる。
 鱗形屋が蔦重を利用していることもわかっている。

 しかし、蔦重は──
「告げ口はクズ山クズ兵衛、性に合わねえ」
 蔦重がためらう理由は──
・性分に合わないこと
・火事で蔵が焼けたことで、鱗形屋の金繰りが良くないこと
・息子も番頭も鱗形屋を盛り立てようとがんばっていること
・鱗形屋孫兵衛が本をつくるのが好きなこと

 結局、蔦重は訴えず、「運天」、運を天に任せることにする。
 しかし別のラインでこの不正が発覚、鱗形屋孫兵衛は捕らえられる。
 鱗形屋孫兵衛からは「おまえが告げ口したのか?」と恨まれる。

 すっきりしない蔦重は長谷川平蔵宣以(中村隼人)に思いを語る。
「濡れ手に粟、棚からぼた餅、俺はうまくやったんでさぁ」
「ただ、うまくやるってのは堪えるもんすねぇ」
 これを聞いた平蔵は、出し抜いたり追い落としたりするのが世の中だ、と諭す。
 蔦重は心を切り換えて。
「鱗の旦那、濡れ手で粟餅、有り難くいただきやす」
 ……………………………………………

 今回の話、落語や講談を聞いているような感じでしたね。
「鱗の旦那、濡れ手で粟餅、有り難くいただきやす」
 で、見事に締めた。

 蔦重の気持ちの描写も、
・道が開けた嬉しさ
・自分を利用していた者が捕らえられた喜び
・追い落された者の後を引き継ぐ苦さ
・ひと言、危ないと行ってやれなかった後悔
・苦さと後悔を抱きながらも前を向く決意
 などが入り交じって複雑だった。

 そう、こういう複雑な心情描写が見たかったんですよね。
 とはいえ、蔦重はこれを引きずらない。
「鱗の旦那、濡れ手で粟餅、有り難くいただきやす」
 前作『光る君へ』の登場人物たちは思いをずっと引きずっていたが、
 蔦重は江戸っ子気質で、カラッとしていて前を向く。

 僕は『光る君へ』の登場人物タイプなので、蔦重の、カラッして前を向ける気質は憧れだ。
 苦境にあっても、笑い飛ばして粋に生きていたい。


※追記
 江戸城パートでは、田沼意次(渡辺謙)の立場・境遇が明らかに。
 意次は絶対的な権力者ではない。
「日光社参」は押し切られておこなわれることに。
 商業を活性化させて幕府の財政再建をおこなったが、あまり評価されていない。
 足軽の出身なので良い家柄の者にバカにされている。
 
 とはいえ、意次は「家柄」「出身」より「実力」「実績」だ。
 田沼家が良い家柄であることを示す家系図を池に投げ捨てた。
 これが意次の矜恃なのだ。
 家柄・出身よりも実力・実績を頼りに生き抜いていこうとしている。

 蔦重同様、意次も岩盤のような勢力と戦っている。

※追記
 今回の江戸言葉
「金々野郎」
「半可通」
「源四郎」
「運天」
「占め子の兎」


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 日米首脳会談、顔合わせとし... | トップ | USAID問題で陰謀論が炸裂!~... »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
「恨み」を買う (TEPO)
2025-02-10 17:17:25
>僕は『光る君へ』の登場人物タイプなので、蔦重の、カラッして前を向ける気質は憧れだ。
私も「引きずる」タイプ、というか、「恨みを買う」ことを気にする方なので、今回は結構気になることだらけでした。

>鱗形屋孫兵衛からは「おまえが告げ口したのか?」と恨まれる。
鱗形屋からは誤解つきで恨まれてしまった。
鱗形屋が「終身刑」や「取り潰し」になることは無いでしょうから、復帰後の鱗形屋からの報復が気になってしまいます。
いよいよ「激しい争いを繰り広げていく」段階に入るのでしょうか。
しかし、それには蔦屋が実際に「版元」の地位を手に入れることが条件です。
果たして今回の「濡れ手で粟餅」のチャンスだけでそこまで行けるのでしょうか。
次回はそのための闘いが描かれるようですが、妨害もあって結構苦労もありそうです。
さて、どうなることでしょうか。

意次は、意知が受けた佐野政言からのゆすりじみた依頼を一蹴してしまいましたが、これは政言の意知に対する恨みとなったことでしょう。
ちなみに、政言が持参したのは「田沼家が良い家柄であることを示す家系図」ではなく、むしろ逆で「田沼家が佐野家の末端の家臣だったことを示す家系図」。
この恨みは、政言による意知暗殺、ひいては田沼家没落のきっかけとなるわけで、史実を知る視聴者の目からは「意次はやらかしてしまった」との感じ。

>これを聞いた平蔵は、出し抜いたり追い落としたりするのが世の中だ、と諭す。
これまでの平蔵は「郭遊びの初心者」「世間知らずのボンボン」というイメージでしたが、少し味わいのある人物像になったきました。
後の「世の中の酸いも甘いも噛みつくした」人情家の「名火付け盗賊改・鬼平」の片鱗を見せ始めたというところでしょうか。
返信する
作品のトーン (コウジ)
2025-02-11 07:50:02
TEPOさん

いつもありがとうございます。

>「田沼家が佐野家の末端の家臣だったことを示す家系図」。
だったんですね。だから池に放り投げた。
そして願いを却下したことで佐野政言の「恨みを買って」しまう。

蔦重も誤解ですが、鱗形屋の「恨みを買って」しまいましたね。
孫兵衛の息子のことも気になります。
誤解が解けることがあるのでしょうか?

以前、今作は「複雑な心情描写が足りない」「物事が簡単に解決しすぎる」と書いたので矛盾してしまいますが、「あまりドロドロにして欲しくない」「カラッと痛快であってほしい」とも思いました。

まあ、ナレーションが綾瀬はるかさんの九郎助稲荷ですから、そんなに暗くならないですかね。
今回は会話をしていましたし。笑

平蔵の変化、掘り下げ、よかったですね。
「世の中の酸いも甘いも噛みつくした」人情家になりそうです。
人物描写の掘り下げはこの位がいいのかもしれません。
返信する

コメントを投稿

大河ドラマ・時代劇」カテゴリの最新記事