平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

ハウルの動く城

2006年07月22日 | コミック・アニメ・特撮
   1
 昨日放映された「ハウルの動く城」。
 テーマは「人のために生きること」「人に心を開くこと」。
 ソフィ(倍賞千恵子)は、魔法により老婆に姿を変えられてしまったが、人のために勇気を持って立ち向かう時、姿がもとに戻る。
 ハウル(木村拓哉)は天才魔法使いだが、弱さから悪魔と契約、魔王に変貌しようとしている。そんなハウルがソフィのため戦う時だけ、意思と元の姿を取り戻す。
 「人のために生きること」「人に心を開くこと」というテーマは手垢のついたテーマだが、姿形が変わるという暗喩で見せてくれるといきいきとしてくる。

   2
 ハウルの城が動くシーンが面白い。
 城が動く原動力は、火の悪魔カルシファーの力らしい。
 あんな建物が細い足を使って、ヨロヨロと歩く。
 すごいイメージだ。
 その他、美しい港の町並みやユーモラスな火の悪魔カルシファー、言葉はしゃべらないがいつもソフィをあたたかく見つめているかかしのカブ(実は王子様)など、この作品は豊かなイメージがいっぱい。「千と千尋の神隠し」が日本のイメージを凝縮したものなら、「ハウルの動く城」は西洋のイメージを凝縮したものだろう。
 最近の宮崎駿作品には、遊園地にいるような楽しさがある。
 また、カットのひとつひとつが美しい絵画。目の贅沢、心の贅沢だ。これは決してVFXでは表現できないもの。
 ファンタジーにはアニメーションの表現が最適だ。

   3
 荒地の魔女(美輪明宏)や火の悪魔カルシファーなどの悪役が魅力的だ。
 特に荒地の魔女はソフィたちを危機に陥れる行動ばかりをする。敵をおびき寄せる煙草を吸ったり、ハウルの心臓を欲しがったり。
 しかし、魔力を奪われてただの老女になった彼女には悪気はない。ただ昔の本能・欲望に忠実に行動しているだけである。またソフィも「あらあら、おばあちゃん、そんなことをしては駄目よ」と優しくたしなめている。
 この辺の兼ね合いが面白い。
 カルシファーもハウルから心臓をもらうことで契約した悪魔だが、城の動力になったり、敵からハウルの家を守るような働きもする。
 悪でありながら善もする。善でありながら悪もする。この不安定さが面白い。そして彼らが悪をする時は自分の心が欲望や不安にとらわれた時だ。
 それはほとんど崇高でいられない、あるいは弱さでいっぱいのわれわれ人間というものを象徴している様だ。
 宮崎駿監督の目はこういう所、あたたかい。

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2 コメント

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泣きました。 (ジェニファー)
2006-07-23 18:45:53
映画を2度も見ているのに、いや、見ているから尚更なのでしょうか・・途中から涙が

止まりませんでした。
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感動 (コウジ)
2006-07-23 19:12:25
>ジェニファーさん

 コメントありがとうございます。

 感動されたんですね。

 僕は絵のきれいさとイメージは素晴らしいと思ったんですけど、感動までは。

 複雑な感情表現はアニメは不向きではないかと思っています。
返信する

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